見もの・読みもの日記

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奈良国立博物館で遊ぶ:特別陳列・お水取り(2011)

2011-03-08 22:52:19 | 行ったもの(美術館・見仏)
奈良国立博物館 特別陳列『お水取り』(2011年2月5日~3月14日)

 『お水取り』は、この季節、奈良博恒例の特別陳列である。2009年に見ているので、さほど内容に変化はないだろうと思ったが、常設展料金(パスポートでOK)なので、寄っていくことにした。二月堂本尊光背(断片)や縁起絵の数々、鐃(にょう=鈴)、法螺貝、袈裟、袴、差懸(沓)など、何を見ても懐かしく感じる。中央には、実物大?で二月堂の礼堂が再現されており、白い戸張(カーテン)をくるくるねじって端に寄せ、整然と荘厳された内陣を見せている。こんなふうに戸張を開けてもらえるのは、冷え込みの厳しくなる深夜からなんだよなあ…。会場に低く流れる声明は、折しも「南無観」に差し掛かったところで、嬉しかった。

 思わず目が留ったのは、『二月堂練行衆日記』と題された冊子。展示箇所には、寛文7年(1667)の二月堂焼亡の様子が、緊迫した筆で記録されている。小観音は、実賢という僧侶が厨子を破り、袈裟に包んで持ち出した。しかし、大観音は運び出すことができなかった。「猛火忽昇于棟梁、無力消之、但怳然耳。然而、本願和尚安置之尊像、安然于火中、宛如有勢、衆人共拝更恐」…十分には理解できないけれど、文字を追っているだけでも、当時の人々の心の震えが伝わってくるようである(この箇所、「于」が「千」に見えて読みにくい)。

 隣りの『両堂記』によれば(この2点は1セットの資料らしい)、火が鎮まると、焼け落ちた棟木や瓦が尊体に当たることなく、大観音は焼け跡に立ちつくしており、人々は感涙した。しかし、秘仏であるので、急ぎスダレで覆い隠し、焼け残った八幡宮の新造屋に運び入れた。錬行衆は宿所でひそかに六時の行法を行い(修二会の最中だったのである)、小観音は法華堂内陣に南向きに遷した、云々。

 また『東大寺年中行事記録』には、同年=寛文7年(1667)9月、「鈴木与次郎」なる人物が、二月堂再建の設計担当者として、江戸幕府から派遣されたことが記されている。遠い過去の物語だと思っていた「二月堂焼亡」事件が、突然、生々しい人間ドラマとなって迫ってきて、面白かった。しかし、これらの記録文書類は、初見である。一昨年の展示には出ていなかったものだ。これらの写真が載っているなら、カタログが欲しいと思ったが、展示室に置かれているサンプルは、一昨年買って帰ったものと同じだ(奥付=平成21年改訂版)。せめて今年の展示リストがあるなら貰って帰りたいと思い、案内員の方に聞いてみた。すると、1階の受付にあるというので、貰いに行く。

 リストをいただくついでに「あのう…展示図録の内容は変わってないんですよね」と未練がましく聞いてみた。すると「以前にお買い求めですか? では、これを」と言って、全4ページの色刷りリーフレットを出してくれた。今年の展示品の写真と説明が掲載された追補ページである。わーい、ありがとうございます! 言ってみるものだな、と思った。

 引き続き、名品展『珠玉の仏教美術』(2011年2月15日~3月14日)を見ていく。大好きな『華厳五十五所絵巻』がたっぷり広げてあったり、ふだんあまり見ることのない考古遺品の犬型埴輪(白クマみたい)に驚いたり、楽しかった。気がついたら、この日も奈良博で4時間近く遊んでしまった。

 ミュージアムショップでのお買い物については、別掲。
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奈良国立博物館で遊ぶ:なら仏像館

2011-03-08 00:11:16 | 行ったもの(美術館・見仏)
奈良国立博物館 なら仏像館(2011年1月2日~4月10日)

 修二会聴聞の翌日は、いつもの土曜日くらいに起きて、宿を出た。興福寺の国宝館が9:00から開いていたので、入ってみる。昨年の夏以来だが、特に変わった様子がない。改装前のように、ときどき展示替えはしないのかな。いつでも名品が見られるのは嬉しいが、変化がないのは、ちょっとさびしい感じもする。

 それから奈良博へ。「なら仏像館」は、以前の本館常設展のこと。昨年7月にリニューアルしてから一度来ているのだが、あまり詳しいレポートを書けなかったことが気になっていた。奈良博は、東博と違って、常設展の展示品リストをネットに上げてくれないので、自分でつくろうと思っていたのだ。…この日、頑張ってメモを取っていたら、初めて(!)館内に「なら仏像館 展示品一覧」が置かれているのを見つけた。あ、こんなもの作るようになったんだ、と思って、帰ってからホームページを見直したら、「平成23年1月2日(日)~4月10日(日)」と「平成23年4月12日(火)~」の展示品リストが並んでいた。今後は、サーバ上にこれを残してくれると嬉しい。2010年12月以前のリストは存在しないのかな…。

 今回、第1室は「観音菩薩」の特集だった。テーマを記したパネルを見つける前に、室内をぐるり見渡して、そのことに気づいたときは、すごく嬉しかった。修ニ会の季節だものね! 博物館も、ひそかに観音悔過の修法を支援しているみたいな気がする。なお、個人的な希望では、第1室だけでも「展示位置」の分かるリストがほしい。ほしいと言っているだけでは仕方がないので、つくってみた。

(1) 十一面・奈良博・木造・平安(新薬師寺伝来)
(2) 十一面・元興寺・木造・鎌倉
(3) 十一面・勝林寺・木造・平安(強く腰をひねる)
(4) 十一面・西光院・木造・平安(初見だろうか? けっこう好き)
(5) 十一面・薬師寺・木造・奈良~平安(鼻が欠けている)
(6) 准胝・個人・木造・平安(白い胡粉のあとが残る)
(7) 十一面・新薬師寺・木造・平安(スラリと背が高い、板光背)
(8) 観音・奈良博・木造・平安(密教的)
(9) 観音・観心寺・木造・平安
(10) 観音・文化庁・木造・平安(奈良町の瑞景寺伝来)
(11) 千手・園城寺・木造・平安(ずんぐり、力強い)
(12) 十一面・地福寺・木造・平安
(13) 聖観音・勝林寺・木造・平安
(14) 如意輪坐像・奈良博・木造・平安(丹後の海中より発見されたとの伝承あり)
(15) 不空羂索坐像・東鳴川観音講・木造・平安

 素人には、一見よく分からないのだが、メモを取りながら、全て木造であることに気づいた。よく揃えたなと思ったけど、馬頭観音がいないのね。第2室は「如来」(ここに元興寺の薬師如来像がいる)、第3室は、特別公開の東大寺法華堂(三月堂)金剛力士像2体が、引き続き、おいでになる。部屋の隅に、ボランティア解説員の方が座っていたが、ほかは誰もいなくて、しばらく2体を独り占め状態だった。怪獣みたいにデカいのだが、全く怖くなくて、むしろ安心した気持ちになるのはなぜだろう。隅のソファで、しばらく眠りたくなった。

 第1室※印は、東大寺の西大門勅額。あと、詳細は奈良博の展示リストに譲るが、第10室「肖像」の大津皇子像(薬師寺)、第11室「神仏習合」、第12室「動物彫刻」の獅子&わんこ、などが今期の見どころだと思う。

 次期(4/12~)の展示品をあらかじめチェックできるのは嬉しい限りだが、また誘惑の種が増えてしまった感あり。困ったものだ。
コメント (1)
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