バンクーバー五輪がいよいよ 開催されました。メダルが期待されたモーグルの上村選手は、惜しくも4位となりました。回を追うごとに順位を上げていただけに、あと一歩及ばずという結果は、本人もさぞ残念だったことでしょう。
さて、この上村選手が予選を通過した際のコメントで気になることがありました。上村選手のコメントのなかで、「滑れたら」という発言があったのですが、NHKの番組では、これに「滑られたら」というテロップが充てられていました。NHKとしては、いわゆる「ら抜き言葉」を正してあげたと鼻を高くしていることでしょうが、僕は逆に違和感を覚えました。
「ら抜き言葉」とは、助動詞「られる」を用いるべきところで「れる」を使っている場合を指すものです。そして、「られる」をとる動詞は、上一段活用・下一段活用・カ行変格活用とされています。これに対し、「滑る」という動詞は、ラ行の五段活用です。五段活用の場合は、通常「未然形+れる」となりますが、多くの五段活用動詞では、この他に「語幹+活用語尾のエ段+る」の形に変化させた可能動詞が存在します。
たとえば、「書く」という動詞の可能形表現は、助動詞「れる」を用いた「書かれる」か、もしくは可能動詞「書ける」となります。どちらとも、文法上間違いのない言葉です。ただ、「行かれる」と「行ける」、「打たれる」と「打てる」、「会われる」と「会える」など、様々な例を列挙してみると、後者の可能動詞形の方が、今日では一般的といえるでしょう。
NHKがわざわざ表記を改めた「滑れる」についても、五段活用動詞「滑る」の可能動詞形と考えれば、文法上全く問題のない表現ということになります。おそらく編集した人物は、深く考えもせずにこの「滑れる」を「ら抜き言葉」と判断して、したり顔で「滑られる」に変換したのでしょう。何というか、NHKの傲慢の一端を垣間見たような気がしました。
巷では今、スノーボードの国母選手の態度に批判が寄せられています。自分としては、国内の大会ならいざ知らず、多くの国が自国の威信をかけるオリンピックの場で、あそこまで礼節を欠いた人間を出場させるのはいかがなものかと考えています。ただ、それを報じる側においても、文法の基礎から学び直さなければならない事態にあるということは、残念といわなければなりません。
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