見もの・読みもの日記

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週末関西美術館めぐり:京都国立近代美術館

2008-03-26 23:46:36 | 行ったもの(美術館・見仏)
○京都国立近代美術館 『ドイツ・ポスター 1890–1933』

http://www.momak.go.jp/

 2月に京都に来たとき、あまりにも印象的なチラシを見て、この展覧会、どうしても行きたいと思っていた。放射線上の中心に大きな目を配したデザインで、国際衛生展覧会のポスターを基にしている。このあと、豊田市と宇都宮にも巡回すると分かっていたが、ちょっとムリをして行ってしまった。そのため、最後は時間が無くなって、駆け足!(涙)

 会場では、まず19世紀末の詩情豊かなポスターに迎えられる。印刷技術の発展を背景に、『ユーゲント(Jugend)』『パン(Pan)』『ジンプリツィシムス(Simplicissimus)』など、美しい雑誌が次々に刊行された。オーストリアではクリムト、フランスではロートレックが活躍していた時代である。1900年代に入ると、いわゆる「即物的ポスター(Sachplakat)」が台頭してくる。靴屋なら靴、酒屋なら酒、スポーツ用品店ならスキー板あるいは乗馬ズボンという具合に、ドイツ語が読めなくても、何を売ろうとしているかが、はっきり分かる商業広告ポスターだ。

 第1次世界大戦(1914~1918)においては、多くのプロパガンダポスターが作られた。戦争公債の購入や義捐金を呼びかけるもの。しかし、直接敵方をなじるポスターが少ないのは、英米仏と比べたとき、ドイツの特徴であるそうだ。興味深い指摘である。戦後、1920年代のドイツポスターには、不思議な既視感がある。力強い造形、朗らかな色彩。健康的で、自信にあふれた前衛。カルピスの古い広告や古賀春江の作品に、確実に影響を与えていると思う。

 各時代を通じて、ドイツポスターに感じたのは、なまめかしいまでの文字の美しさである。さすがフラクトゥール(Fraktur、ひげ文字)を生み出したお国柄。同じアルファベットを使っているのに、イギリスやフランスの印刷芸術に、この感じはないと思う。あと、1920年代までの作品は、ほとんど「リトグラフ」とあるが、これは石版印刷とイコールではないのかな? 印刷技法のことは、いまひとつよく分からない。1930年代になると「オフセット」が登場する。

 それから、ドイツでは、ポスター愛好家協会という団体が作られ、『ダス・プラカート(Das Plakat)』という雑誌まで作られていたことにびっくりした。ボンネット帽をかぶり、柄のついた眼鏡を携えたお嬢さん(?)がマスコット・キャラクターのようだ。後ろ姿が可愛い。英語のサイトに画像を見つけたのでリンクを張っておこう。ちなみに、日本にも杉浦非水が監修した『アフィッシュ』というポスター研究誌があったことを初めて知った。私は展覧会で、気になる雑誌や図書を覚えると、Webcatで検索してみる。すると、日本国内の大学図書館にも、ポツポツとは所蔵されていることが分かって面白い。今回の収穫は、このほかに『大戦ポスター図集』(朝日新聞社、1921年)。そうかー東大に4冊もあったのか。

 最後になるが、上記サイトで展覧会の「広報資料」の項目を探していただくと、大きな目をデザインしたポスターがPDFファイルで載っている。その下に「PDFの画像を拡大・縮小すると、まばたきをしているように見える場合があります。お試しくださいませ。」との注記。ええ~嘘でしょう、と思ったが、やって見たら、実際、まばたきしてるように見える!! これを発見した人はすごい! ぜひお試しあれ。

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