見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

京阪神美術館めぐり・2011年3月

2011-03-10 23:25:40 | 行ったもの(美術館・見仏)
 以下、まとめて…書けるかな。

大和文華館 開館50周年記念名品展Ⅲ『大和文華館の中国・朝鮮美術』(2011年2月19日~3月27日)

 展示リストによれば、全79点。工芸品が主なので、いつになく数が多い。「中国の彫刻・工芸」では『白地黒花鯰文枕』に笑いながら見とれる。私の好きな磁州窯である。たなびく水草と並行に、細身のナマズ2匹が泳いでいる。とぼけた表情がかわいい。『赤絵仙姑文壺』も磁州窯。へえー赤絵の磁州窯なんてあるんだ。清・景徳鎮の『素三彩(そさんさい)果文皿』は、さっぱりした色合いが現代的でオシャレ。よく似た洋食器をつくっているメーカーがあったと思うのだが、思い出せない。「朝鮮」ものでは『螺鈿魚文盆』がほしい! 寿司桶みたいだが、裁縫箱ではなかったか、という。絵画では、張宏筆『越中真景図冊』が斬新な構図で面白かった。ネットで検索したら、1985年の新収品として紹介されていた。

白鶴美術館 春季展『国宝経巻と弘法大師絵巻』(2011年3月5日~6月5日)

 大阪泊の翌日。今回は、行ったことのない美術館に初訪問を計画している。まずは神戸市東灘区にある白鶴美術館。白鶴酒造7代嘉納治兵衛(鶴翁)が創設した美術館である。創設者は、Wikiによると「少年時代に奈良の博物館で正倉院宝物の展覧があると進んで臨時の守衛をするなど、若い時から古美術好きの一面があった」って、微笑ましい…。阪急御影駅から山の手方向に登っていくと、特徴ある寺院建築ふうの屋根が見えてくる。外観はホームページで見ていたので驚かなかったが、格式ある高級ホテルを思わせる内装の重厚さに感激する。

 展示品もすごい! 注目は『賢愚経』(奈良時代)。茶色い楮紙を見慣れていた奈良朝の人々が、真っ白な檀(まゆみ)紙を見たときの驚愕はどれほどであったか…という解説にうなずく。あまりに白いので、骨を漉き込んだという意味で荼毘紙とも呼ばれるそうだ。薩摩焼でも思ったけど、「白」って憧れの色だったんだなあ。『弘法大師絵巻』(高野大師行状図画)は全10巻、鎌倉時代。前期(~4/17)は巻1~4の展示で、後期(4/19~)に巻5以降を公開。巻により「手」が違うのが面白い。前半では、巻1と4の画風が似ていて、いちばん巧い。巻2、3はちょっと落ちる気がする。巻4の平伏する嵯峨天皇、かわいいなー。

 別室で磁州窯の『白地黒掻落龍文梅瓶』を見たときは、きゃー!私のいちばん好きな!と飛び上がってしまった。周囲を一周できるのは初めてではないかしら。この龍、魁偉な上半身+前足に反して、下半身は魚類と同様、尻びれと二股の尾びれしかないことに初めて気づいた。

逸翁美術館 早春展『古筆と平安の和歌 料紙と書の美の世界』(2011年1月25日~3月6日)

 ここも初訪問。阪急宝塚線池田駅から歩く。阪急東宝グループの創業者、小林一三の蒐集品を展示する美術館。現在の建築は2008年竣工だそうで、ぼんやり予想していたより近代的な造りに驚く。古筆のほかに、歌仙絵が見られたことは得をした気分。佐竹本三十六歌仙の高光は、多武峰少将と呼ばれた色男ぶり(積極的な意味でなく)を彷彿とさせる。やや眉を寄せた品のいい顔立ちに朱の唇。黒の束帯に水色の平緒を垂らし、下襲の裾に摺り出した唐草文が美しい。太刀を佩いているのは武官だからか。

 なお、展示ケースには、佐竹本が切断・分売されたときの価格表が、さりげなく一緒に出ていて面白かった。1番・人丸1万5千円、2番・躬恒(探幽補筆)3千円…という具合で、30番・重之まで。安いのは住吉明神3千円(納得w)、高いのは小野小町3万円。番号の上に購入者の名前が記されているが、ところどころ朱筆で訂正されている(斎宮女御は、はじめ田近岩彦氏とあり、益田孝氏に訂正されている)。狩野山雪の俊成・定家・為家(三幅対)も面白かった。古筆は、やっぱり石山切。室内に飾るなら、仮名だけよりも和漢朗詠集がいいな。

藤田美術館 平成23年春季展『季節を愉しむⅡ 春~初秋の美術』(2011年3月5日~6月12日)

 今回のお目当ては、内山永久寺の障子絵だったという『両部大経感得図・善無畏』。昨年の秋季展で「龍猛」を見て、どうしてもこちらも見たくなった。春の風景だというが、色褪せたせいで、さびしい冬枯れの山中にしか見えない。五重塔の前の地面に座り込んで、天(の瑞雲)を見上げる僧侶と従者たちは、野点(のだて)に興じる茶人のようでもある。もう1つのお目当ては『玄奘三蔵絵』。公開は、第1巻第1段(~4/3)、第4巻第2段(4/5~5/8)、第6巻第2段(5/10~6/12)だそうだ。そのあと、奈良博で全巻公開なのは分かっているんだけど…。第1巻第1段は、みずら頭の童子・玄奘が、父親から孝経の講義を聞く場面を描く。冒頭、鵞鳥の浮かぶ大河は黄河なのかな、それとも洛河か。朱と緑に塗られた建築、庭には巨大な太湖石っぽいものが置かれていて、一生懸命「異国らしさ」を演出している感じが面白い。

※私の好きな磁州窯:垂涎のページ(中国古美術 太田)
コメント (1)
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