見もの・読みもの日記

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屏風と漢籍/天地人(サントリー美術館)

2009-06-28 23:55:13 | 行ったもの(美術館・見仏)
サントリー美術館 NHK大河ドラマ特別展『天地人-直江兼続とその時代-』(2009年5月30日~7月12日)

 今年の大河ドラマ『天地人』は、ちっとも面白くない。もはやネタとして視聴するのも飽きてしまった。なので、サントリー美術館がこんなヘボドラマに便乗すると知ったときは吃驚した。まあ、そうは言っても、国宝『上杉本洛中洛外図屏風』(6/27~7/12)が東京で見られるのはありがたい話で、いそいそと出かけてきた。

 会場に入ると、いきなり「愛」の前立の兜が目に飛び込んでくるが、これは複製のご愛嬌。第1部は「直江兼続の生涯」と題して、兼続をとりまく人々を、ゆかりの武具・刀剣・書状・考古資料などで紹介。上杉謙信、豊臣秀吉など、ビッグネームにかかわりがないわけではないけれど、地味な展示だな~と苦笑いしてしまった。いずれも県立の博物館や歴史資料館の常設展に並んでいるような資料で、大河ドラマにでもならなければ、こんなふうに足を止めて、じっくり見る観客は少ないのではないかと思う。

 私は、謙信が喜平次(景勝)に宛てた仮名書きの書状(新潟県立歴史博物館蔵)が気に入った。ふっくらした温和な書体である。『川中島合戦図屏風』(和歌山県立博物館蔵)では、思わず、武田方の武将の姿を探してしまって、高坂弾正、真田幸隆、相木市兵衛、原隼人などの名前を見つけると嬉しかった。山本勘助も、それと分かる風体で描かれている。

 4階から3階へ下りたところに、お待ちかねの『上杉本洛中洛外図屏風』。2007年、京博の『狩野永徳』展では、文字どおり十重二十重の人垣に阻まれて、一歩も近づくことのできなかった作品だが、今回は、じっくり眺めることができた。神社仏閣のほかに「飛鳥井殿」とか「近衛殿」とか、貴顕のお屋敷が丹念に描き込まれているのが、1つの特徴ではないかと思う。神社仏閣も、必ずしも今日の名刹ばかりが大きく描かれているとは限らないのが面白い。将軍家に向かう上杉謙信を描いたとされる”貴人の行列”は左隻3~4扇の下のほう(相国寺のそば)にあり。かなり細密なので、見どころは事前に予習していくことをおすすめする。

 3階の第2部は「直江兼続の時代と文化」と題して、能衣装、茶道具など。地味ながら、兼続旧蔵の宋版漢籍がずらりと並んだ姿に圧倒された。それにしても、なぜかこれらの現所蔵者は、国立歴史民俗博物館である。どんな転変をたどったのか、気になる。
コメント (4)
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