2020年の夏季オリンピック開催地が、東京に決まりました。私は以前から東京での開催には反対していましたが、まずは今回の決定に日本国民としておめでとうございますと申し上げます。決まった以上はもはや反対も賛成もなく、ただ「成功」を期待するのみです。
私のいう「成功」とは、出場されるアスリートの方々の成果云々ということではなく(それは開催地がどこかにかかわらず常に願っていますが)、特需ではない継続的な「五輪効果」が得られることです。具体的には、最低でも次の3点が実現されなければならないと考えています。すなわち、①福島第一原発の汚染漏れの完全な封じ込めと廃炉に向けた具体的プロセスの策定、②首都圏の交通改善や水害対策といった都市インフラの整備(とくに老朽化した首都高速の抜本的な造り直しは必須)、③被雇用者層の雇用環境および所得環境の改善 です。不思議なことに、どれも東京都ごときがどうこうできる問題ではなく、国家が対処すべき案件ですが。そして、3つとも現在のところ具体的で効果的なアイデアがでているようにはみえないので、7年後までに達成されている可能性は、残念ながら低いように思います。
今回の決定について、東京のプレゼンの内容が優れていたかのような報道も見受けられますが、投票の内容をみると、一番の理由は強運とそれを生かした作戦勝ちというところにあるように思います。強運というのは、第一回の投票でマドリードとイスタンブールが同立2位になったことです。事前の予測ではまずイスタンブールが脱落すると言われていましたが、ここで決選投票前に最下位決定戦に持ち込まれたことが、東京勝利の最大の勝因であったといえます。もし下馬評通りイスタンブールが先に落ちていれば、以前の猪瀬都知事の「イスラムはいつもけんかしている」失言により、イスタンブール支持票はおおむねマドリードに流れていたはずです。それが分かっていたからこそ、東京支持派は最下位決定戦でマドリードを落とすという戦略的投票を行ったと推測されます。そうすれば、マドリード支持票は、フラットに考えれば東京とイスタンブールに半々となり、それでも東京勝利が確定します。かくて、東京勝利の一番の理由は、マドリードとイスタンブールが同票で最下位決定戦となったという偶然にあるといえるわけです。
このようなことを書くのは、別にいまさら東京開催にケチをつけようというものではありません。ただ、東京のプレゼンが優れていたようにいわれるのは、「福島は東京から250㎞離れてて無関係だから、東京はセーフです」と切り捨てられた東北の出身者としては、どうにも我慢がならなかっただけです。
ですので、最後に東京都の五輪担当者の方々にこれだけはお願いします。今後、オリンピックに関して、「被災地を応援する」だとか「被災地に希望を与える」だとか、被災地支援を謳った発言は絶対にしないていただきたい。被災地を切り捨ててまで手にした五輪開催の切符なのですから、被災地復興とはまったく別個のものとして取り組んでいただきたいと思います。もっとも危惧されるのは、被災地支援をダシにして、復興予算が五輪開催費用に転用されてしまうことです。
7年後、「私は7年前にずいぶんな杞憂にとりつかれたものだ」と、晴れやかな気持ちで東京オリンピックを迎えられることを切に願います。
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