ずっと以前に購入したオーディオ機器のうち、もはや使う見込みがなくなったものがいろいろある。なにしろ50年近いキャリアとなると試行錯誤の連続で、大いに活躍してくれた挙句現在の糧の一部になってくれたのは言うまでもない。
そういうものの中からまだ使えそうなものを選んで数年前から知人に頼んでコツコツとオークションに出品してもらっているが、このたびかなりお値段の張る機器が9月以降ずっと店晒しになっていたものの、11月に入ってめでたく落札の運びとなった。
やっぱり時候のよろしい秋ともなると「芸術の秋 → 音楽の秋 → オーディオの秋」とみえて、愛好家の意欲がとみに亢進されるようでうれしい限りだった。どうか嫁入り先でもうひと頑張りしてほしいと祈るのみ。
いずれにしても「まあまあの額」になったのでこの軍資金を使って憧れのオーディオ機器を購入したいところだが、よく考えてみると欲しいものがサッパリ思い浮かんでこない。
欲しい機器がないというのもこれまた困ったことで、夢がないとオーディオもあまり面白味がなくなるのはオーディオ愛好家ならよくお分かりのはず。
もちろんdCS(イギリス)の最新のCDトラポとDACが欲しいことは欲しいが、あまりにも(お値段が)現実離れしているので諦めが先に立って切実感が湧かない。
そこで、しつこく考えていたら小物類ならあるのでこの機会に挙げてみよう。
それは、過去記事「真空管オーディオの愉しみ」(2018.2.14)で取り上げた「エルログのER300B」である。当時の関連記事を抜粋してみよう。
「WE300真空管」(1951年製)と「ヨーロッパ管300B」との比較試聴だが、本家本元のWE300Bを上回ることはあり得ないものの大善戦だった。
我が家でもこれまで中国製やロシア製の300Bをいくつも使ってきたが、その特徴は押しなべてやや音が上ずり気味で、腰高の音になるのが普通だが、今回のヨーロッパ管300Bはそれが無く、雰囲気感の醸成もなかなかのもので、(オリジナルとの)お値段の差ほどの開きはないと感じた。
「これはとてもいい球ですねえ、お値段からすると私も欲しいくらいです。」という言葉が思わず出たが、実はそれ以上の実力を秘めた球の可能性があるドイツ製の300Bが販売されていることを仲間から聞いて気持ちが揺らいでしまった。
ドイツの真空管といえばテレフンケンの「RE-604」が有名で、上達者になるほど「ウェスタンよりも好き」というケースをよく見聞するが、総じてドイツ製はツクリが良くて信頼度は抜群という背景の中で登場したのが「ER300B」という球。もうすでにご存じの方がいるかもしれない。
ネットから画像を引っ張り出したが、専門家によると諸元を見る限り評価も高いようで「見事に現代に甦った300Bでしょう。フィラメントの光具合からしてトリタンフィラメントではないでしょうか」と、ずいぶん期待の持てるコメント。トリタンフィラメントとなると情報量やスピードが半端ではない。
ちなみに我が家の「PX25」アンプと「WE300B」アンプとも前段管はトリタンフィラメントである。この機会をとらえてさりげなくPRしておこう(笑)。
お値段はペアで「134、000円」(2018.2.14現在)と、ちょっと値が張るがオリジナルに比べればそれほどでもない。ぜひ一度聴いてみたい気がするが、まだ市中にあまり出回っておらず今後要注目の真空管である。」
と、以上のような記事だった。
あれからすぐに国内で唯一の取り扱い専門店に登録して入荷時期を通知してもらうようになっているが、2月以降ずっと音沙汰無しである。
世界中に引っ張りだこのため日本国内に上陸できないのか、それともいかに「Made in Germany」といえども製造上困難が生じたのか皆目見当がつかない。
製造上の問題でつい思い出すのが「WE300B」の再生産である。1988年にいったん生産中止となったものの、1990年代半ばから再生産と聞いて大喜びしたがそれは過去の300Bとは「似て非なるもの」だった。
やたらに不良品が多かったそうで、いまだに300B愛好家の間では「鼻つまみ者」になっているが、昔と今とでは技術者をはじめ製造環境が違うので現代の科学技術をもってしても無理だったのだろう。
この「鼻つまみ者」がときどき結構な「お値段」でオークションに出品されているが、もし上記の事情をご存知ない方は心して対処された方がいいですよ~。
それにしても、オーディオへの情熱が辛うじて灯っている間に「ER300B」をぜひ聴いてみたいものだが、はてさてどうなることやら(笑)。
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