塵埃日記

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医学部入試操作問題雑感①:東京医科大学と昭和大学医学部の入試操作は同列に語れる問題か。

2018年10月21日 | 社会考
 
文部科学省の幹部が息子を不正入試させたという個人の親バカに端を発し、いつしか医学教育全体の問題に発展している。東京医科大学が女子受験者の点数を一律減点し、男子受験者を優遇していたと認め、次いで昭和大学医学部でも、現役と1浪の受験生に加算していた事実が明らかとなった。

どちらも入試二次試験における点数操作という点では同じであるが、私は両者を同列に語ることはできないと考えている。結論から言えば、東京医科大の女子減点は許されるべきではないが、昭和大の方は批判のポイントが違うのではないかと感じている。

まず、東京医科大学の女性一律減点が問題なのは、憲法や教育基本法を持ち出すまでもなかろうと思う。腕力で女性が男性に劣ることや、妊娠・産休のリスクを理由に擁護する意見もあるらしいが、それは女子受験者を「一律」に不利に扱って良い理由にはならない。男性よりたくましい女性もいくらでもいるだろうし、欧米に大きく立ち遅れているとはいえ男性が育休を取る風潮も少しずつ広がっている。そもそも人命を扱う専門職の人間が出産・養育に不寛容というのは、医師としての資質に疑問を抱いてしまう。

また小児科や産婦人科などは、むしろ男性より女性の方が向いているだろう。擁護論に則るなら、両科を希望する男性は女性より一律で不利に扱われなければならないはずだ。

さて、東京医科大の方についてはすでに同様の論調のコメントが多数出回っているので一旦置いておくとして、メインテーマは昭和大の方である。東京医科大と昭和大の操作における最大の相違点は、女子というカテゴリが存在しているか否かにある。浪人生に対する点数操作は、どちらの大学も行っている。では、女性の点数操作はダメで浪人生ならいいのかというと、私はあくまで許容範囲ではあると思っている。

1浪しているということは、1回その大学の試験を実際に体験しているうえに1年余分に勉強する時間があったのだから、現役生に対して「一律」にアドバンテージを有しているはずだ(ここでいう~浪というのは同じ大学を受験した回数だと理解しているのだが、合っているだろうか)。そのぶん「一律」のハンデを要求されたとしても、さほど理不尽なことではないように思うのだ。

ただし、そのハンデの負わせ方についても、東京医科大と昭和大では大きな違いがある。前者では、全員の小論文の点数を0.8倍に減点し、現役〜2浪男子は20点、3浪男子は10点、4浪男子と女子には0点を加点するという仕組みだという。それに対して後者では、現役および1浪の受験生に対して、高等学校調査書の評点に加点をしていたという。小論文や高校調査書の点数評価がどういうものか知らないのだが、仮にどちらにも満点が存在するとする。すると、昭和大では浪人生でも満点なら満点のままだが、東京医科大の場合は100点を満点とすると80点までしか取れない計算となる。

ハンデというものは、一般的には機会の平等を図って課せられる。つまり、ハンデを負っている側もいない側も、トップになるチャンスがどちらにもなければならない。昭和大の方では満点さえ取ればそれが可能だが、東京医科大では全ての現役~2浪男子が75点未満でなければ不可能ということになる。確率は0ではないが、ほぼ0といって良いだろう。したがって、現役生に対するハンデという面でも、東京医科大のやり方は昭和大に比べて不当であると言うことができる。

こうしてそれぞれの操作の内容を比較してみると、同列には論じられない差異があることが分かる。昭和大については、まだ現役生に対するハンデと捉える余地があるのに対し、東京医科大の方は女性と浪人生を明確に排除しようという意図が透けて見える。

このように書くと、昭和大については不問に付しても良いように言っているように思われるかもしれないが、そうではない。点数操作の事実を公表していなかった点については、どちらもやはり問題であろう。大学選択に関する重要な判断材料を提示していなかったのだから、その点では両大学とも同罪といえる。

ただし、東京医科大の女性差別問題は、医学界全体にかかわるイシューとして昭和大の話とは別個に追及されるべきと考えている。他方で昭和大の入試操作については、社会に有形無形の事実としてあまねく存在する「二次試験」というもののデメリットとして捉えられるべきだろうというのが、私の意見だ。この点について、次回に改めて考察したい。

 



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