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見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

文書も彫刻も/至高の宝蔵(神奈川県立金沢文庫)

2025-04-06 21:59:05 | 行ったもの(美術館・見仏)

神奈川県立金沢文庫 開館95周年記念特別展『至高の宝蔵-称名寺の国宝開帳-』(2025年3月28日~5月18日)

 称名寺の宝蔵の品々を開帳する特別展。「開館95周年」と聞いて、改めて調べてみたら、昭和天皇の即位に伴う御大典記念事業の一環で建てられた、鉄筋コンクリート造の施設が竣工したのが昭和4年(1929)12月。そして、昭和5年(1930)8月、図書館令に基づく県立図書館として開館した。ここが起点の年なのだな。その後、図書館から博物館に変わったのは、昭和30年(1955)のことである。展示企画についても調べてみたら、90周年には『東アジア仏教への扉』、80周年には『運慶-中世密教と鎌倉幕府-』が開催されていた。なつかしい。

 入口を入ってすぐの展示ケースには、金沢文庫の創建と蔵書に縁の深い北条実時・顕時・金沢貞顕・貞将の4人の肖像画が並んでいた(実時像のみ原本、他は複製)。2階の展示室で目に付いたのは、本展のポスターにもなっている『三千仏図』。軸木の墨書銘から、海岸尼寺の什物であったことが分かるという。過去・現在・未来を掌る阿弥陀・釈迦・弥勒の三仏のまわりをオレンジ色の衣の小さな三千仏が取り囲む。牡丹(宝相華?)の外枠も華やか。見たことあるなあと思ったのは、2018年の『御仏のおわす国』展で見たようだ。これとは別に、釈迦仏だけを中心にした『千仏図』も出ていた。称名寺には、釈迦と阿弥陀の2幅のみ伝わっているそうだ。千仏は衣の赤色が摩滅しているせいもあって、背景の青色が強く印象に残る。こうした三千仏図・千仏図は「仏名会」の際に掛けられた。

 仏名会とは三千の仏名を唱える法要だが、展示文書の中に「南無〇〇仏」という唱え事を書き留めたものがあって、梵徳仏とか華天仏とか遊戯仏とか、変わった名前が並んでいて興味深かった。文書(聖経)類は、どこに着目したらいいのか、よく分からないことも多いが、「孤本」「稀覯本」「現存最古の写本」などと書かれていると、とりあえず貴重なものであることは分かる。『華厳演義鈔会解記』だったと思うが、湛叡の名前入りの紙製の書皮(ブックカバー)が付属しており、書状を再利用してブックカバーにしていることも分かって面白かった。国宝『文選集注』も、もちろん出ていた。巻47の冒頭にあった曹子健は曹植だね。巻62の江文通(江淹)は知らなかった。

 彫刻は、清凉寺式の釈迦如来立像、慶派ふうの地蔵菩薩坐像など。不動明王二童子像は、あまり記憶にないものだが、とても気に入った。創建当時のものと見られる「迦楼羅光背」には、7体の迦楼羅の顔が浮かび上がっている。制吒迦・矜羯羅の二童子もかわいい。制吒迦童子は、本来。右手に何か得物を持っていたのだと思うが、カラの握りこぶしを突き出したようなポーズが元気いっぱいでよい。

 桜の季節に訪問したのは久しぶりのような気がする。参道の桜並木は刈り込まれていて可哀想だったが、浄土庭園の桜は、のびのび枝を広げていた。あと、遠景の山の中に咲いた白い霞のような花を見て、桜は山の樹だったことを思い出した。


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