見もの・読みもの日記

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若狭・多田寺の名宝(龍谷ミュージアム)+岡崎あたり

2013-02-12 23:09:20 | 行ったもの(美術館・見仏)
龍谷ミュージアム 企画展『若狭・多田寺の名宝~秘仏本尊・薬師三尊像初公開~』(2013年2月9日~4月7日)

 昨年夏、たまたま小浜に行けることになった日に催行していた「秘仏めぐりツアー」のコースに、この多田寺が入っていた(※記事)。本尊のお薬師さんは、今回の展示図録にも写真があるとおり、豪華なお厨子の印象ばかりが強くて、お顔はよく見えなかった。その2週間後、再び小浜を訪ねて、別のバスツアーに参加したら、円照寺のご住職からも多田寺のお薬師さんにまつわる話を聞いた(※記事)。そして、この展覧会だから、なんだか奇縁が重なっている。

 注目は、何と言っても秘仏・薬師三尊像。本尊は卵形の大きな頭部。額が狭く、顎(鼻の下)が長いことが、垢抜けない印象を与えるのだろう。ただ、鼻筋は通っているので、左右どちらでも斜め横から拝すると、厳しさが増す。農夫のような大きな両手も迫力がある。

 向かって左の日光菩薩立像(十一面観音像)は、ひねりのない薄い体躯に、あどけない表情をのせる。右の月光菩薩立像(菩薩立像)も硬いポーズだが、腰から下には厚みがある。扁平な顔に細い目、小さな唇が、どことなく不気味。本尊は平安前期、両脇侍は奈良~平安前期の作と見られている。全くバラバラの個性を持つ三体が、いつからかチームを構成して、意外としっくりおさまっている様子(※ポスター参照)なのが面白い。

 ほかにも山のような寺宝が出品されていて、びっくりした。ずんぐりして力感があり、しかも動きのある平安時代の四天王像、茫洋とした趣きの半丈六の阿弥陀如来坐像などの仏像。室町~江戸の仏画、文書、版木なども。長浜・大通寺(行ったことあり)には「多太寺(多田寺)」銘の梵鐘が伝わっている。

 小浜のバスツアーで立ち寄った竜前区の金銅薬師如来像や、残念ながらご開帳日に行けなかった高成寺の千手観音立像がいらしていたのは嬉しかった。さらに福井県若狭町(三方五湖の東岸)の寶泉院(宝泉院)からも多数の寺宝が出品されている。図録の説明によれば「現住(住職)が兼帯」されているらしい。なるほど。

 私が多田寺を訪ねたときの案内人はおばあちゃんだったが、別の機会に訪ねた友人は、ご住職に案内いただいたという。そのご住職の「多田寺の歴史について確固とした証拠を後世に残したい一心」があって、この展覧会の開催に至ったことを、自ら図録に寄稿されており、飾らぬ言葉に胸を打たれた。

 多田寺は、残念ながら中近世の古文書に恵まれず、特に鎌倉期の動向は一切不明なのだそうだ。しかし、古代の若狭地方のありよう、神仏習合の信仰形態については、いろいろ想像が刺激されて興味深かった。

※龍谷ミュージアムは3回目だが、いつも時間がなくて割愛していたミュージアムシアター『伝えゆくもの~西本願寺の障壁画~』と『よみがえる幻の大回廊~ベゼクリク石窟~』をはじめて鑑賞。ベゼクリク石窟は現地映像が懐かしかった(行ったことあり)。

 このあとは、京都市中の史跡散歩(別稿)のあと、岡崎の細見美術館に向かう。途中、しゃれた建物があると思ったら、下記の看板がかかっていた。

象彦漆美術館 『雛人形とひいなの調度』(2013年2月2日~4月2日)

 三井記念美術館の『華麗なる京蒔絵』で「象彦」の名前を知って、一度来てみたかったお店&美術館である。入館料は300円で、小さいギャラリーはすぐ見終わってしまうが、むしろ売り場のほうが楽しい。光琳蒔絵箱の精巧な倣製品もあり。何度か値札の桁を数えなおして溜息をついた。いちばん気に入ったのは黒漆の杖。本気でもの欲しそうに眺めていたら、店員さんに「西洋では歩行具というより権威の象徴ですから、本当に必要になる前から持ち馴染んでおくのがいいんですよ」と説明をいただいた。

細見美術館 開館15周年記念特別展I『江戸絵画の至宝-琳派と若冲-』(2013年1月3日~3月10日)

 新しい美術館だと思っていたので、開館15周年に感慨を覚える。「琳派と若冲」ってど真ん中狙いだなーと思ったが、何度見ても若冲は面白い。中村芳中はもっと評価されてもいいのに。
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