自分の思考パターンを辿ると、いつも何かしら「言い訳」をしていることに気付かされる。
たとえば、前回のブログ「オーディオにおける見た目の比重」にしても、他人から見てシステムの「見た目が冴えない」ことは分かっているつもりだが、つい言い訳がましく何やかや理屈付けを行っているのがお分かりかな~(笑)。
そういうときに、タイミングよく格好の本にぶち当たった。
本書は脳にまつわる知識や考え方を述べた本、といえばいかにも堅苦しそうだが従来の「脳の本」には載っていないような新しい知見が紹介されている。興味を引いたものを2項目紹介してみよう。
なお、著者の池谷裕二氏は薬学博士で、現在東京大学大学院薬学系研究科・教授。
☆ 脳はなにかと錯覚する~ヒトも動物も、なぜか「赤色」が勝負強い~
過去の「ネイチャー」誌に掲載された科学論文に英ダーラム大学の進化人類学者ヒル博士の研究成果として「赤い色は試合の勝率を上げる」という話題。
たとえば、ボクシングやレスリングなどの格闘競技では、選手のウェアやプロテクターに赤色と青色がランダムに割り当てられる。
ヒル博士がアテネ・オリンピックの格闘競技四種の試合結果を詳細に調査した結果、すべての競技について、赤の勝つ勝率が高いことが分かった。赤の平均勝率は55%というから、青よりも10%も高い勝率になる。実力が拮抗した選手同士の試合だけを選別して比較したところ、赤と青の勝率差はなんと20%にまで拡大した。
赤は燃えるような情熱を、青は憂鬱なメランコリーを暗示する傾向があるのは民族を越えて普遍的であると考えられている。
自然界においても赤色は血や炎に通じるものがあるようで、サルや鳥類、魚類でも一部の体色を赤色に変えることで攻撃性を増したり異性に強くアピールしたりする種がある。
ヒル博士は赤色が相手を無意識のうちに威嚇し、優位に立ちやすい状況を作るのではないかと推測している。
もしかしたら「真っ赤な顔」で怒るというのもそれなりに意味のあることなのかもしれないですね(笑)。
☆ 脳はなにかと眠れない~睡眠は情報整理と記憶補強に最高の時間~
このところ寝苦しいせいか、6時間ほどで目が覚めてしまい二度寝も無理そうなので仕方なく起きて、暇つぶしに「ブログ」の投稿をしている(笑)。
そして午前中は何とか持つのだが、午後になると必ずといっていいほど「睡魔」が襲ってきて「午睡」という破目になる。まあ「毎日が日曜日」の人間だから何とかやり繰り出来ているが、現役時代なら身が持たないことは確実~。
さて、かって「ニューロサイエンス」誌に掲載されたチューリヒ大学のゴッツェリッヒ博士の論文は、睡眠による「記憶補強効果」を証明している。
ある連続した音の並びを被験者に覚えさせ、数時間後に音列をどれほど正確に覚えているかをテストしたところ、思い出す前に十分な睡眠を取った人は軒並み高得点をはじき出した。
ところが驚くことに、目を閉じてリラックスしていただけでも、睡眠とほぼ同じ効果が得られることが分かった。つまり学習促進に必要だったのは睡眠そのものではなく周囲の環境からの情報入力を断ち切ることだった。つまり脳には情報整理の猶予が与えられることが必要というわけ。
それには、ちょっとした「うたた寝」でもよいようで、忙しくて十分な睡眠が得られなくても、脳に独自の作業時間を与えることが出来れば、それで十分なのである。
という内容だったが、これはなかなか寝付けない人間には朗報だろう。何しろ眠れなくともベッドで横になるだけで、脳にとっては睡眠と同じ効果があるんだから~。
そう、眠れないことを何もストレスに感じる必要はなし、ただし同博士によるとテレビを見ながらの休憩は効果がないとのこと。あくまでも外界から情報を隔離することが肝心!
そういえば、好きな作家の一人、「吉村 昭」さん(1927~2006)の本に出てくる話だが、吉村さんは若い頃結核だった時期があり、それも手術を要するほどの重症患者で、長期間、日中でも絶対安静にしてじっと寝ていたそうだが「意識は覚醒したまま横になって体を休めておくというのも慣れてしまうとなかなかいいものだ」という記述がある。
自分に言わせると死んだ方がマシともいえるこういった退屈な時間をそう思えるほどの境地になるのはなかなかできることではないと思った。
吉村さんの作風には根気強いというのか、ゆったりとした時間の流れを感じていたのだが、若い頃にそういう体験が背景にあったのかと思わず合点したことだった。
これを読んでから、外界の情報を遮断して冷静に考えるには「途中覚醒」は1日のうちで最も適した思考の時間かもしれない・・、つまり気持ちの持ちよう次第で逆に不眠の時間を楽しめるようになれたら「しめたもの」だが~。
とはいえ、やっぱり熟睡できるのが一番だけどなあ・・・。
これも結局、自分が生きやすくなるように「脳がなにかと言い訳をした」結果かもしれないですね!(笑)。
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