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見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

2020年3月関西旅行:奈良で見仏(大安寺+福智院)

2020-03-22 22:40:27 | 行ったもの(美術館・見仏)

 この三連休の関西旅行はずいぶん前から決めていた。確か正月旅行から帰ってすぐ、次は三月と思ってホテルを予約しておいたのである。予定では、奈良博の『毘沙門天』(2020年2月4日~3月22日)と大和文華館『水のめぐみ、大地のみのり』(2月21日~4月5日)を見て、MIHOミュージアム『コレクションの形成-日本画を中心に』(3月14日~6月7日)を見てくるつもりだった。ところが新型コロナウイルス感染症の影響で、主要な美術館は軒並み休館。しかしまあ、天気もよかったので、微力ながら経済をまわそうと思い、のんびり関西旅行に出かけた。

大安寺(奈良市)

 初日は予定どおり奈良へ。近鉄奈良駅からバスで、秘仏馬頭観音立像の特別開扉(3月1日~3月31日)が行われている大安寺に向かった。確か2回くらい来たことがあるはずだが、ブログを検索しても記事が出てこないので、もう15年くらい前になるかもしれない。広々した境内にぽつりぽつりとお堂が建っている。はじめに本堂に参拝。お坊さんに促されて須弥壇に近づくと、目の高さに小さなお厨子があって、前面に御簾が張られている。御簾越しに拝したご本尊は十一面観音立像。右手をまっずぐ垂らし、左手に水瓶を持つ。裙が短く、華奢な足首が見えているのが印象的だった(※写真)。

 馬頭観音立像(※写真)は、本堂の背後の「嘶堂(いななきどう)」に祀られている。馬頭だけど馬の頭は載せていない。ストレートな忿怒の表現で、不動明王の原初形のようにも見える。身体に密着した天衣が、どっしりした腰の丸みを強調している。解説を読んで初めて気づいたのだが、胸の瓔珞だと思ったのは多頭の蛇で、足首にも蛇が巻き付いている。こ、怖い。

 最後に讃仰殿(宝物館)に寄る。中央に不空羂索観音、左右に聖観音と楊柳観音、四天王と、天平の木造仏7躯が並んでいる。四天王は多聞天像がよい。不空羂索観音はやや哀しげで優しい丸顔、感情を殺したような四角い顔の聖観音、品のある怒り顔の楊柳観音と、それぞれ個性的である。

福智院(奈良市)

 もう1箇所、特別拝観のお寺を訪ねた。奈良町エリアにある福智院である。門前に立ってはじめて、昨年秋、新薬師寺から春日大社まで歩く途中で、ここを通ったことを思い出した。お堂に入ると、熱いお茶と「あめちゃん」をいただける。特別拝観は宝冠十一面観音だが、本堂には大きな地蔵菩薩坐像がいらっしゃった。鎌倉時代の作で、めずらしい千体地蔵光背を有する。説明をしてくれたおかみさんの話では、むかしはお堂が荒廃して雨漏りするので、お地蔵さんが泣いたような顔になっていたとのこと。ようやくここまで修理したそうだ。

 秘仏の宝冠十一面観音は、華やかな宝冠と瓔珞をまとう。伊勢の某寺で発見されたもので、霊力のある方が所持していたが、縁あってこのお寺に渡ったという由来がとても面白かった。ネットにはほとんど情報がないようなので、もっときちんとメモを取ってくればよかった。あけっぴろげなおかみさんの話では、もとはそのへんに置いていたが、最近、厨子をつくったので秘仏になったそうである。

■東大寺ミュージアム 特集展示『二月堂修二会』(2020年2月4日~3月22日)

 最後に東大寺ミュージアムへ。特集展示に期待して行ったのだが、展示室はほとんど変わり映えがなかった。わずかに二月堂の再建地割図(設計図)や練行衆日記(この時期、いつも奈良博に出るもの)が出ていたくらい。え、これだけ?と思ったが「地下1階ホールでビデオ上映中です」と言われたことを思い出し、展示室を出て、地下1階へ向かう。

 すると大きなホールには、練行衆の僧衣や差し掛け(履き物)、紙子、食器などが展示されていた。それも展示ケースではなく、小中学校のバザーか文化祭のように、可動式のパネルと机を使って並べられているのが微笑ましかった。写真もたくさんあった。ホールの奥では、練行衆の立場で見た修二会の記録映像(平成元年制作、約70分)が流れていたので、ほぼ初めから終わりまで見てしまった。本行に入る前の準備の様子が特に面白かった。修二会の最中にしか来たことがないが、一度、2月28日の様子を見てみたいな。連日、気の抜けない行事であることはよく分かったが、写真パネルの食事風景の中で、テーブルに塩だか胡椒だか、調味料が用意されているのを見つけたときは少しなごんだ。

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