○江戸東京博物館 東京スカイツリー完成記念特別展『ザ・タワー~都市と塔のものがたり~』(2012年2月21日~5月6日)
私は、橋好き・階段好きであると同時に、洋の東西を問わず、塔好きでもある。眺めるのも好きだし、登るのも好きだ。なので、最初にこの企画を知ったときは、すごく心ときめいた。しかし、残念ながら、ちょっと期待外れな内容だったと思う。
古来、地上に存在した全ての塔に触れるわけにはいかないので、本展は、適当にピックアップをしている。それはよいのだが、「都市と塔」というテーマが分かりにくいので、ただの恣意的なつまみ食いに感じられるのだ。
取り上げられているのは、まず「塔の起源」としての、バベルの塔と奈良・薬師寺の塔。次に、いきなり近世に飛んで、塔のない江戸に生まれた愛宕塔と富士山縦覧場(ハリボテの富士)。海を渡って、パリのエッフェル塔のあと、日本に戻り、東京・浅草の凌雲閣(十二階)、大阪・新世界の通天閣。谷中天王寺の五重塔も少し。そして、東京タワー、スカイツリー。うーむ、ここから、ひとつの統一的な物語を読み取れというほうが無理すぎないか…。古代日本の「都市と塔」を語るなら、平安京の法勝寺八角九重塔をなぜ取り上げない、とか、天守閣は塔ではないのか? じゃあロンドン塔は? ニューヨークの高層建築群は? など、切りのない疑問を呈したくなってしまう。
はじめ、バベルの塔に関して、わざわざフランスから図書や銅版画を借り受けているので、日本国内に所蔵館はないのかしら、と怪しんだが、後半にエッフェル塔に関して、珍しい資料をふんだんに展示していたので、一括で借りてきたのだろうと納得した。
エッフェル塔といえば、むかし松浦寿輝さんの『エッフェル塔試論』(筑摩書房、1995)を読んで、むちゃくちゃ面白かった記憶がある。今回の展示を見る前に、できればあの本を読んでおいてほしい。むき出しの鉄骨の塔が、当時の「良識ある」人々に与えた衝撃と違和感は、今では想像しにくいだろうから。
しかし、開始からもう3週間なのに、江戸博サイトの展示目録が未だ「準備中」(会場では配布されている)ってどうなの? HPで公開するつもりがないなら、リンクを消せばいいのに…。展示『ザ・タワー』公式サイトから後述の特集展示詳細へのリンクも間違っている気がする。
常設展示室では、特集展示『太陽の塔 黄金の顔』(2012年2月21日~5月20日)を同時開催。1970年の万博当時、塔に取り付けられていたオリジナルの顔である。以前、大阪で公開されたときは、大勢の人がつめかけたと聞いたので、江戸博も並んでいたらどうしよう、と心配した。現在のところ、全くの杞憂。東京人は、大阪人ほど「太陽の塔」に親しみを感じていないのかな。
ネタバレになるが、常設展示室では「日本橋」の上から黄金の顔を見下ろすかたちになっている。見上げた状態と角度が変わるので、鼻と口の尖り方が目立って、少し印象が異なる。しばらく眺めていたら、急に目にライトが点って、びっくりした。3分点灯~1分消灯を繰り返しているのだそうだ。橋の下に下りて、顔に近づくこともできるが、同じフロアに立つと、鼻と口がヨットの帆(あるいは鮫のヒレ)みたいに突き立っているだけで、何だか全く分からない。ただ、出口付近に、太陽の塔のミニチュアなど関連展示もあるので、お忘れなく。
※松浦寿輝『エッフェル塔試論』(文庫版もあり)

私は、橋好き・階段好きであると同時に、洋の東西を問わず、塔好きでもある。眺めるのも好きだし、登るのも好きだ。なので、最初にこの企画を知ったときは、すごく心ときめいた。しかし、残念ながら、ちょっと期待外れな内容だったと思う。
古来、地上に存在した全ての塔に触れるわけにはいかないので、本展は、適当にピックアップをしている。それはよいのだが、「都市と塔」というテーマが分かりにくいので、ただの恣意的なつまみ食いに感じられるのだ。
取り上げられているのは、まず「塔の起源」としての、バベルの塔と奈良・薬師寺の塔。次に、いきなり近世に飛んで、塔のない江戸に生まれた愛宕塔と富士山縦覧場(ハリボテの富士)。海を渡って、パリのエッフェル塔のあと、日本に戻り、東京・浅草の凌雲閣(十二階)、大阪・新世界の通天閣。谷中天王寺の五重塔も少し。そして、東京タワー、スカイツリー。うーむ、ここから、ひとつの統一的な物語を読み取れというほうが無理すぎないか…。古代日本の「都市と塔」を語るなら、平安京の法勝寺八角九重塔をなぜ取り上げない、とか、天守閣は塔ではないのか? じゃあロンドン塔は? ニューヨークの高層建築群は? など、切りのない疑問を呈したくなってしまう。
はじめ、バベルの塔に関して、わざわざフランスから図書や銅版画を借り受けているので、日本国内に所蔵館はないのかしら、と怪しんだが、後半にエッフェル塔に関して、珍しい資料をふんだんに展示していたので、一括で借りてきたのだろうと納得した。
エッフェル塔といえば、むかし松浦寿輝さんの『エッフェル塔試論』(筑摩書房、1995)を読んで、むちゃくちゃ面白かった記憶がある。今回の展示を見る前に、できればあの本を読んでおいてほしい。むき出しの鉄骨の塔が、当時の「良識ある」人々に与えた衝撃と違和感は、今では想像しにくいだろうから。
しかし、開始からもう3週間なのに、江戸博サイトの展示目録が未だ「準備中」(会場では配布されている)ってどうなの? HPで公開するつもりがないなら、リンクを消せばいいのに…。展示『ザ・タワー』公式サイトから後述の特集展示詳細へのリンクも間違っている気がする。
常設展示室では、特集展示『太陽の塔 黄金の顔』(2012年2月21日~5月20日)を同時開催。1970年の万博当時、塔に取り付けられていたオリジナルの顔である。以前、大阪で公開されたときは、大勢の人がつめかけたと聞いたので、江戸博も並んでいたらどうしよう、と心配した。現在のところ、全くの杞憂。東京人は、大阪人ほど「太陽の塔」に親しみを感じていないのかな。
ネタバレになるが、常設展示室では「日本橋」の上から黄金の顔を見下ろすかたちになっている。見上げた状態と角度が変わるので、鼻と口の尖り方が目立って、少し印象が異なる。しばらく眺めていたら、急に目にライトが点って、びっくりした。3分点灯~1分消灯を繰り返しているのだそうだ。橋の下に下りて、顔に近づくこともできるが、同じフロアに立つと、鼻と口がヨットの帆(あるいは鮫のヒレ)みたいに突き立っているだけで、何だか全く分からない。ただ、出口付近に、太陽の塔のミニチュアなど関連展示もあるので、お忘れなく。
※松浦寿輝『エッフェル塔試論』(文庫版もあり)
