「音楽&オーディオ」の小部屋

クラシック・オーディオ歴40年以上・・身の回りの出来事を織り交ぜて書き記したブログです。

AI(人工知能)で蘇る「美空ひばり」

2019年10月01日 | 音楽談義

いやあ、驚いた!

昨日(28日)、朝いちばんで過去記事のアクセス状況を何げなく見たところ「高次倍音の魅力」がトップにランクインしてた。それも凄いアクセス数だった。

5年以上も前に投稿した記事がなぜ急に今頃になって人気が出たの?

謎が解けぬまま、昼間になって昨夜録画していたNHK「AIで蘇る美空ひばり」を再生して観たところようやく疑問が氷解した。

番組の中で美空ひばりの歌声をAIで再生するときに、キーポイントになっていたのが「高次倍音」だったのである。

おそらく「高次倍音」でググったときに、たまたま上位にあったので目に触れる機会が多かったに違いない。それだけでもこの番組の衝撃度が推し量られようというものだ。

ちなみに、音楽における「AI」の活躍については丁度1か月前の9月1日付けで「近未来、モーツァルトの新作オペラが聴けるかも!」を登載したばかりである。

このNHKの番組では「AIがとうとう芸術の領域に進出して、人間の心まで再現できるようになった」というコメントが印象的だった。

それにしても、架空の「美空ひばり」の「AI」による新曲披露の完成度は恐るべきものだった。私たちはいま凄い時代の変わり目にいることを痛感した。(番組を見逃した方は実に惜しい!再放送を必見ですよ)

それでは折角だから5年前の記事「高次倍音の魅力」を若干修正のうえ以下のとおり搭載しておこう。はからずも今回の番組を通じて「高次倍音」にスポットライトが当たったのはたいへんいいことだった。


NHK・BS番組「名器ストラディヴァリの秘密」について、高校時代の同級生U君から次のようなメールが届いた。

「同番組では、ストラディバリ再現に向けて、現代の名工数十人と科学者がワールドワイドにタッグを組み研究する様子が流れましたが、当方が特に注目したのは、ヴァイオリンの音を周波数分析した図表を皆で検討している様子でした。

その図表の横軸は、200Hz~9000Hzとなっていましたが、この周波数範囲を見て“なるほど”と合点した次第です。

ヴァイオリンの音色の違いを知る上で必要にして充分なこの
範囲で同じ周波数成分を示すように作れば同じヴァイオリンが作れるという訳です。

当方も時々周波数分析をしていますが、どういう環境(無響室?)で、どれ位の距離から、
どういうマイクを使い、どういう周波数分析ソフトを使ったのか等々、興味は尽きません。」

ところが、この意見に対してO君から問題提起がなされた。

「人間が好む楽器の『音』(響き)は《高次倍音》が多く含まれている程、より好まれると聞いています。

そうすると9000Hzでは20000Hzに遠く及ばず、人が好む<ストラディバリウス>の楽器(倍音)を分析するには不足するのではないか・・と思われます。

同じ高さ(音程)の音なのに、その音を出している楽器を聞き分けることができるのは、含まれている「倍音」の比率が楽器によって異なるのが理由です。

簡単な例を引けば<二杯酢>か<三杯酢>か味覚で判断できるようなものでしょうか・・・。

同じ<三杯酢>なのに、<ストラディバリウ>だけは格別に旨い・・・

少なくともその原因の一つが『高次倍音』の含有量にありそうであれば、その領域まで計測してみる価値はアルと思うのですが・・・。」

すかさず、U君から自説を補強するメールが届いた。

ちなみにU君は大学の機械科卒業で、O君は桐朋学園大学卒の音楽の専門家で、両者のやり取りは実に興味深い。

「聴覚を味覚で例えるに当たり、その対象をOH君の好きな日本酒ではなく「酢」としたことで、<ストラディバリウ酢>を引っ張り出した訳ですね。読み進むうちに、えっ?どうして“酢”なんだろうと一瞬思いましたよ。

《高次倍音》が多いということは、波形が複雑 (反対に、単純=サインカーブ=純音)だという事です。

どんなに複雑に見える波形でも“フーリエ級数”という、サインカーブを組み合わせた数列で表現出来ます。

言い換えればいかなる波形でも色々なサインカーブの集まりから成っているということです。

9000Hzと20000Hzの問題ですが、人間の可聴帯域の上限は20000Hzとよく言われますが、これは若くて特に耳の良い人が、特にコンディションの良い時に聴く (というより何か圧迫感を感じる) ことが出来ると言われています。すなわち人類の聴ける最高周波数なのです。(現時点で当方は10000Hz付近から怪しい)

そしてこれらのテストは純音で行われるので、周波数分析の横軸に目盛られた数値とは少し異なると考えて良いのではないでしょうか。」

以上の“やりとり”でもって、ようやく一件落着(笑)。

ここでちょっと補足しておくと、周知のとおり楽器の音は「基音」と「倍音」とで成り立っている。

ヴァイオリンの基音はおよそ「200~3000ヘルツ」で、低次倍音と高次倍音を含めた周波数帯域となると、およそ「180ヘルツ~1万ヘルツ以上」とされている。

比較する意味でピアノの例を挙げると、基音はおよそ「30~4000ヘルツ」、倍音を含めた周波数帯域は「30~6000ヘルツ」とされているので、明らかに高音域が頭打ちになっている。

このことからもヴァイオリンが持つ「高次倍音」の魅力が推し量られ、その音色からしていろんな楽器の中でも別格の存在であることが分かる。

したがってヴァイオリンの再生に特化したSPユニットがあっても少しも不思議ではないが、それは手前味噌になるが「AXIOM80」に尽きる。また、真空管アンプとTRアンプの一番の違いも「高次倍音」の再生能力に尽きる。

まあ、ヒラリー・ハーンの「プレイズ・バッハ」を一度でも聴いてもらえればそれは分かるでしょう(笑)。
            

なお、ずっと以前に観た「ストラディヴァリ」の関連番組では、ヴァイオリンに塗る「ニス」に秘密があるとかで、独自の調合をしたニスで実験をしていた科学者がいたがその後、いっさい話題にならないのでおそらく決定打とはならなかったのだろう。 

長いことオーディオをやっていると「電気回路による音」と「楽器が出すナマの音」とは明らかに一線を画しており、(前者が後者に)とうてい追いつけそうにないのがマニアとしては虚しいところだが、その一方、科学がどうしてもストラディヴァリのような人間の感性技を凌駕できないのが痛快といえば痛快。

何といってもキカイよりも“人間さまの感性(耳)”の方が上であることの証明なんだから(笑)。

最後に、個人的なメールのやり取りをそっくりそのまま当方のブログに掲載することについて、快く承諾してもらった仲間たちに心から感謝です!

以上のとおりです。ご参考になれば幸いです。

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