前々回のブログでは近所にお住いのオーディオ仲間Yさんともども新旧のAXIOM80の試聴を行いかけたところまで、記しておいた。
やや大袈裟に「驚愕の事実が判明した!」なんて終わり方をしたが、その事実というのはこれから述べる「スピーカーボックスの板厚による音の違い」のことだった。
「そんなこと、ちっとも驚愕なんかではない!」と、お腹立ちの方がいるかもしれないが、どうかお許しを(笑)~。
それでは、その間の事情を縷々述べてみよう。
再掲画像になるが、左側の「AXIOM80」が自作の箱に容れた「最初期版」で、一番肝心な「ARU」(ユニットの背圧調整器)は箱の底に付けている。その一方、右側がグッドマン指定の箱に容れた「復刻版」。
駆動するアンプはこのほど新装なった「WE300Bシングル」で、特色としては「1951年製のWE300Bオールド」、「入力トランスとインターステージトランスが付いていて出力トランスは個人による手巻き」、「前段管2本、出力管2本のヒーター回路はそれぞれ4つの別系統になっている」、「製作者による独自の回路」、「磁界とは無縁な銅板シャーシ」といったところ。
自分とYさんの感想はほぼ一致した。
「自作の箱の方が伸び伸びとした音です。音響空間に漂う音の余韻が何時までも尾を引く感じがしてことのほか響きが美しい。その一方、指定箱の方は少々堅苦しくて、何だか会社員がキッチリとネクタイを締めてかしこまっている感じがします。」
軍配は明らかに自作箱の方に上がったわけだが、この原因はいったい何だろうか?
まず、「AXIOM80」の最初期版と復刻盤のユニットの違いが挙げられるが、製作時期の違いがあるとはいえ、そもそも同じメーカーが作ったものだし、それほど大きな違いはないはずで、むしろ箱の違いの方が大きいように思われた。
ヒントはどうも箱のツクリにありそうだ。
折しも、このときにYさんが持参されたのが最新号の真空管専門誌「管球王国」(2017 SPRING Vol.84)だった。
本書の172頁に「フルレンジユニットのチューニング法大公開」という特集があって、何と「AXIOM80」のオリジナルと復刻版の両方のチューニング法が公開してある!今どき「AXIOM80」なんて時代遅れのSPを特集するなんてほんとうに奇特な記事としか思えない(笑)。
ただし、「AXIOM80」に関してはいくら場数を踏んだオーディオ評論家といえども、流した「血(お金)と汗と涙」の量はとうてい自分には及ばないはずなので、鵜呑みにするつもりはまったく無い(笑)。
案の定、やっぱり首を傾げる部分もあったが、記事の中で印象的だったのは「このユニットには板の厚みが薄い方が絶対に向いていると思います。」という言葉だった。
そのとおり!
冒頭の画像に戻っていただくと、自作の箱の板厚は「1.5cm」、指定の箱は「4cm」と、とても大きな差があって、この差が音の響きにモロに影響したとしか考えられない。
というわけで、「AXIOM80に限ってはメーカー指定の箱に拘らない方がいいですよ。もちろん選択はあなたの自由ですが。」とだけ言っておこう。
なお、あまりにも両者の音質の差があったので、少しでも縮めてみようと、翌日になって二つの実験を試みた。
一つ目が指定箱の方の吸音材の入れ替え。
大量のオリジナルの吸音材を剥ぎ取って、その代わりに自作の箱に実行したように「ティッシュペーパー」を張り付けてみた。箱内部の容積拡大効果も大いに見込める。
な~に、悪かったときは元に戻すだけだ、命まで取られる心配はないだろう(笑)。
二つ目の実験が「ネジ締め強度」のレベル調整。
これには2段階あって、初めはAXIOM80をバッフルに取り付けるときの締め付け強度の調整、次はそのバッフルを箱に取りつけるときの締め付け強度の調整がある。
まず、前者のときはガッチリと締め付けて固定し、後者のときは比較的緩めに締め付けてバッフルの響きを生かすように心がけた。
これら二つの対策を講じて試聴してみると音の伸び伸び感、生き生き感が見事に蘇り、効果絶大!
調子に乗って、もっといろいろ喋りたいところだが、これ以上だと「眉唾物だ!」と思われそうなので省略した方が無難だろう(笑)。
いずれにしても「ティッシュペーパー」の活用や「ネジ締め強度」のレベル調整など、おカネは一銭もかからないので、ヒマを持て余している方は実行されてみてはいかがだろう。