○「みほとけの里 若狭の秘仏:平成24年度秋の文化財特別公開」若狭歴史民俗資料館~若狭姫神社~竜前区薬師堂~昼食(ふじや)~明通寺~国分寺
平成26年度の舞鶴若狭自動車道全線開通に向けて、通常は公開されていない仏像など、若狭地域の文化財を期間限定で公開する試み。この第一報を知ったのは、いつもお世話になっている「観仏三昧」の記事だった。これは行ってみたい、と思っていたら、関西出張+1日休暇を取れば、週末が自由に使えそう、と分かった。
しかし、小浜がアクセスのよい土地でないことは承知しているので、とりあえず午後の半日バスツアーくらいなら参加可?と思って、京都在住の友人を誘ってみたところ、1日ツアー(9:50発)でも行けますよ、という返事が返ってきた。近江今津から小浜までバス(JR西日本、若江線)があるのだという。半信半疑で小浜駅前待ち合わせ。私は敦賀に前泊し、JR小浜線(なんと1両編成)で約1時間、無事、合流することができた。利用したのは「B1:遠敷(おにゅう)の里 薬師如来めぐりと安産祈願」コース。乗客は計17人。小浜のことなら何でも知っていそうなベテランのバスガイドさんが同乗する。「国宝めぐりのバスを出すのも久しぶりですねえ…」と感慨深げ。
そうそう。私が初めて小浜を訪ねたのは、20年くらい前。午前も午後も国宝めぐりの定期観光バスを利用した記憶がある。その後、見仏仲間の友人から、小浜の国宝めぐりバスは無くなったらしい、と聞いた。いま調べたら、2008年度で休止になったようだ。「今回は、以前、国宝めぐりで運行していた車両を出してきたんですよ」と嬉しそうなガイドさん。
■若狭歴史民俗資料館
2階展示室で、木造十一面観音菩薩立像(小浜市・長福寺)と木造聖観音立像(美浜町・青蓮寺)を特別公開中。ガイドさんが「館長いますかねえ。いれば詳しい説明をしてもらえるんですけど」とおっしゃっていたら、本当に「館長です」という男性が登場して、びっくりした。物腰は控えめだが、喋り出したら止まらなくて、特別展示の2体をはじめ、複製を含めて10体ほどの展示品の由来、見どころ、制作年代の見分け方など、30分近く、熱の入った講義をしていただいた。私は、かつて一度来たことがあったので(2009年1月)、時間が余ったら、特別展『若狭を撮る-井田家所蔵古写真のまなざし-』の古写真を見てもいいかな、と思っていたが、仏像以外の展示を見る時間など、一切なし。最後は玄関の外にまで出て、バスを見送ってくださった館長、ありがとうございました。
同館長は、この特別公開イベントの推進者でもあるようだ。小浜のみほとけは、各地区で大切に守られてきたものであるだけに、なかなか公開を承諾してもらうことが難しいという。とりあえず今年はやってみよう、ということになったが、準備期間が短かったので、県外への広報普及効果はいまひとつ。二年目、三年目は、少しスタイルを変えるかもしれない、という話だった。
■若狭姫神社
上社(若狭彦神社)と下社(若狭姫神社)を合わせて、若狭国一之宮である。ご朱印は、なぜか「若狭彦神社」だった。
■竜前区薬師堂
小さな集落の奥に、堅牢な収蔵庫らしきものが見えてくる。鎌倉時代の銅像薬師如来立像を安置。周りに人影がないので「管理人さん、いるはずなんですけどねえ」と、心配そうにきょろきょろするガイドさん。やがて、それらしいおじいちゃんが現れたが「ひとり500円貰わないと開けられへん」と頑張る。「市の観光課から払われてない?」「いや。電話したけど誰も出ん。土曜日やし」「大丈夫、市の事業だから、絶対間違いないから」と、慌てずあせらず、巧みに誘導するガイドさん。中国の田舎旅行では、似たような場面に出くわすことが多いが、日本の観光ツアーでもこんな会話があるのかと思うと可笑しかった。おじいちゃんは途中で機嫌がよくなると、「持って行きなさい」と気前よくみんなにお薬師さんのお札を配ってくれた。
■多田寺
孝謙天皇の勅命により創建と伝える古刹。平安時代初期の木造薬師如来立像を本尊とする。おばあちゃんがひとりで、拝観受付も本堂の案内もご朱印の受付もしていた。鐘つき堂があったが、鐘の直下を掘ってある(ただし白い丸石で埋めている)のが、半島ふうだと思った。多田寺の名前は、多田満仲にちなむというが、詳しいことは不明。
■昼食(ふじや)
明通寺門前の風情ある料理旅館。今回のバスツアー(1日版)は食にもこだわりがあって、お得だと思う。
