前回からの続きです。
私たちオーディオ仲間の間ではシステムの改造後、メチャクチャに音が良くなったときに「もう、笑いが止りませんよ」という言い方をよくするが、結論から言えば今回の新たな「AXIOM80」(以下「80」)の取りつけがまさにそうだった。
とはいえ、紆余曲折があったのはもちろんである。
強力な助っ人のAさん(湯布院)とともに、改造後の「80」の試聴に入ったのは午後2時ごろだった。
テスト盤は「パガニーニのヴァイオリン協奏曲第1番」(庄司さやか、メータ指揮)で、冒頭の腹の底にズシ~ンと響くオーケストラのフォルテがどれだけ表現できるかがポイント。
駆動するアンプはWE300B真空管アンプ(モノ×2台)。Aさんは14日(土)にも我が家にお見えになっており、オリジナル・エンクロージャー(以下「オリジナル」)に入った「80」の音に馴染んでおられるので比較してもらうのは絶好の機会。
目を瞑って10分ほど黙って聴かれていたAさんが遠慮がちにやおら口を開かれた。
「どうも音が“ざらついている”感じがします。それに何だか全体的に音の佇まいがゴチャゴチャしている感じです。長い間待機していた80を久しぶりに鳴らしたせいでエージングが足りないのかもしれませんが・・・。ARUの位置を一番下の穴に移した方がいいような印象を受けました。」
さすがに百戦錬磨のAさんだけあって、的確にポイントを指摘されてくる。
「やはり、そうですか!すぐに作業にとりかかって移し替えますが、時間の方は大丈夫ですか。」
「ええ、時間は十分ありますよ。加勢しましょうか?」
「いや、独りで十分ですよ。」
さあ、ものの30分ほどかかっただろうか。移し替えが無事終了した。
さあ、改めて注目の音出し~。
初めの一音を聴かれた途端に「これは驚きました!オリジナルよりもローエンドへの伸びが明らかにいいですよ。」
「いやあ、私もビックリです。こんなに変わるとは夢にも思いませんでした。80とARUは出来るだけ離した方がいいようですね。ホーンロードみたいな効果が出るのでしょうか。比較的低音が出にくいとされる80からこんな豊かな音が出るなんてとても信じられません!」
これだからオーディオは止められない(笑)。今回かかった費用はSPターミナルとARUに使ったステンレスの金網代くらいのものでしめて5000円程度というのもうれしい。
ただしオリジナルにもいい面があることはたしかで、ボーカルなどのあまり広大な周波数レンジを必要としないソースでは雰囲気の漂わせ方に一日の長がある気がする。
そのうちじっくり聴いていると面白いことに気が付いた。
出てくる音の形がエンクロ-ジャーの形と実に相似している!
片や、やや寸づまりの幅広い音、そして片や細身で上下のレンジがよく伸びた音。
これからいろんな方々に聴いていただいて、「肥満タイプ」と「長身痩躯タイプ」のどちらに軍配を上げるかお訊ねするのも楽しみのひとつだが、個人的には後者の方が総合力で上だと思うし、Aさんも同意見だった。
たいへん不遜な言い方になるが個人的に独自に作ったエンクロージャーが研究に研究を重ねたメーカー既成のエンクロージャーを部分的にしろ上回るなんて快感そのものである。
しかし、遠く海外などへの輸送コストの問題もあることだし、メーカーにもいろいろ制約があることはたしかである。
これと似たような話が名著「ベイシーの選択」(菅原昭二著)の中にもあって、JBLの低域用ユニット2発を独自に工夫した(とても輸送が困難な)特大のエンクロージャーに入れる話が出てくる。
とにかく、「メーカーの既製品を最良のものとして徒に信じることはない。」というのが自分のささやかなポリシーである。
まあ、ケース・バイ・ケースなのだが。
さあ、今日(18日)は福岡から同じ「80」の愛好者のKさんがお見えになる予定だがはたしてどういうご感想を洩らされるのだろう?