○東京国立博物館 特集陳列・常設展示など
特別展『京都五山 禅の文化』のあとは、特集陳列いくつかを見てまわった。
http://www.tnm.jp/
■本館特別5室 特集陳列『仏像の道-インドから日本へ』
ちょっと前から、盛んにポスターやチラシが撒かれていたので、いったい何が始まるんだろうと思っていた。特別5室というのは、本館1階の大階段の裏側である。ダ・ヴィンチの『受胎告知』を公開していたところだ(私は行かなかったけれど)。今回は特集陳列なので、常設展料金で観覧できる。
暗い(壁も床も黒っぽい。要するに今どきの博物館っぽい)ホールに入っていくと、見慣れたガンダーラ仏が待っていた。東洋館1階のギャラリーで、長年見慣れた仏像である。その奥の、中国ふうの大きな仏頭も、どこかの石窟の一部であったろう仏龕(ぶつがん)も、やはり東洋館に並んでいたものと思われた。なんだ~。そのほか、「法隆寺献納宝物」の金銅仏は、たぶん法隆寺宝物館から。薬師寺の「聖観音菩薩立像」(模造)は、奈良博で展示されていたものではないかしら。
というわけで、特に新しいコレクションを呼び込んだわけではなく、あるものを再構成してみましたという企画らしい。まあ、しかし、最近とみに入場者が増えた東博にあって、東洋館は比較的閑散としていた。(日本の)仏像に対する関心は高いので、場所を移すことで、中国やインドの仏像が、新たなファンを獲得するなら、それはそれでいいことかもしれない。
それでは、東洋館の1階はどうなっているんだろう?と思って、あとで訪ねてみた。それなりにちゃんと後釜が埋っていて、特に寂しくなった印象はなかった。中国の仏像では、天龍山石窟の「菩薩半跏像」が出ていた。これって以前から常設されていたかしら? ギリシャ彫刻みたいに秀麗な肉体を持つ首なしトルソー。名品である。
■本館16室 特集陳列『博物図譜-ものの真の姿を探る-』
私の好きな「歴史資料」のコーナーは博物図譜を特集していた。夏休みの小中学生でも説明不要で楽しめる企画だが、”通”は編者や絵師に注目。関根雲停(せきねうんてい)の絵は、一度見たら、ちょっと忘れられない。博物画を超えている! 関連サイトがあったので、リンクを貼っておこう。そうかー洋画家の高橋由一も、田中芳男のもとで博物画を描いていた時期があったんだな。そう思うと、金刀比羅宮の高橋由一館で見た『鯛』とか『鱈梅花』とか、「わけ分からん」作品にも博物画の記憶が宿っているのだろうか。
あと明治34年、木村蒹葭堂(けんかどう)の百年忌に出版された『蒹葭堂誌』という冊子があって、挿絵の祭壇に蒹葭堂の肖像画が掛かっている。それを見たとき、おお、これは亜欧堂田善の!と私はすぐに思い出した。実際には、ちょっと私の記憶違いで、府中市美術館の『亜欧堂田善の時代』に出品されていた、谷文晁筆の肖像画であったが(→Wikipediaに図版あり)、これも一度見たら忘れられない作品である。この場合、「大愚に似た」蒹葭堂の風貌が、というべきかもしれないが。
なお、「書画の展開」のコーナーに、さりげなく絵師の書状が特集されていて嬉しかった。探幽、応挙、抱一、椿椿山まで。「屏風と襖絵」に出ている伝俵屋宗達筆『関屋図屏風』もおすすめ。