見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

2024年1月関西旅行:辰づくし(京都国立博物館)他

2024-01-13 23:41:21 | 行ったもの(美術館・見仏)

今週は軽井沢出張が入ってブログが書けていなかった。関西旅行の記録続き。2日目は京都周遊。

京都国立博物館 新春特集展示『辰づくし-干支を愛でる-』(2024年1月2日~2月12日);特別企画・特集展示『弥生時代 青銅の祀り』(2024年1月2日~2月4日);修理完成記念・特集展示『泉穴師神社の神像(2024年1月2日~ 2月25日)

 私は常設展モードの京博が大好きなので、お正月はとてもいい。3階の「陶磁」は京焼の色絵の名品がお正月らしく華やか。中国磁器の磁州窯や青花蓮華文盤も彩りを添える。三彩馬俑、男子立俑、鎮墓獣なども(明器だけど)晴れやかな雰囲気。2階「絵巻」は京都の寺院に伝わる江戸時代の縁起絵巻が3件。続く『辰づくし』には、濃いオレンジ色の『龍袍(金黄地綴織)』が出ていた。金黄(金杏)色は貴妃や皇子が着る色とのこと。中国ドラマを思い返してみると、そうだったかもしれない。『日高川草紙』も久しぶりに見た。恋する女性が変身した怪物を「龍」と呼んでいいのか、ちょっとためらう。後世の安珍清姫伝説は、男(僧侶)が隠れた鐘に巻き付いて焼き殺すのだが、この絵巻は、鐘を砕いて生身の男を掴み上げ、一緒に水の中に沈んでいく。絶望した表情の男が哀れ。あと、龍の仲間の雨龍、斗牛、飛魚などの紹介も面白かった。

 「中国絵画」は「蘇軾を憶う」がテーマで、石涛の『東坡時序詩意図冊』(大阪市立美術館)が来ていた。1階「彫刻」ギャラリーの一部では、泉穴師神社(いずみあなしじんじゃ、大阪府泉大津市)に伝わる83躯の神像から26躯を展示。女神像の髪型が肩までのボブヘアみたいで興味深かった。

細見美術館 開館25周年記念展II『挑み、求めて、美の極致-みほとけ・根来・茶の湯釜-』(2023年11月14日~2024年1月28日)

 細見美術館の展示は、個人的にピタリ当たるときと外れるときがあるのだが、これは大当たり。さすが開館25周年記念展である。平安後期~鎌倉の仏画、刺繍の大日如来像、『金銅透彫尾長鳥唐草文華鬘』など、文句なしの美の極致。それに加えて、大好きな根来。さらに茶釜を愛でることを教えてもらったのも同館の展示だった。初代・古香庵(細見良)を紹介するコーナーで知ったのだが、細見良氏は毛織物業で財を築いた人物だという。泉大津の細見邸に旧膳所城の高麗門を移築して表門として使用していたが、2018年9月の台風で倒壊してしまい、現在復元中だという(Googleマップに倒壊前と倒壊後の写真あり)。実はこの門を、美術館の表門にしたかったそうだ。

相国寺承天閣美術館 企画展『若冲と応挙』(II期:2023年11月19日〜2024年1月28日)

 第1展示室は『釈迦三尊像』と『動植綵絵』(コロタイプ複製)でI期と変わらず。第2展示室は、若冲の『鹿苑寺大書院障壁画』がメインになった。私は「竹図」とその裏側の「秋海棠図」が好き。応挙も『山水図屏風』や『大瀑布図』が出ている。『大瀑布図』は、もうちょっと床ぎりぎりくらいの低い位置に展示してほしかった。円山応瑞の『朝顔狗子図』は、最近の円山派わんこブームに乗っかった感じ。

京都文化博物館 『異界へのまなざし あやかしと魔よけの世界』(2023年11月25日~2024年1月8日);『シュルレアリスムと日本』(2023年12月16日〜2024年2月4日);『シュルレアリスムと京都』(2023年12月23日~2024年2月18日);『日本考古学の鼻祖 藤貞幹展』(2023年12月9日~2024年2月4日)

 『異界』展は、土蜘蛛草紙や百鬼夜行絵巻(いずれも模写)などの絵画資料、陰陽道の占いや魔除けに関する文書、さらにお守り(蘇民将来)、お札(角大師)、仮面(壬生面、嵯峨面)などもあって、バラエティに富んでいた。陰陽道に関する各種資料を含む「大國家文書」というのは、蔵人方の陰陽の事を掌る地下官人だった大國家に伝わった資料らしい(総合資料館だより 2004.4.1, PDFファイル)。

 その他の展示も面白かった。シュルレアリスム絵画は、好んで見るほど好きなジャンルではないが、ぼんやり見ると興味深かった。実は現実の時代状況と強くリンクしていて、写実絵画よりずっと政治的・社会批評的だと思った。

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