日曜のお昼、久しぶりに会った家族との外食で出かけると、片側一車線の幹線道路は大いに混雑していました。信号1つごとにのろのろ進んでは止まり、平日の日中の3倍以上の時間はかかったでしょうか。渋滞に巻き込まれて、気持ち良いなどということはありません。
高速道路などでは、渋滞の主な原因は登り坂やトンネルの出入り口での速度低下にあるといわれています。対して一般道の場合は、信号での混雑が一番の要因となっているように感じます。道路の信号の問題というと、2月17日に起きた町田市での小学生ひき逃げ事件を受けて、車両と歩行者の交錯を避ける歩車分離式信号機の普及を求める声が強まっていると聞きます。一般道における信号付き交差点は、渋滞だけでなく交通事故の温床ともなっているといえます。
全ての信号にカメラやセンサーを設置し、モニターやコンピューターで車の流れを監視して交通整理のごとく適宜赤青を切り替えられるようにできれば、それに越したことはないでしょう。実際に、ごく一部の信号では手動による切り替えが行われていると聞きますが、すべての信号となると、コスト的にほぼ不可能です。将来的にはセンサー搭載の信号機が普及していくことになるような気はするのですが、そうなったとしても数十年は先の話でしょう。
しかし、急速に少子高齢化が進む今日、安全対策の強化は喫緊の課題ですし、渋滞の緩和も経済などの観点から非常に重要です。そのようななか、現下の状況で比較的短時間でできる改善策として、3点ほど個人的に考えていることがあります。
1つ目は、渋滞の起きやすい、交通量の多い信号の1回ごとの切り替わりまでの時間を長くすることです。言い換えれば、頻繁に信号が変わらないようにするということです。歩行者も車も、青信号が点滅したり黄色に変わったりすれば、自然と慌てて交差点に飛び込んでしまうものです。これは当然事故の危険性に繋がるだけでなく、信号が切り替わった後も交差点内に人や車が留まってしまうため、青に変わった側の車両が発進できず、混雑や渋滞を誘発することにもなります。横断・縦断とも青でいる時間が長いほど、青点滅や黄色の回数が減り、それはすなわち危険な交差点進入が行われ得る時間が少なくなることを意味します。
また、自動車は一般的に加速が遅い乗り物です。とくに止まっている状態からの発進に時間がかかるので、信号が青に変わってから交差点を渡りきるまでのタイムは、自転車や人が走って渡るのと同じくらいか、むしろ後者の方が早いくらいになります。つまり、信号が変わってから通常の車の流れになるまでには結構な時間量が浪費され、それは交通の回転という点からみれば死んだ時間となります。この場合もやはり、双方向の青の継続時間を長くすることで、切り替わりの回数を減らし、死んだ時間を削減することができるはずです。
2つ目は、幹線道路の信号はなるべく同時一斉に変わるようにするというものです。すなわち、幹線道路の信号では目の前の信号もその先の信号もそのまた先も、一定の距離にわたって同時一斉に赤に変わり、同時一斉に青になるようにします。ドライバーの方にもそれが周知されていれば、黄信号を突っ走ったところで次で赤に引っかかるのだから、無理せずここで止まっておこうという心理がはたらくものと考えられます。
名古屋では反対に、ちょこちょこ赤に引っかかるように大通りの信号を設定したという話を数年前に聞いたのですが、これではむしろ逆効果です。「ここを無理してでも通過すれば、次はずっと青かもしれない」という予感がはたらくことにより、危険な交差点進入が増加する可能性の方が高くなると思われます(今も続いているのかは不明ですが)。要は、先々の予想が立たないから無茶に走るわけで、次に何が待ち受けているか分かっていれば、人はある程度合理的に判断できるはずなのです。
また、幹線道路のそれなりに長い区間で青の時間を共有できれば、ちょっと進んでは止まりの繰り返しという死んだ時間の連続を回避することができ、交通のスムーズな流れにもつながることが期待されます。
3つ目は、信号自体を減らすベクトルをもつということです。逆説的ですが、信号があることによって、人はそれを信用するあまり自分で注意するということを省いてしまいます。たとえば、ひとつ前の記事にあるとおり先月にベトナムへ旅行してきたのですが、バイクがバンバン走る市街地にも、信号機や横断歩道はほとんどありません。それでも意外に事故が起きないのは、どこでも人が横断する可能性があり、人も轢かれたくなければ車やバイクの方だって轢きたくはないということで、お互いに注意し合っているからです。
もちろんベトナムを見習えなどとは言いませんが、大して交通量のないところに信号機を設置することは、かえって事故の危険スポットを増やしているように感じられます。さらにいえば、信号機が増えるとそれを忌み嫌って抜け道を探す人が一定数現れ、そのようなせかせかしたドライバーは、住宅街の細い道を大通りの車には負けまいと走り抜けていくことになります。これもまた、事故の危険性をいたずらに引き上げることにつながるといえます。
ただし、お互いに注意すればというのは、足腰や注意力に問題のない限りの話であって、子供や老人、障碍者などについては当然別途に配慮しなければなりません。そこで、考え方を少し敷衍させて、常時動いている信号を減らすというだけでも、かなりの効果が上がるものと思われます。
具体的に真っ先に思い浮かぶのは、押しボタン式信号です。なぜか日本の押しボタン式信号の大半は、押しても押しても信号が変わらないという不思議な仕様になっていますが、これらをきちんと歩行者優先のプログラムにして普及させれば、十分交通は上手く回るでしょうし、車も人もお互いを視認する時間的余裕が生まれるので、安全性も確保できます。。
もうひとつ私が注目しているのは、感応式信号です。首都圏ではあまり見かけないのでご存じない方も多いかと思いますが、交通量の少ない方の道路の上に感知器を設置し、その下に車が止まると、信号が変わる仕組みになっています。センサーで管理するのと同質とはいえますが、こちらはずっとアナログなので、設置も容易でコストも低く抑えられるはずです。
残念ながら、感応式信号はほぼ地方でしか見かけることがなく、都会で導入するのは恥だ!くらいに思っているのかもしれません。ですが、リアルタイムの交通に則した運用という面でみれば、感応式信号はかなり合理的で実用的な信号機ではないかと考えています。留保としては、当然ながら感応式は車道でしか有用ではないので、用いる時には歩行者側の押しボタンとの合わせ技となるでしょう。
以上に上げた3点は、実際の道路でいきなり実験してみなくても、コンピューターのシミュレーションである程度検証できるはずです。歩車分離式の導入にせよ、あとは担当部署(警察ないし国土交通省ということになるでしょうか)が、どれだけ本気で取り組むかにかかっているといえるでしょう。とくに1つ目と2つ目は、プログラムをいじるだけで新たに何かを建てたり設置したりという類のものではないので、やろうと思えばすぐにでも実行に移せるはずです。私の家の周辺にもサンプルにしていただきたい道路がいくつもあるので、試行錯誤をお願いしたいところです。
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