■明通寺
坂上田村麻呂の創建と伝える。本堂と三重塔は国宝。小浜で最も有名な寺院のひとつだろう。木造薬師如来坐像の左右には、木造深沙大将立像(左)と木造降三世明王立像(右)を配する不思議な配置。ここは若いお坊さんの案内だった。
■国分寺
和尚さんの案内で拝観。すきま風の入りそうな木造の釈迦堂には、福井県下では最大級の木造釈迦如来坐像を安置。頭部は17世紀(江戸時代)、体部は14世紀(鎌倉時代)の作だという。大きいが、温かみのある引き締まった造形で、ガイドさんが「私はこの仏さんが好きなんですよ」と嬉しそうにつぶやく。道路を挟んで別棟の薬師堂には、木造薬師如来坐像。文句なく端正で洗練された風貌で、いつまでもうっとりと眺めていたい。
以上でツアー終了。
帰りは私もバス若江線で近江今津に出ることにする。バスの出発まで少し余裕があったので、駅前商店街をぶらつき、鯖街道の起点や、さば街道資料館をのぞいて見る。ドラマ「ちりとてちん」出演者のサイン色紙が貼られた焼き鯖の店も見つける。
近江今津までは約1時間、スムーズな接続で湖西線に乗り継ぎ、京都へ。湖西線の眺めもよかったなあ。たぶん私はこの旅行で、琵琶湖を1周ならずとも0.8周くらいしたのではないかと思う。若狭歴史民俗資料館の館長が「京都は意外と近いんです。ここから京都駅まで1時間くらい」(車で?)とおっしゃったときは、京都の友人と顔を見合わせてしまったけど、最短ルートを使えば、確かに近い。
京都駅ビルで夕食。私はさらに南下して、最終日は奈良泊に決めた。
※参考:若狭おばまの秘仏めぐりツアーバス(福井県のページ)
平成26年度の舞鶴若狭自動車道全線開通に向けて、通常は公開されていない仏像など、若狭地域の文化財を期間限定で公開する試み。この第一報を知ったのは、いつもお世話になっている「観仏三昧」の記事だった。これは行ってみたい、と思っていたら、関西出張+1日休暇を取れば、週末が自由に使えそう、と分かった。
しかし、小浜がアクセスのよい土地でないことは承知しているので、とりあえず午後の半日バスツアーくらいなら参加可?と思って、京都在住の友人を誘ってみたところ、1日ツアー(9:50発)でも行けますよ、という返事が返ってきた。近江今津から小浜までバス(JR西日本、若江線)があるのだという。半信半疑で小浜駅前待ち合わせ。私は敦賀に前泊し、JR小浜線(なんと1両編成)で約1時間、無事、合流することができた。利用したのは「B1:遠敷(おにゅう)の里 薬師如来めぐりと安産祈願」コース。乗客は計17人。小浜のことなら何でも知っていそうなベテランのバスガイドさんが同乗する。「国宝めぐりのバスを出すのも久しぶりですねえ…」と感慨深げ。
そうそう。私が初めて小浜を訪ねたのは、20年くらい前。午前も午後も国宝めぐりの定期観光バスを利用した記憶がある。その後、見仏仲間の友人から、小浜の国宝めぐりバスは無くなったらしい、と聞いた。いま調べたら、2008年度で休止になったようだ。「今回は、以前、国宝めぐりで運行していた車両を出してきたんですよ」と嬉しそうなガイドさん。
■若狭歴史民俗資料館
2階展示室で、木造十一面観音菩薩立像(小浜市・長福寺)と木造聖観音立像(美浜町・青蓮寺)を特別公開中。ガイドさんが「館長いますかねえ。いれば詳しい説明をしてもらえるんですけど」とおっしゃっていたら、本当に「館長です」という男性が登場して、びっくりした。物腰は控えめだが、喋り出したら止まらなくて、特別展示の2体をはじめ、複製を含めて10体ほどの展示品の由来、見どころ、制作年代の見分け方など、30分近く、熱の入った講義をしていただいた。私は、かつて一度来たことがあったので(2009年1月)、時間が余ったら、特別展『若狭を撮る-井田家所蔵古写真のまなざし-』の古写真を見てもいいかな、と思っていたが、仏像以外の展示を見る時間など、一切なし。最後は玄関の外にまで出て、バスを見送ってくださった館長、ありがとうございました。
同館長は、この特別公開イベントの推進者でもあるようだ。小浜のみほとけは、各地区で大切に守られてきたものであるだけに、なかなか公開を承諾してもらうことが難しいという。とりあえず今年はやってみよう、ということになったが、準備期間が短かったので、県外への広報普及効果はいまひとつ。二年目、三年目は、少しスタイルを変えるかもしれない、という話だった。
■若狭姫神社
