見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

お茶で一服/神奈川県立金沢文庫

2005-10-18 23:22:12 | 行ったもの(美術館・見仏)
○神奈川県立金沢文庫 開館75周年記念特別展『茶と金沢貞顕』

http://www.planet.pref.kanagawa.jp/city/kanazawa.htm

 喫茶は、禅僧・栄西によってもたらされ、鎌倉中期には、貴族や武家、寺院などの間に普及するようになった。というわけで、金沢文庫に多数、残された金沢(北条)貞顕の書状を手がかりに、当時の喫茶習俗を再現したのが、この展示会である。

 会場に入って、まず目につくのは、写実的な肖像画、堆黒・堆朱の精緻な工芸品、青磁の器、天目茶碗など。文書(もんじょ)中心の展示会が多い金沢文庫にはめずらしく、華やかで、目移りして、楽しい。特に、鶴岡八幡宮所蔵で「長命富貴」の文字が入った堆黒箱は逸品。栄西が中国から持ち帰ったものと言われている。

 これら”舶来”の香り高い文物に囲まれて、中央のケースには、金沢貞顕の書状が展示されている。闊達な筆で記された文面には、何やら難しい用件のあとに、先日のお茶は美味しかったとか、茶葉を少し送ってほしいなどの言葉が添えられており、古人が身近に感じられて、微笑ましい。

 金沢文庫の『覚禅抄』は、諸仏の特徴を解説した図像集で、仏教関係の展示会には必ず出るおなじみの書物だが、奥書を見るのは初めてのことだった。そこには、書写者が、称名寺二世長老の剱阿から、眠気覚まし(?)のお茶をふるまわれたことが記されている。解説は「称名寺茶圃の銘茶だろう」とする。当時、多くの寺院が、自家菜園でお茶を栽培していたらしい。

 このほか、「闘茶」という風流な遊びがあったこと、「茗」という字が一種のお茶の別名であることなど、金沢文庫の膨大な文書類の中から、お茶にかかわる記述のあるものが展示されている。いつもはとっつきにくい古文書も、いくぶん親しみやすく感じられる企画である。
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