○山種美術館『日本の四季―雪月花―』
http://www.yamatane-museum.or.jp/
昨年暮れから始まっていた展覧会のはずだが、行ってみたら、富士山とか、干支の犬とか、新春ムードの作品が多い。上記のホームページをよく読んだら、年末に一部展示替えをして、「正月にふさわしい、『吉祥』の画題」を揃えたのだそうだ。なるほどね。
しかし、いちばん印象に残ったのは、吉祥とはあまり関係のない作品だった。石田武の『月天心』。蕪村の俳句「月天心貧しき町を通りけり」に触発されて描いたものだというが、月光に照らされているのは、法隆寺の夢殿である。八角屋根の頂点に載った宝珠が、青い夜空に浮かんだ白い月と、静かに交信しているようだ。石田武氏は大正11(1922)年生まれ、これは、平成4(1992)年というから、70歳のときの作品である。ほかの芸術ジャンルに比べて、画家(特に日本画家)って、全般に長生きで、しかも晩年になっても創作力が衰えないのは何故なんだろう?
それから、『松竹梅』の三幅対で、横山大観が「松」、川合玉堂が「竹」、川端龍子が「梅」を描いたものがある。それぞれ、隣の作品との調和を保ちながら目立とうとしている、その遠慮と自己主張の兼ね合いが絶妙で、面白かった。文学で言えば、連句みたいである。個人主義の徹底した西洋の絵画には、こういうのないだろうなあ。
http://www.yamatane-museum.or.jp/
昨年暮れから始まっていた展覧会のはずだが、行ってみたら、富士山とか、干支の犬とか、新春ムードの作品が多い。上記のホームページをよく読んだら、年末に一部展示替えをして、「正月にふさわしい、『吉祥』の画題」を揃えたのだそうだ。なるほどね。
しかし、いちばん印象に残ったのは、吉祥とはあまり関係のない作品だった。石田武の『月天心』。蕪村の俳句「月天心貧しき町を通りけり」に触発されて描いたものだというが、月光に照らされているのは、法隆寺の夢殿である。八角屋根の頂点に載った宝珠が、青い夜空に浮かんだ白い月と、静かに交信しているようだ。石田武氏は大正11(1922)年生まれ、これは、平成4(1992)年というから、70歳のときの作品である。ほかの芸術ジャンルに比べて、画家(特に日本画家)って、全般に長生きで、しかも晩年になっても創作力が衰えないのは何故なんだろう?
それから、『松竹梅』の三幅対で、横山大観が「松」、川合玉堂が「竹」、川端龍子が「梅」を描いたものがある。それぞれ、隣の作品との調和を保ちながら目立とうとしている、その遠慮と自己主張の兼ね合いが絶妙で、面白かった。文学で言えば、連句みたいである。個人主義の徹底した西洋の絵画には、こういうのないだろうなあ。