見もの・読みもの日記

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2024年1月関西旅行:女流画家たちの大阪(大阪中之島美術館)他

2024-01-09 22:47:48 | 行ったもの(美術館・見仏)

 新年の三連休は関西方面で遊んできた。このところ、春夏秋は京都のホテルがほとんど取れなかったので、とりあえず宿泊を確保したところで安心して、ギリギリまで計画を立てるのをサボっていた。年明けに、慌てて新春文楽公演のチケットを取って、初日は大阪観光からスタートすることにした。

大阪中之島美術館 『決定版!女性画家たちの大阪』(2023年12月23日~2024年2月25日)

 約百年前の大阪では、島成園、木谷千種、生田花朝など多くの女性日本画家が活躍していた。当時の美術界は、東京と京都がその中枢を担い、制作者は男性が大多数を占めていたが、女性日本画家の活躍において大阪は他都市と肩を並べており、その存在は近代大阪の文化における大きな特色のひとつとなった。本展は、50名を超える近代大阪の女性日本画家の活動を約150点の作品(展示替えあり)と関連資料で紹介する。

 え、昨年も『大阪の日本画』展で多数の女性画家を紹介したばかりじゃん、変わり映えのしない…と文句を言いながら、見に来てしまった。そして、やっぱり見に来てよかった。島成園だけで30点(前期)も一気に見ることのできる展覧会なんて、関東ではまず考えられない。昨年の『大阪の日本画』は東京にも巡回があったのだが、残念ながら本展はないらしい。『祭りのよそおい』『おんな(原題・黒髪の誇り)』『無題』(痣のある自画像)など見覚えのある作品もあったが、実験的な『伽羅の薫』は初めて見た。島成園は、なんでもない女性像にドキリとする色気があって好き。島成園とともに「女四人の会」を名乗った岡本更園、木谷千種、松本華羊もみんな好きだ。彼女たちが『好色五人女』を題材に競作を発表した展覧会の写真があって、作品の前に並んだ、地味な着物姿の四人(若いのに堂々としている!)がとても魅力的だった。

 華やかな美人画に続いて、跡見花蹊など、南画、花鳥画などの伝統的なジャンルで活躍した女流画家を紹介する。このへんは女性が描いたと言われなければ、作者の性別は全く分からない。そして明るい色彩で大阪の風俗を描いた生田花朝。昨年『大阪の日本画』で覚えた画家のひとりである。山内直枝の『百鬼夜行絵巻』も面白かったので書き留めておく。真珠庵本などで知られる百鬼夜行絵巻をアレンジしたもの。軽妙でスピーディな筆の運びが気持ちいい。作者は尼僧であったともいうが、詳しいことは分からないそうだ。

大和文華館 特別企画展『やまと絵のこころ』(2024年1月5日~2月18日)

 平安時代に日本の風物を描いたことから始まった「やまと絵」。常にその核心には、日本の自然や風俗を主題にした親しみやすさと、色彩や描線の優美さがあったといえる。本展では、やまと絵の根底に流れつづけた美の本質すなわち“やまと絵のこころ”に迫る。昨年の東博『やまと絵』展の記憶を振り返りながら見に来た。何と言っても見どころは『寝覚物語絵巻』。東博では第3期に出陳されていたが、私は行っていないので久しぶりである。4つの場面が一気に開いていて嬉しかった(たぶん2020年の同館開館60周年記念展以来)。第1~3段は、吹抜屋台の建物と庭先の草木を描く。第4段は室内のみで僧形の人物が向き合っている。植物も人間も、ゴムでできたような、やわらかな形態が特徴で、これが後代のやまと絵にも受け継がれていく。

 佐竹本三十六歌仙絵断簡『小大君』も出ていたが、これは髪の毛先の跳ね上がり方が魚の(ゴジラの?)背びれみたいで面白いと思った。宗達の伊勢物語図色紙『芥川』を見ることができたのも眼福。あわせて同色紙『衰えたる家』も見ることができて、昨秋、久保惣美術館で見た『宗達』展を思い出していた。伊年印『草花図屏風』はあまり記憶になかったもの。六曲一隻屏風の左側に唐黍、右側に鶏頭を大きく描き、その間に背の低い茄子やヤツガシラを描く。また2023年に生誕200年、2024年に没後160年を迎える岡田為恭(冷泉為恭)の作品もまとまって出ており、『善教房絵詞模本』や『粉河寺縁起模本』の丁寧な仕事に感心した。

 このあと、再び大阪に戻り、文楽の舞台としても有名な「難波大社 生國魂神社」を初訪問。御朱印をいただき、国立文楽劇場で第3部の公演を見た(続きは別稿)。

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