「音楽&オーディオ」の小部屋

クラシック・オーディオ歴40年以上・・身の回りの出来事を織り交ぜて書き記したブログです。

オペラ「魔笛」の自筆譜

2023年12月29日 | 音楽談義

先日のこと、BSで「モーツァルトの真実」~自筆譜が明かす素顔~を放映していた。

               

番組の趣旨は彼が遺した自筆譜を通して彼独自の作曲のノウハウにアプローチしようというもので実に興味深かった。

とりわけ、番組の冒頭でオペラ「魔笛」の分厚い自筆譜が紹介されていたが、まるで清書されたような美しさに驚いた。

しかし、番組を終わりまでみて分かったのだが、意外にもかなり修正の跡を留めた楽譜がほかに遺されていたり、さらにはきちんと作曲の目録を作って整理しているなど几帳面でこまめなモーツァルトの素顔が浮かび上がってくる。

したがって、作曲の方法も、これまでは頭の中で全体が一瞬のうちに完成し後はゆっくりと引き出して、譜面に書き写すだけといわれているが、実はそうした曲ばかりでもなく、例えば先輩作曲家ハイドンに献呈する弦楽四重奏曲では相当に気を使い何回も書き直しの後が見られるそうで、ほかにも作曲前の下書きも時にはしているそうだ。

また、生涯に600曲以上もの作品を作曲した天才といえども全てが良品ばかりではなく、熱意を注いだものと、そうでないものでは完成度に随分差があるのが面白い。ある意味では天才の気まぐれというか、ムラが激しいといってよいのかもしれない。

例えば、亡くなる間際のほとんど同時期に作曲されたオペラ「魔笛」と「皇帝ティートの慈悲」には完成度に随分大きな差がある。

両作品とも最晩年の最も脂が乗り切った時期の作品にもかかわらず、熱中して作曲した「魔笛」の方は最高傑作の名をほしいままにし、一方は今日ではまったくといっていいほど省みられていない。

オペラ「ドン・ジョバンニ」にしても、自分が秘かに憧れていた好色な主人公になりきったつもりで夢中になって作曲したそうで、これも魔笛に劣らぬほどの大傑作に仕上がっている。

この「気まぐれ」の理由がよく分からないが、これは個人的な憶測になるがひとつにはモーツァルトは自分の音楽が後世になって賞賛されることをあまり意識しておらず、その場その場の動機やきっかけ次第で熱中したり、あるいはまるで鼻歌を歌うように作曲をしていった面が多分にあったのではないかと思う。

何物にも縛られない自由に飛躍する精神の持ち主・・、芸術家って本来そういうものなのかもしれないですね。時間をはじめいろいろと制約が多い一般的な社会ではとうてい受け入れられそうにない・・(笑)。

このように、モーツァルトにはいろんな曲目を通じて沢山の顔が見えてくるが、自分の内面をその時の気分の赴くままに作曲した意味で一連のピアノ・ソナタは本人自身の率直なつぶやきに近いものがあり、彼の内面を探る意味で重要な作品群だと思う。

ソナタ1番(K.279)から17番(K.576)まで、10年以上に亘って作曲されているが、特に第14番ハ短調(K.457)第2楽章は他の作品とはまったく違う作風で、深刻な曲調が陽気なときばかりではない彼の違う内面を顕しているようで実に趣が深い。あのベートーベンの後期のピアノ・ソナタを思わせるものがある。

この14番は愛好するソナタなので少なくとも週に一度以上はじっくりと聴いているのだが演奏の方は、主としてグレン・グールドである。



彼の演奏には、文章でいう句読点が感じられ、しっかりとしたストーリーを組み立てている感じを受けるし、何よりも野太いタッチが逞しくて安心感を覚える。

グールドは1982年に50歳で早々に他界しているが、演奏家たちがスランプに陥ったときには、彼のピアノ演奏(録音)を聴くという記事を読んだことがある。もう、後にも先にもこういうピアニストは出てこないだろう。

さいごに「魔笛の自筆譜」からいろいろ話が発展したが、「写し」でもいいから一度だけでも見てみたい気がする。天才の音符の字体を通じてその息吹に少しでもふれてみたい~。

で、「チャットGPT」に意地の悪い質問をしてみた。

「魔笛の自筆譜の写しを手に入れたい」

すると、真面目な回答が返ってきた。

以下は、自筆譜を入手するための一般的な手順です。

1 図書館やアーカイブの調査
地元の図書館、国立図書館、または音楽アーカイブなど、専門的な資料を収集している機関を調査してみてください。

2 デジタルアーカイブ
 オンラインでデジタルアーカイブを探してみることもできます。多くの場合、有名な作曲家の楽譜はデジタルでアクセスできるようにされています。

3 専門家や研究者に問い合わせ
音楽学の専門家やモーツァルト研究者に連絡して、アクセス可能な資料や情報について尋ねてみることも一つの方法です。

4 公共のドメインリソース
 モーツァルトの楽譜がパブリックドメインにある場合、オンラインで入手できる可能性があります。ただし、これは資料の特定の場合に依存します。


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