○日本民芸館 特別展『柳宗悦・蒐集の軌跡-日本の工芸を中心に-』(2016年9月1日~11月23日)
創設80周年記念特別展の第3弾は、朝鮮、沖縄に続き、日本の工芸を中心に柳宗悦の蒐集の軌跡を辿る企画。大階段の展示をちらりと見ながら、まず2階の大展示室に急ぐ。最初に目に入ったのは、左手の壁を隅から隅まで使った日本地図の大屏風。芹沢銈介の『日本民藝地図(現在之日本民藝)』(1941年)である。
北から南へ、六曲、四曲、六曲の三枚仕立てになっている。都道府県が色分けされ、かなりデフォルメされた日本地図で、各都市・各地域の特産が「和紙」「曲物」「民窯」「漆器」などのマークで示されている。「都道府県」と言ったが、北海道は見切れていて、函館のある雄島半島がちらりと見えるのみ。元道民として、ちょっと寂しい。沖縄は宮古・八重山など特筆されているのに。ほかにも、よく見ると民芸品マークが多い県(山形とか)と少ない県(新潟とか)の差が激しいのは、何の表れなのか、興味深い。
今回の大展示室には、伝統的な日本の工芸品が勢ぞろい(ただし蒐集時期は新しめで、昭和初期のものが多い)。磁器、土鍋、土瓶、鉄瓶、刺子の足袋、黄八丈など。日本の農具なのに、どこかエスニックな背当(ばんどり)は、むかしここの常設展示で知ったもの。がっしりした馬の鞍は祭礼用か、麻の葉の布団を敷き、キラキラした螺鈿で飾られていた。昭和23年刊の書籍『手仕事の日本』も並んでいて、いい書名だなあとしみじみする。
2階の階段裏の特集は「日本民藝館の設立」で、初めて見る民芸館の『所蔵品分類札整理箱』が面白かった。江戸時代の薬箱を転用したもので、50あまりの大小の引き出しに、小さく切った薄い色紙(いろがみ)とハンコが入っている。色紙に「漆器」「木工」などのハンコを押して分類札として使っている(いた?)のだ。
このほか2階は「朝鮮の美術 1914-」「雑器の美 1924-1931」「宗悦清玩」「『工藝』創刊 1931-1951」の4室と「初期大津絵」。雑誌『工藝』の表紙を貼り交ぜた屏風が面白かった。朝鮮の石仏の如来像は、先だっても見たように思うが、側面から見ると、頭部が左右から押しつぶされたようなかたちをしていることが分かった。室町時代の墨画『栗鼠図』もしみじみ見ると、アメコミの登場人物みたいな濃い顔をしていて可愛い(枇杷?を食ってる)。また、アイヌのマキリ(小刀)を見つけ、北海道にも「民藝」があることを確認して、ちょっと嬉しくなる。
1階に下りつつ、大階段の上に掛けられた大きな屏風が『近江八幡文様芝居幕』に木枠をはめたものであること、踊り場には、中国製の紫檀の長卓に(民芸館の訪問者にはおなじみ)笑顔の地蔵菩薩像(木喰仏)が載っていることを確認する。階段下の展示ケースは「『白樺』時代の蒐集 1910-1923」。唐代の踊る女性俑があったり、ウィリアム・ブレイクの版画があったり、ユニバーサルでみずみずしい審美眼を感じる。まわりの壁には、チベットの絨毯や、大きな種子(梵字)を描いた両界曼荼羅一対が掛かっていた。
ほかに「丹波焼の蒐集 1949-1961」「『抽象』と『破形』」「仏教哲学」の3室。「仏教哲学」は、日本民芸館では、ありそうであまりない特集だと思う。日本で刊行された仏教書は、黒々した墨付きが美しい。色絵和讃、黒駒太子図もいい。しかし、いちばん惹かれたのは円空の聖観音像。正面から見ると、特に珍しくない造形なのに、側面から見ると極端に薄い。民芸館といえば、木喰仏のイメージが強かったが、この円空仏もなかなかいいと思った。
