○東京都美術館 美連協25周年記念『日本の美術館名品展』(2009年4月25日~7月5日)
公立美術館のネットワーク組織である美術館連絡協議会の創立25周年を記念して、各館選りすぐりの名品220点(西洋絵画50点、日本近・現代洋画70点、日本画50点、版画・彫刻50点)が集結した展覧会。地に足の着いた、いい企画だと思う。海外から超大作を借りてくるのもいいが、自分たちの持っている「お宝」に光をあて、誇りと責任感を思い起こすのも、たまには必要なことである。
印象に残った作品を挙げていくと、まず、モネの『ポール=ドモアの洞窟』(茨城県近美)。海辺に張り出した大きな岩の洞窟を描いたもの。海の青色がものすごくきれい。モネにこんな青色があったんだ、とびっくりした。その隣りの『ジヴェルニーの積みわら、夕日』(埼玉県立近美)は、教科書どおりのモネなのに。セザンヌの『水の反映』(愛媛県美術館)も好きだ。よく見ると、森の中の湖を描いたものだと分かるが、禁欲的で、ほとんど抽象絵画に感じられる。フランソワ・ポンポンの彫刻『シロクマ』も好きだ。
100館の公立美術館が参加しているだけのことはあって、作品は多彩。この「並べ方」を考えるのは、楽しいけれど大変な作業だったろうなあ、と思う。1点1点がどんなに素晴らしくても、隣り合う作品どうしが魅力を打ち消しあっては何にもならない。ヘンな比喩だが、勅撰和歌集を編纂した歌人たちの苦心を思わせる。個人的には、カンディンスキー→エゴン・シーレ→ピカソとか、ピカビア→ダリ→ミロのあたりの「呼吸」に、膝を打つような思いで見とれた。
作品には所蔵館からの「コメント」が付いていて、「これは当館の代表作」「最も人気のある作品」「いちばん出品回数の多い作品」など、どうしたって自慢が多くなるのは御愛嬌である。でも、萬鉄五郎の『ボアの女』(岩手県立美術館)に「当館のモナリザ」とあったのには、申し訳ないが笑ってしまった。いや、私は萬鉄五郎が大好きなので、萬のコレクションを持つ同館へは、ぜひ行ってみたいと思う。
今村紫紅の『黄石公・張良』(横須賀美術館)は初見かなあ。先だって永青文庫で、やはり中国ダネの『三蔵・悟空・八戒』三幅対を見て、のほほんとした雰囲気がいいと思ったが、これも同様にいい。気弱そうな驢馬がかわいい。
見終わって、もちろん満足できる展覧会だったが、あれ?あの画家の作品はひとつもなかったな…というのが、私にはいくつかあった。そんな感想を話し合ってみるのも面白いと思う。
※参考:美術館連絡協議会(公式サイト)
http://event.yomiuri.co.jp/jaam/index.cfm
公立美術館のネットワーク組織である美術館連絡協議会の創立25周年を記念して、各館選りすぐりの名品220点(西洋絵画50点、日本近・現代洋画70点、日本画50点、版画・彫刻50点)が集結した展覧会。地に足の着いた、いい企画だと思う。海外から超大作を借りてくるのもいいが、自分たちの持っている「お宝」に光をあて、誇りと責任感を思い起こすのも、たまには必要なことである。
印象に残った作品を挙げていくと、まず、モネの『ポール=ドモアの洞窟』(茨城県近美)。海辺に張り出した大きな岩の洞窟を描いたもの。海の青色がものすごくきれい。モネにこんな青色があったんだ、とびっくりした。その隣りの『ジヴェルニーの積みわら、夕日』(埼玉県立近美)は、教科書どおりのモネなのに。セザンヌの『水の反映』(愛媛県美術館)も好きだ。よく見ると、森の中の湖を描いたものだと分かるが、禁欲的で、ほとんど抽象絵画に感じられる。フランソワ・ポンポンの彫刻『シロクマ』も好きだ。
100館の公立美術館が参加しているだけのことはあって、作品は多彩。この「並べ方」を考えるのは、楽しいけれど大変な作業だったろうなあ、と思う。1点1点がどんなに素晴らしくても、隣り合う作品どうしが魅力を打ち消しあっては何にもならない。ヘンな比喩だが、勅撰和歌集を編纂した歌人たちの苦心を思わせる。個人的には、カンディンスキー→エゴン・シーレ→ピカソとか、ピカビア→ダリ→ミロのあたりの「呼吸」に、膝を打つような思いで見とれた。
作品には所蔵館からの「コメント」が付いていて、「これは当館の代表作」「最も人気のある作品」「いちばん出品回数の多い作品」など、どうしたって自慢が多くなるのは御愛嬌である。でも、萬鉄五郎の『ボアの女』(岩手県立美術館)に「当館のモナリザ」とあったのには、申し訳ないが笑ってしまった。いや、私は萬鉄五郎が大好きなので、萬のコレクションを持つ同館へは、ぜひ行ってみたいと思う。
今村紫紅の『黄石公・張良』(横須賀美術館)は初見かなあ。先だって永青文庫で、やはり中国ダネの『三蔵・悟空・八戒』三幅対を見て、のほほんとした雰囲気がいいと思ったが、これも同様にいい。気弱そうな驢馬がかわいい。
見終わって、もちろん満足できる展覧会だったが、あれ?あの画家の作品はひとつもなかったな…というのが、私にはいくつかあった。そんな感想を話し合ってみるのも面白いと思う。
※参考:美術館連絡協議会(公式サイト)
http://event.yomiuri.co.jp/jaam/index.cfm