見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

東国の熊野信仰/神奈川県立歴史博物館

2005-10-16 22:20:45 | 行ったもの(美術館・見仏)
○神奈川県立歴史博物館 特別展『聖地への憧れ―中世東国の熊野信仰―』

http://ch.kanagawa-museum.jp/

 なぜ神奈川の博物館で熊野信仰?と思われるかもしれないが、会場入口に飾られた「熊野権現輿」(神奈川・清浄光寺蔵)がその答えを示している。日本の神や仏は、しばしば遊行するである。輿に乗り、信仰厚い上人たちに守られて、山を越え、国境を越えるのだ。

 この展覧会は、宮城県の新宮社、山形県の熊野大社など、東北各地に伝わる熊野信仰の遺物を紹介する。また、神奈川県内の名刹・清浄光寺(遊行寺)、称名寺、覚園寺、神武寺などが、ことごとく熊野信仰にかかわりを持っていたことを示す。とりわけ一遍の時宗は、熊野信仰とのつながりが濃いことが分かり、興味深かった。

 展示品としては、前半の歴史文物はインパクトがいまいちで、後半の雑多な関連品のほうが面白かった。近年、発見されたばかりという『箱根権現縁起絵巻』(天正年間・個人蔵)は、あんまり巧くないところが楽しい。豆つぶほどの男女が温泉につかってくつろぐ姿など、ほんわかムードの画面の端が、突然、血の池地獄になっていたり、カモと人間がほとんど同じ背丈だったり、笑える。

 『那智参詣曼荼羅』『熊野観心十界図』(どちらも新潟・個人蔵)は、類例の多いもの。赤・白・黄土色の明るい色調が特徴で、私はいつも沖縄の紅型(びんがた)を連想してしまう。

 神奈川県内の師岡熊野神社が所蔵する竜頭(竿頭につける飾り)12だか13だか揃いというのも、かわいかった。
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