創設80周年記念特別展の第3弾は、朝鮮、沖縄に続き、日本の工芸を中心に柳宗悦の蒐集の軌跡を辿る企画。大階段の展示をちらりと見ながら、まず2階の大展示室に急ぐ。最初に目に入ったのは、左手の壁を隅から隅まで使った日本地図の大屏風。芹沢銈介の『日本民藝地図(現在之日本民藝)』(1941年)である。
北から南へ、六曲、四曲、六曲の三枚仕立てになっている。都道府県が色分けされ、かなりデフォルメされた日本地図で、各都市・各地域の特産が「和紙」「曲物」「民窯」「漆器」などのマークで示されている。「都道府県」と言ったが、北海道は見切れていて、函館のある雄島半島がちらりと見えるのみ。元道民として、ちょっと寂しい。沖縄は宮古・八重山など特筆されているのに。ほかにも、よく見ると民芸品マークが多い県(山形とか)と少ない県(新潟とか)の差が激しいのは、何の表れなのか、興味深い。
今回の大展示室には、伝統的な日本の工芸品が勢ぞろい(ただし蒐集時期は新しめで、昭和初期のものが多い)。磁器、土鍋、土瓶、鉄瓶、刺子の足袋、黄八丈など。日本の農具なのに、どこかエスニックな背当(ばんどり)は、むかしここの常設展示で知ったもの。がっしりした馬の鞍は祭礼用か、麻の葉の布団を敷き、キラキラした螺鈿で飾られていた。昭和23年刊の書籍『手仕事の日本』も並んでいて、いい書名だなあとしみじみする。
2階の階段裏の特集は「日本民藝館の設立」で、初めて見る民芸館の『所蔵品分類札整理箱』が面白かった。江戸時代の薬箱を転用したもので、50あまりの大小の引き出しに、小さく切った薄い色紙(いろがみ)とハンコが入っている。色紙に「漆器」「木工」などのハンコを押して分類札として使っている(いた?)のだ。
このほか2階は「朝鮮の美術 1914-」「雑器の美 1924-1931」「宗悦清玩」「『工藝』創刊 1931-1951」の4室と「初期大津絵」。雑誌『工藝』の表紙を貼り交ぜた屏風が面白かった。朝鮮の石仏の如来像は、先だっても見たように思うが、側面から見ると、頭部が左右から押しつぶされたようなかたちをしていることが分かった。室町時代の墨画『栗鼠図』もしみじみ見ると、アメコミの登場人物みたいな濃い顔をしていて可愛い(枇杷?を食ってる)。また、アイヌのマキリ(小刀)を見つけ、北海道にも「民藝」があることを確認して、ちょっと嬉しくなる。
1階に下りつつ、大階段の上に掛けられた大きな屏風が『近江八幡文様芝居幕』に木枠をはめたものであること、踊り場には、中国製の紫檀の長卓に(民芸館の訪問者にはおなじみ)笑顔の地蔵菩薩像(木喰仏)が載っていることを確認する。階段下の展示ケースは「『白樺』時代の蒐集 1910-1923」。唐代の踊る女性俑があったり、ウィリアム・ブレイクの版画があったり、ユニバーサルでみずみずしい審美眼を感じる。まわりの壁には、チベットの絨毯や、大きな種子(梵字)を描いた両界曼荼羅一対が掛かっていた。
ほかに「丹波焼の蒐集 1949-1961」「『抽象』と『破形』」「仏教哲学」の3室。「仏教哲学」は、日本民芸館では、ありそうであまりない特集だと思う。日本で刊行された仏教書は、黒々した墨付きが美しい。色絵和讃、黒駒太子図もいい。しかし、いちばん惹かれたのは円空の聖観音像。正面から見ると、特に珍しくない造形なのに、側面から見ると極端に薄い。民芸館といえば、木喰仏のイメージが強かったが、この円空仏もなかなかいいと思った。