見もの・読みもの日記

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三年に一度のお蔵出し/2016東美特別展

2016-10-16 23:57:46 | 行ったもの(美術館・見仏)
東京美術倶楽部 第20回『東美特別展』(2016年10月14日~16日)

 毎年、この時期に東京美術倶楽部で開催される美術品の展示・販売会。今年は三年に一度の「特別展」の年に当たり、日本を代表する美術商65軒が、選りぬきの逸品をもって集結する。全く購入計画のない部外者が冷やかしに行くのは、ちょっと申し訳ないのだが、とにかく素晴らしい美術品を拝見できる貴重な機会なので、2010年、2013年に続いて、今回も出かけた。

 印象に残った店舗(ブース)と作品を記憶をたどってメモしておく。小西大閑堂は地蔵菩薩をテーマにしぼり、まず店頭に後光に荘厳された地蔵菩薩像の画幅。鎌倉くらいか? 繊細な彩色がものすごくきれい。店内には銅造・木造などの地蔵菩薩像各種、と思ったら唐の比丘像(銅造)も混じっていた。比較的大きめで墨を塗ったように漆黒の体躯に截金が美しい像もあった。平山堂の見ものは金地に江戸の文人の書画を多数貼り混ぜた屏風。玉堂、梅逸、半江などの名前が読めた。思文閣銀座は、水辺の遠景を描いた蕭白の『芦雁図』が面白かった。

 加島美術は奇想の画家の特集。蘆雪の『狗児図』は正方形の画面に五匹の白い仔犬がぎゅっと集まっていてかわいい。墨画淡彩。林十江の虎、蕭白の楼閣山水、若冲の墨梅。若冲のは、京都市立美術館の後期に出品予定だそうだ。さっき図録を確認。甍堂と古美術白水は、いろいろなジャンルと年代があって、目が驚きっぱなし。甍堂は取り合わせに神経の行き届いた繊細な展示。白水は大人のおもちゃ箱みたいで面白かった。江戸時代の優雅な望遠鏡!

 小川商店には「病草紙」の断簡(円形に切り取られている)2件が出ていた。根津美術館の展覧会『名画を切り、名器を継ぐ』に出したという説明を聞いて、見たことを思い出した。1階の古美術祥雲は、いつも印象的な展示ブース。今回は、摩滅した水月観音の画軸、木造仏像、古瓦などを取り合わせた中に、古びた経筒(銘文が読める)に水を入れ、野の花を生けてあった。谷庄は「時代不同歌合」の僧正遍照と慈円の図を茶掛けにしていて面白かった。このお店に前田家伝来の堆朱の香合(?)があって、品のいい老婦人が「おいくら位?」と聞き、お店の方が小声で「1200です」と答えていた。

 値段の話をすると、中国磁器のお店で「100万円を切るものはある?」「ないですねえ」という会話も聞いた。直径10センチくらいの小皿もあったのに。中国磁器で印象的だったのは繭山龍泉堂。嘉靖万暦五彩の特集で、日本人好みのちょっと素朴な色絵が多かった。浦上蒼穹堂は耀州窯の特集で、日本にはまだたくさんあるのだな、と思った。薫隆堂に徳化窯の白磁の観音像が並んでいたのも面白かった。今でも作られているが、17-18世紀(清代)のものである。また、清代の倣古スタイルの磁器(古代の銅器などを真似たもの)に不思議な魅力を感じた。

 数は少ないが、近現代美術のブースも出ていて、意外な出会いをすることもある。靖雅堂夏目美術店の奥田小由女新作展は、初めて知る作品で面白かった。色あざやかな衣装をまとった女性の人形で、伝統と新しさのせめぎあいが、武侠ドラマの女性キャラみたいな魅力を放っている。日本画家の奥田元宋氏の夫人なのだな。瀬津雅陶堂は、ひとりの画家の動物スケッチ特集で、どこかで見たことがあるのに、最後まで画家の名前が分からなかった。最後にもらったパンフレットを見たら、竹内浩一という画家で、私は札幌にいたとき、このひとの所属する「星星会」の展覧会を見ていることを思い出した。

 今回は書画に比べると、茶碗はあまり印象に残るものがなかった。楽茶碗は宗入の作品が圧倒的に多かったなあ。刀剣が目立っていたように思うのは、私がこれまで全く無関心だったためか。1階の杉江美術店と日本刀剣のブースには、刀の拵えや鍔とともに、抜き身の刀剣も飾られていた。もちろんガラスケースなんて野暮なものはなしである。

 この値札付き展覧会は、美術館や博物館と違った勉強ができる。次回は2019年。また見に来ることができますように。買いものができるようには、まずなれないだろうけど。

※そうそう、入口を入ってエレベーターまでの短い通路の壁に特別展示されていた片岡球子の『めでたき富士』。映画「シン・ゴジラ」の中で首相官邸に掛けられていたもの。こういう重厚な建物によく似合う。(10/17補記)


コメント (1)
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