(前回からの続きです)
およそ7年ぶりに我が家にお見えになったKさん。
Kさんの目的はもちろん「ご持参されたCDトランスポートの音質確認」にある。
しかし自分の目的は「我がオーディオ・システムの音に感心してもらうこと」なんて言うと、これはちょっと身も蓋もない話になる。
実をいうと、Kさんが大枚のお金をはたいてアナログ(レコード)に熱中されているのがいまひとつよく分からない。
「本当にCDの音を極めてからアナログに走られたのだろうか?」という本質的な疑問を持っている。
たいへん僭越だが、その辺をクロック・リンクしたワディアのCDシステムでどの辺まで払拭できるのだろうか、むしろその点に大いに興味がある。
「デジタル」対「アナログ」の対決!
何はともあれ現在のシステムの試聴が先決。そのあとでKさんの機器をつなぎ変えて音質を比較するという段取り。
テスト盤はベートーヴェンの弦楽四重奏曲作品127。
しばらく無言のKさん、ようやくクチを開かれた。
「昔と随分違うなあ・・。やはり仕事から解放されてたっぷりとオーディオに時間をかけないと音は良くならないねえ」としみじみ述懐される。
どうやら認めてもらえたようだが、「アキシオム80」のアの字も言及されないところがいかにも負けず嫌いでプライドの高いKさんらしい。
こういうときは「いい音でしょう」なんて調子に乗らずにそっと控え目にしておくに限る。
それからはKさん持参のCDソフトをひととおり試聴。エソテリックから発売された限定盤だそうで原盤はデッカ。往時の貴重な名演ばかりですぐに売り切れるので予約して手に入れられているそうだ。
ピアニストのクリフォード・カーゾンの名前は、たしか五味康祐さんの著書に出てくるが、その演奏を初めて聴いた。曲目はモーツァルトのピアノ協奏曲第20番。
「こういう雰囲気を出せるのは内田光子さんぐらいだね。内田さんは世界でも最高のピアニストだと思う。すべてのアルバムを持ってるよ」とKさん。自分も同感。
話題が「音質」ではなくて「演奏」に及ぶのはたいへんいい傾向。
ほか「白鳥の湖」(フィストラーリ指揮、アムステルダム・コンセルトヘボウ)、素敵な女性ジャズボーカルのニッキ・パロットなどを聴く。
こうして我が家のCDトランスポート「ワディア270」〔次の写真の下部)の音質をみっちり確認したところで、いよいよKさんお目当てのエソテリックのCDトランスポート「P70VU」〔次の写真の上部)の出番へ。
当時の価格で85万円ほどしたそうで、たしかメカは「270」と共通のはず。
さて試聴結果はいかに?
続きは次回へ~。