上社(若狭彦神社)と下社(若狭姫神社)を合わせて、若狭国一之宮である。ご朱印は、なぜか「若狭彦神社」だった。
■竜前区薬師堂
小さな集落の奥に、堅牢な収蔵庫らしきものが見えてくる。鎌倉時代の銅像薬師如来立像を安置。周りに人影がないので「管理人さん、いるはずなんですけどねえ」と、心配そうにきょろきょろするガイドさん。やがて、それらしいおじいちゃんが現れたが「ひとり500円貰わないと開けられへん」と頑張る。「市の観光課から払われてない?」「いや。電話したけど誰も出ん。土曜日やし」「大丈夫、市の事業だから、絶対間違いないから」と、慌てずあせらず、巧みに誘導するガイドさん。中国の田舎旅行では、似たような場面に出くわすことが多いが、日本の観光ツアーでもこんな会話があるのかと思うと可笑しかった。おじいちゃんは途中で機嫌がよくなると、「持って行きなさい」と気前よくみんなにお薬師さんのお札を配ってくれた。
■多田寺
孝謙天皇の勅命により創建と伝える古刹。平安時代初期の木造薬師如来立像を本尊とする。おばあちゃんがひとりで、拝観受付も本堂の案内もご朱印の受付もしていた。鐘つき堂があったが、鐘の直下を掘ってある(ただし白い丸石で埋めている)のが、半島ふうだと思った。多田寺の名前は、多田満仲にちなむというが、詳しいことは不明。
■昼食(ふじや)
明通寺門前の風情ある料理旅館。今回のバスツアー(1日版)は食にもこだわりがあって、お得だと思う。
■明通寺
坂上田村麻呂の創建と伝える。本堂と三重塔は国宝。小浜で最も有名な寺院のひとつだろう。木造薬師如来坐像の左右には、木造深沙大将立像(左)と木造降三世明王立像(右)を配する不思議な配置。ここは若いお坊さんの案内だった。
■国分寺
和尚さんの案内で拝観。すきま風の入りそうな木造の釈迦堂には、福井県下では最大級の木造釈迦如来坐像を安置。頭部は17世紀(江戸時代)、体部は14世紀(鎌倉時代)の作だという。大きいが、温かみのある引き締まった造形で、ガイドさんが「私はこの仏さんが好きなんですよ」と嬉しそうにつぶやく。道路を挟んで別棟の薬師堂には、木造薬師如来坐像。文句なく端正で洗練された風貌で、いつまでもうっとりと眺めていたい。
以上でツアー終了。
帰りは私もバス若江線で近江今津に出ることにする。バスの出発まで少し余裕があったので、駅前商店街をぶらつき、鯖街道の起点や、さば街道資料館をのぞいて見る。ドラマ「ちりとてちん」出演者のサイン色紙が貼られた焼き鯖の店も見つける。
近江今津までは約1時間、スムーズな接続で湖西線に乗り継ぎ、京都へ。湖西線の眺めもよかったなあ。たぶん私はこの旅行で、琵琶湖を1周ならずとも0.8周くらいしたのではないかと思う。若狭歴史民俗資料館の館長が「京都は意外と近いんです。ここから京都駅まで1時間くらい」(車で?)とおっしゃったときは、京都の友人と顔を見合わせてしまったけど、最短ルートを使えば、確かに近い。
京都駅ビルで夕食。私はさらに南下して、最終日は奈良泊に決めた。
※参考:若狭おばまの秘仏めぐりツアーバス(福井県のページ)
先日は、お返しのコメントを頂き、有り難う御座いました。
管理人さんが、お返しのコメントの中で、お返事に時間がかかってしまうことについて、お詫びされておられましたが、全く気にしていないので、ご安心頂きたいと思います。
小浜も湖北同様に、名仏の宝庫ですね。
私は、レンタサイクルで回ろうとしたのですが、羽賀寺を拝観し終えたところで大雨に降られ、その後は断念しました。
それ以降、彼の地を訪問する機会がありません。
既にご存知かも知れないですが、来年2月より、京都の龍谷ミュージアムにて、「若狭・多田寺の名宝」という展覧会を開催するようです。
記事中の薬師如来立像の写真が該当ページにあるので、出品されるのではないかと思います。
今回、お寺でご覧になっておられるので、展覧会で見ると違う印象あり、感動のよみがえりあり、となるのではないかなと思います。
図録が作成されれば、寺の名の由来も分かるかも知れないですね。
簡単ですが、報告申し上げます。
楽しみです。
多田寺には多田満仲の祈仏と称する仏像があったり、多田満仲の墓(供養塔)もあるのですが、これは「後付け」ではないか…と思います。
ただ(笑)今年6月に兵庫県の多田神社を訪ねたとき、印象的だった、門前の「朱塗りの欄干の橋」が、若狭の多田寺にも小さく再現されていたのを、面白く眺めました。