「音楽&オーディオ」の小部屋

クラシック・オーディオ歴40年以上・・身の回りの出来事を織り交ぜて書き記したブログです。

真空管の栄枯盛衰

2022年03月05日 | オーディオ談義

我が家のオーディオシステムほど「真空管の恩恵」を受けている事例も珍らしいのではないかと、いつも思う。

10セットを超えるアンプは、プリ、パワーを含めてすべて真空管式だし、もし真空管が無くなったら我が家の音響システムは完全に崩壊してしまう。

過去に真空管以外のアンプもいくつか試してみたことがあるが、いつの間にか「神隠し」のようにいなくなってしまった(笑)。

で、今さらの話だが改めてなぜ我が家で真空管を重用しているのか述べてみよう。


ずっと昔といっても60年ほど前の話だが「トランジスター(以下、TR)素子」が登場したときに、もはや真空管は消えて無くなるという説がまことしやかに唱えられていた。

TR素子は長寿命だし、物理的数値にしても真空管に劣るところは何もないと言われていた。

実際にも真空管アンプは下火になってしまったが、今となっては完全に盛り返す勢いで、オーディオ仲間によると大半のTRアンプは哀れにもオークションで値がつかない状況だという。


いい事例が昔使っていたラックスの「SQ38FD」という真空管アンプで、いったん製造中止に追い込まれたものの、ちゃっかり真空管人気の復活にあやかって、いつの間にか息を吹き返してしまった。

真空管復活の主因としてはこれは個人的な意見になるが、デジタルの時代になって「音の響き方」が素っ気なくなり、そのマイナス面を少しでもカバーするためというのが当たらずといえども遠からずといったところかな~。(レコードの復活もその線上にあるのではないだろうか。)

つまり、言い古されたことだがどうも「真空管」と「TR素子」の一番の違いは「倍音の響き方」にあるようで、端的に言えば感覚的な話になるが音質に「潤い=濡れたような感じ」があるかどうか。(音を言葉で表現するのは難しい)

おっと、もしかして「倍音って何?」という方がいらっしゃるかもしれないので解説しておこう。知ったかぶりして間違ってたらごめんなさいね(笑)。

楽器が出す音はすべて「基音+倍音」で成り立っている。

ヴァイオリンでいえば「全体の周波数帯は180~12000ヘルツ」あたりとされており、このうち基音は「180~3000ヘルツ」あたり、それ以上が倍音であって楽器の音色は倍音の含まれ方しだいで決まるのでいわばきわめて重要な周波数帯といえる。

で、もちろんTR素子の方が原音に忠実な再生ができるので好きという方がいてもちっとも不思議ではないので念のため。


ただし、真空管と一口に言っても製造年代によって古典管と近代管に分けられる。

「古典管と近代管のいったいどこがどう違うのか」と問われても明確な基準があるわけでもないが、個人的には時代的な分水嶺として前述したTRが勃興してきた時代を境に区分されるのではないかと思っている。

TR素子が登場する前の古典管は、それはそれは真剣・熱心・緻密に製作されたものだが、変わり得る素子の登場によっていっきに熱気が無くなり、同時にコストばかりが重視され「ぞんざい」なツクリになっていったという推論に異論がありますかね(笑)。

そこで肝心の古典管と近代管の音質の違いについてだが、個人ごとに好みがあるのでいいも悪いもないが、一般的にチャラチャラして音に深みが無く寿命が短いし故障しやすいのが近代管の特徴でこの呪縛から解き放たれた球を個人的にはいまだ知らない。

そういうわけで我が家の真空管アンプ群はすべてと言っていいほど古典管(1940年代前後)で覆いつくされているが、これらの中でも「お宝的な存在」なのが、先日触れた整流管「OK-X213」に次いで「071」真空管。



以前のこと、我が家の古典管の主治医「北国の真空管博士」から、次のようなメールをいただいたことがある。

「1928年に発表されたARCTURUSのブルーチューブ071が手に入りました。

現在あなたの「WE300Bシングルアンプ」の前段管に使用されているトリタンのRADIOTRON UX171は1925年に開発が始まり1926年の中ごろに発売されていますのでほぼ同時期の製造ですね。 

半年後1926年の末頃には酸化皮膜フィラメントのRADIOTRON UX171Aが発売されます。 

ARCTURUSは071のほかに071Hという傍熱型と071A(0.25Aフィラメント)も1928年に発表しています。 

これら3種類が同時に併売されていたことになります。 

これは、ARCTURUSが今後どのような球が市場に受け入れられるのか様子をみていたのかもしれません。 

それぞれの特徴として、 

071A:フィラメントが省電力で安価 

071 :071Aよりもフィラメントハムが小さいがバッテリーの持ちが悪い 

071H:AC点火専用、造りが複雑で高価 

この中で生き残ったのは最も安価な071Aでした。  

ところがスピーカーの再生帯域が広い現在ではフィラメントパワーの大きな071や171の方が情報量が多く感じます。 

これは、UX245よりもフィラメントパワーの大きなVT52の方が評価が高いのと似ています。

今回お知らせした「071」はフィラメント電流が「0.5mA」で通常の71Aに比べると2倍になっています。前段管あるいは出力管として使い道も多いと思います。」

とのことだった。

このところ、健康に黄信号が灯っているので「宝の持ち腐れ」にならないようにしなくてはと、「WE300Bシングルアンプ」の前段管に使っているが、実はこのアンプの出番があまりない。


なにしろ、ほかのアンプがあまりにも粒ぞろいなので・・。

で、「いいコンディションで次代に引き継ぐのも良しとすべきかな~」と殊勝な思いに耽る今日この頃ですぞ(笑)。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする