見もの・読みもの日記

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奈良大和四寺トークショー(みうらじゅん、いとうせいこう)

2019-09-16 23:33:27 | 行ったもの2(講演・公演)

東京国立博物館 『仏像大使 みうらじゅんさん・いとうせいこうさん トークショー』(2019年9月14日、18:30~)

 特別企画『奈良大和四寺のみほとけ』(2019年6月18日~9月23日)の連携企画。気になってはいたが、ぐずぐずしていたら370名(全席指定)のチケットが完売になってしまった。それが、数日前に友人から「チケットを取ったのに行けなくなってしまった」という連絡があり、定価で買い取らせてもらうことにした。

 私は『見仏記』を単行本第1巻の頃から読んでいるが、ビデオやテレビ放送は見たことがない。まして生でおふたりのトークを聴くのは初めてかもしれない。でも東博の『櫟野寺』展や『インドの仏』展の音声ガイドでおふたりのかけあい式解説を聴いたり、高知の竹林寺ご開帳ライブをネット配信で見たりしていたので、初めての感じがしなかった。

 ふたりとも、白い紙製のちゃんちゃんこ(袖なし羽織)を着て登場。「受けないなあ~」と苦笑していたが、後ろを向いたら、背中に四寺の御朱印が。奈良大和四寺巡礼のための特別な巡礼衣(おいづる)で、東博の特設ミュージアムショップで販売中の品だった。登場したときから、いとうさんはテンションが高く、みうらさんは自由。話題のおもむくまま、餃子の王将とかポケトークについて熱弁をふるう。このトークショーの直前に、東博の会場を見てきたそうで、その感想も折々はさんでくれた。

 おもむろにスライドショーが始まる。安倍文殊院、長谷寺、岡寺、室生寺の写真を見ながらのトーク。お寺の全景写真を見ながら「こっちに〇〇堂があって、このへんに〇〇仏がいて」と記憶で喋れるのはさすが。私はこの四寺では、安倍文殊院だけ行ったことがない。「ものすごく行きにくいお寺だが、ぜひ行った方がいい」とおふたり(特にいとうさん)が力説するのを聞いて、この秋、本気で参拝を考えている。なお、安倍文殊院は、東博に文殊菩薩像の像内納入品(文書)しか来ていなくて「これを見て、ぜひ現地に行こう!と思うかねえ」とツッ込んでいたのには笑った。

 スライドショーは、お寺の風景、仏像のほか、『見仏記』の関連イラストも投影されて「これは第1巻だよ~」とか、けっこう古いものが多かった。当時は校正が付いていなかったので、誤字も直されず、好きなことを書いていたとか。安倍文殊院は、文殊菩薩が獅子から下りたときをみうらさんが描いていた。

 長谷寺の難陀龍王と雨宝童子は、現地では暗くて見えないことを強調。そうだなあ、私も見た記憶がない。岡寺の寝釈迦(釈迦涅槃像)は「蓮の枕が来てないけど、どうなの?」という話が面白かった。巨大な本尊・如意輪観音の像内から発見された銅造菩薩半跏像の愛らしさ。トークショーの後、確かめに行ったが、高い台座に座っているのでスタイルがよく見える。

 室生寺については、2014年に仙台で開催された東日本大震災復興祈念特別展に、寺宝のほぼ全ての仏像を出陳したお寺の心意気を強くリスペクト。二人が室生寺を訪ねたときは、ちょうど搬出の準備中で、経費節約のため(特別な美術搬送ではなく)クロネコヤマトに搬送を頼み、クロネコの段ボール箱が並んでいたとか、お寺の方が仏像の埃を払って掃除していたとか、貴重な話を聞くことができた。東博に来ている地蔵菩薩の前のめり姿勢は、気づいていなかったので、これもあとで確認した。室生寺の金堂では、地蔵菩薩も十一面観音も、だいたい拝観者の視線と同じ位置に顔があるのだが、東博では位置が高いせいか、少し小さく感じたという。私もそう思った。

 ここで若干話題がズレて、みうらさんが小学生の頃、クリスマスに買ってもらったという日本の仏像の写真集がスライドに映った。書名をメモし忘れたが、複数の写真家が撮影を分担しているという話だったから、『日本の彫刻』(美術評論社、全6巻、合本版あり)ではないかと思う。その平安時代を土門拳が担当しており、有名な仏像の写真が多数ある中で「これよ」とみうらさんが見せたのは、いわゆる翻波式衣文のアップ。「これはどの仏像か?」というクイズ大会になって、答えた人はいたが当たらなかった。その他にも、仏像の全身像ではなく、気になる部分だけを切り取った土門拳の作品をいくつかと、その姿勢に影響を受けたみうら少年の作品も見せてもらった。土門拳の時代には、今では考えられないような仏像の写真の撮り方が許されていたという話も面白かった。なお、『奈良大和四寺のみほとけ』オリジナルグッズに、室生寺の釈迦如来坐像の横顔をみうらさんがスケッチした絵を表紙にしたノートがあるが、あれは土門拳の写真をスケッチしたものである由。

 最後に「あと10日くらいしか会期がないのに」と言いながら、テープカットセレモニーもしてくれた。楽しかった。

 

 なお、同じ日に立ち寄った東洋館8室(中国の絵画)『扇面画の魅力』(2019年8月6日~9月16日)が意外に魅力的だったことを記録しておく。全て明清もので、個人蔵多し。


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