「音楽&オーディオ」の小部屋

クラシック・オーディオ歴40年以上・・身の回りの出来事を織り交ぜて書き記したブログです。

高騰する古典真空管

2013年12月12日 | オーディオ談義

「昨日のオークションの結果をご存知ですか?」とオーディオ仲間のkさん(福岡)から電話があったのは9日(月)の早朝のことだった。

「いいえ、まだ確認をしてませんが。」

「何と16万3千円まで上がりましたよ!15万円までならと、狙っていたのですが途中から諦めました。この分では来年以降、20万円以上になることは確実です。本家本元のアメリカでは日本製の出力トランスを使った2A3(真空管)の評価がうなぎ上りで今では逆輸入される程です。全体的に品薄のようですよ。」

「こうなると、とても手が出ませんね~」と、思わず“ため息”が出た。

説明しよう。

待望の古典真空管「1枚プレートの2A3」のオークションが開始されたのは12月2日で開始価格は2万円。それがみるみるうちに値上がりして12万8千円で一時高止まり。入札しようかどうか興味を持って推移を見守っていたところだった。

出品者からの情報は次のとおり。

              

RCAの直熱3極出力管2A3です。 出品していますのは、発売当初のいわゆる1枚プレートで、2A3が製造され始めた一時期のみ販売されたタイプです。 1930年代前半の製品。細いフィラメントを何回も往復させる繊細な構造で、2A3の中でも音質に定評の有るところです。

出品していますのは、1本は新品元箱入り。 もう1本も新品元箱入りで、こちらは未開封の状態ですので、今回開封せずに出品しています。こちらも、2A3 1枚プレート独特の内部構造(中央部にフィラメント吊り金具を固定する長方形の金具とスプリングコイル)が箱の外からも確認出来ます。 

また、この状態で動作も確認済みです。 現在では、2A3 1枚プレートの新品元箱入、特に未開封品は極めて希少です。
どちらも今回出品のため測定しただけです。 特性はTV7/Uで確認済み。 測定値は、基準値38に対しどちらも63となっています。
入札価格は2本セットの価格です。 よろしくお願いします。

ちなみに、我が家では2A3真空管が6本(RCA4本、マルコーニ2本)あるがいずれも後期タイプの2枚プレートでペアで4万円程度の代物。1枚プレートと2枚プレートでは“月とスッポン”ほどの音質の差があることを実際に試聴して承知しているので、今回はぜひとも手に入れたかったが、16万円ともなるとちょっとためらう。それに2A3アンプはサブ的な存在だしねえ(笑)。

なお、オークションの出品者の身元は「名店」の誉れ高い「EU〇〇〇」さんなので、絶大の信頼が置けるところから入札者が殺到したのも一因。皆さん、実によくご存知で古典真空管の世界は実に目利きが多い!

その「EU〇〇〇」さんから、同時に出品されていたのが泣く子も黙る(笑)「WE300B」の古典管。

同じくオークションの情報によると、

           

WE ウエスタンエレクトリックの直熱3極出力管WE300Bです。 言うまでも無く、WEの代表的銘球で、出品していますのは1950年代半ばまでに製造されたいわゆるオールドタイプです。 3桁のロットで、プリントベースとしては初期の300Bです。 1950年製(013ロット)と1954年製(452ロット)。

どちらもプレート上部側面の3枚のマイカ板が長い長方形になっている点やプレート下部のマイカ板の中央部だけに白いマグネシアを塗布してある点(劣化の進行を防ぐため)など、どちらもWE300Bオールドの特徴を備えています(この特徴は、WE300B刻印からそのまま引き継がれたもの)。 黒つや消しプレート。

元箱は元からのものではないようですが、どちらもゲッタの減少も見られず、新品と変わらない状態のものです。 特性はTV7/Uにより確認済み。 測定値は基準値58に対し79、82となっています。
入札価格は2本セットの価格です。 よろしくお願いします。

このオークションの落札結果だが開始価格が5万円のところ、最終的に入札件数が141件、落札額は何と「615900円」。

たった2本の真空管がこの値段ですよ~!

通常の感覚からすると、おそらく「たかが真空管に61万なんてバッカじゃなかろか」と思われることだろう。

しかし、実際に「“いい音、いい音楽”に接したときに感激のあまり、
お金なんて問題外だ、どれだけ突っ込んでも惜しくないぞ」と心に誓うのがオーディオマニアの常なので、このWE300Bの落札者の気持ちは手に取るように分かるのである。

我が家にはWE300Bの1950年代が3本(ロットナンバーが139,139,214)、1960年代が1本、1988年製が2本、そして中国製が2本ある。実際に使ってみると分かるが「オールドタイプじゃないと出ない音がある」のはたしかである。

したがって、自分だってもし手持ちのWE300Bオールドが無くなれば「まるで麻薬が切れかかったようなもの」で、大枚をはたいてでも購入する可能性が大いにある。

な~に、あの世までお金を持っていけるわけではないから、生きているうちにここで使わないでいったいどうする!?(笑)。

それだけの魅力と価値を大いに秘めている真空管である。

ちなみに1990年代以降に作られたWE300Bもときどきオークションに出品されているが、10万円前後の価格なのに人気がまるでない。あくまでも噂だが、頻繁に”球切れ”するそうだ。

「女房と畳は新しい方が良い」という言葉があるが、真空管に限っては例外ですからね~。


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