「音楽&オーディオ」の小部屋

クラシック・オーディオ歴40年以上・・身の回りの出来事を織り交ぜて書き記したブログです。

チャイコフスキーとショパンはお好き?

2024年05月27日 | 音楽談義

フランスの女流作家「フランソワーズ・サガン」に「ブラームスはお好き」というタイトルの小説がある。

バッハやモーツァルトとは違って、わざわざ「お好き?」と訊くところに、西欧音楽界における「ブラームス」の微妙な位置づけを現わしているように思える。

そして
「チャイコフスキーがなぜか好き」(PHP新書)
という本がある。

 

「なぜか好き」という言葉に、ブラームスと同様の屈折した匂いを感じる(笑)。

著者は前東京外国語大学の学長の亀山郁夫氏。ロシア文学者として近年、「カラマーゾフの兄弟」をはじめロシアの文豪「ドストエフスキー」の一連の著作の新訳で著名な方。

文学のみならずクラシックにも興味をお持ちとは、ほの暖かい親しみを感じさせてくれるが「チャイコフスキー」となるとちょっと異質かな。

もちろんロシア出身という要素もあるのだろうが、クラシック通の間で「チャイコフスキーが好き」なんて広言することは何だか「はばかられる」感じを持つのは自分だけだろうか。

親しみやすいメロディが多いのはいいけれど、何回も繰り返しての鑑賞に堪えるには少し物足りない音楽という印象が個人的にはずっとしている。

したがって、チャイコフスキーと聞くだけで初心者向けの軽いイメージが先立ってしまう。

ふと、関連して以前のブログの中で「ショパンは二流の音楽」と記載したことを思い出した。

ショパンの音楽も親しみやすさという点ではチャイコフスキーと似たようなものだが、いくら筆の勢いとはいえ歴史に名を刻む大作曲家を二流といって一刀のもとに切り捨てる資格は自分ごときにあるはずがないという反省心のもとで亀山さんの率直な物言いがもろに心に響いてくる。

結局、作曲家の位置づけなんて個々の心情の中で相対的に決まるものであって、そっと心の中に秘めておけばいいものをというのが現在の心情である。

「雉も鳴かずば撃たれまいに」(笑)。

ところで作曲家に一流とか二流とかのレッテル貼りは不遜にしても世間一般のランク付けというのはあるのだろうか。

実は本書の30頁に興味深い記事があった。ロシアの作曲家たちがクラシックの世界でどのような位置づけにあるのかという視点から著者がウェブで調べた結果が次のとおり。(抜粋)

「今日、世界のコンサート会場で演奏される曲目の国別統計を取るとしたらどの国の作曲家が最高位にランクされるのだろうか。そんな非音楽的な好奇心に駆られてウェブ上に情報を求めた結果統計は見つからなかったがその代わりに「百人の音楽家たち」と題するランキング表が出てきた。

タイトルは「100 Greatest Classical Composers」とあり、もうけられた基準は「彼らのイノベーションや影響力だけでなくその美学的な重要性と歴史的な意味の重さ」とある。

そして出てきたのが次のランキング。

全文英語なので、これが日本のみならず世界的にグローバルな「ものさし」だといえよう。

第1位 ベートーヴェン 以下2 モーツァルト、3 バッハ 4 ワーグナー 5 ハイドン 6 ブラームス 7 シューベルト 8 チャイコフスキー 9 ヘンデル 10 ストラヴィンスキー 11 シューマン 12 ショパン 13 メンデルスゾーン 14 ドビュッシー 15 リスト 16 ドヴォルザーク 17 ヴェルディ 18 マーラー 19 ベルリオーズ 20 ヴィヴァルディ

これまで自分の好み次第で作曲家のランクを勝手に決めつけていたもののこのランキングでいろいろ考えさせられた。

まず上位4名の顔ぶれは妥当なところという気がする。もはや時代遅れと思っていたベートーヴェンが1位とはさすがだが、「第九」という十八番(おはこ)の影響もあるのかな~。そして、近年コンサートを席巻しているマーラーが18位とは後ろ過ぎて意外。

逆に、今回俎上にのぼったチャイコフスキーが8位、ショパンが12位というのもちょっと上位過ぎる感がする。

やはり一度聴いただけでも親しみやすい「アイスクリームのような音楽」というのが有利なのだろうか(笑)。

最後に、チャイコフスキーの音楽について著者の友人「音楽評論家」のコメントが印象に残った。(141頁)

「私はチャイコフスキーの音楽(メロディ)に いじわる なものを感じます。とてつもない自己愛から来るもの。だからチャイコフスキーの奇跡のように素晴らしい音楽にはものすごく興奮し、感動もするけれど、慈愛を感じない。

作曲家はみんな自己中心的でナルシストだけれど、創作しているうちに、音楽への愛が自己愛を上回る瞬間というのが必ず来ると思う。チャイコフスキーの場合はたぶん、音楽より自分の方が大好きだったのではないか、と思えるんですね。そう、あの人の音楽、聴いても何か癒されない・・・・・・。」

言い得て妙だと思います!

本格的に鑑賞するのに何がしかの物足りなさを感じていた原因はそこにありましたか!

文中の「チャイコフスキー」を「ショパン」に置き換えても同じことが言えそうな気がするけどはたして読者の皆様はいかがでしょう・・、

「チャイコフスキーとショパンはお好き?」(笑)



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