見もの・読みもの日記

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日本のアール・ヌーヴォー/近代美術館工芸館

2005-10-30 12:03:09 | 行ったもの(美術館・見仏)
○東京国立近代美術館工芸館『日本のアール・ヌーヴォー 1900-1923:工芸とデザインの新時代』

http://www.momat.go.jp/CG/cg.html

 「アール・ヌーヴォーは日本美術の影響を受けて生まれた」というのが、私の理解だった。確かに、それは間違いではないらしい。しかし、19世紀末、ヨーロッパを席巻したアール・ヌーヴォー様式は、たちまち、母胎である日本美術を”時代遅れ”にしてしまった。1900年、パリ万博当時、ヨーロッパにおける日本の工芸品に対する評価は凋落していた。これに危機感を抱いた日本の美術家たちは、アール・ヌーヴォーを”逆輸入”することによって、工芸品の刷新を図ろうとした。

 というわけで、1900~1910年代に制作された、絵画、陶磁器、家具、布製品などが集められている。目をひいたのはブックデザイン。漱石の本って、どれもきれいだと思っていたら、1905年に『吾輩は猫である』を発表し、1916年『明暗』執筆中に死去だから、まさに「日本のアール・ヌーヴォー」の時代に、ぴったり重なっているんだなあ。

 初期の「日本のアール・ヌーヴォー」は、ちょっとバタ臭い感じがして、あまり好きではない。むしろ、「アール・ヌーヴォー」の洗練された装飾性を以って、日本の伝統的なデザインを再構成しようという動きが出てからの作品が、私の趣味に合う。

 たとえば、浅井忠の猿蟹合戦をモチーフにした湯呑み一式。それから、琳派の継承者といわれる神坂雪佳には、『百々世草』(1909-1910年)という図案集があるが、60数点のデザインを、全て電子展示で見ることができた。これは嬉しかった。
コメント (1)
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