見もの・読みもの日記

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あやしい常識/戦国時代の大誤解(鈴木眞哉)

2007-08-09 23:44:03 | 読んだもの(書籍)
○鈴木眞哉『戦国時代の大誤解』(PHP新書) PHP研究所 2007.3

 近所の本屋に行ったら、本書が壁いっぱいにディスプレイされていた。オビに「ホンモノの武田信玄さんはだれだ!?」とあるくらいだから、大河ドラマ『風林火山』人気(というほど視聴率は伸びていないのだが)にあやかろうという商法である。そこに、まんまとハマって、買ってしまった。

 テレビドラマ、とりわけNHKの大河ドラマにおける戦国時代・戦国武将の描かれ方に難癖をつけながら、歴史を考えようという趣向である。と言っても、所詮ドラマはドラマと割り切っているので、著者は本気で腹を立てているわけではない。ただ、あまりにもつくりごとを鵜呑みにしがちな視聴者に、注意を喚起するというスタンスである。

 面白かったのは、後代(近世以降)における「フィクション」の作られ方と広まり方である。たとえば、信長の旧臣・太田牛一の『信長公記』が正確な記述につとめているのに対して、小瀬甫庵の通俗版『信長記』(江戸初期)は話を面白くするための虚構がふんだんに取り入れられている。そして、明治時代に陸軍参謀本部が作った『日本戦史』は後者を採用し、学者や軍人がもっともらしい解釈を加えた結果、こちらが定着してしまったのだという。

 「種子島に初伝したわけではない(?)鉄砲」というのは、昨年、歴博の『歴史のなかの鉄炮伝来』で異説を知って、びっくりしたものだ。関連するが「びっしり並んで鉄砲を撃つことなどできたのか?」というのも興味深い指摘である。「武士たちの食事は質より量」「刀は片手で扱うもの」「甲冑着けて遠路の行軍(はしない)」なんていうのも、考えてみると理が通っていて、なるほどなあ、と思った。
コメント
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