「音楽&オーディオ」の小部屋

クラシック・オーディオ歴40年以上・・身の回りの出来事を織り交ぜて書き記したブログです。

オーディオ談義~オーディオ教(狂)信者の「文明の衝突」~

2012年05月12日 | オーディオ談義

著名な歴史学者「サミュエル・P・ハンチントン」(ハーバード大名誉教授)はその著書「文明の衝突」(1993年)の中で、「冷戦終結後における世界紛争の源は宗教ごとの衝突になることを予見し、とりわけキリスト教とイスラム教の衝突による混乱と破壊を最も懸念した」ところ、これは見事にその後の「9.11テロ」を言い当てていたことで知られている。

同様に、と言うとちょっと”大げさ”だがお互いに40年以上の凝り固まった信念に基づくオーディオ教(狂)の歴史を背負った信者同士の出会いも見解の相違による「混乱と敵対」を引き起こすことも十分考えられたわけだが、今回はどうやら両者の折り合いがついて平和裡に終わることができたようである。

8日(火)から2泊3日のご予定で奈良県からはるばる我が家に見えていただいたMさんを10日(木)、駅で無事お見送りしてから、以上のようなことを考えながら帰宅の途についた。

今後の「思い出」のために今回のMさんの日程とご感想をざっと記しておこう。とにかくずっと快晴の3日間だったので万事予定どおりだった。

8日(火) 午後14時27分、別府駅ご到着(お出迎え)
      15時~17時半まで我が家でオーディオ試聴、その後一杯飲みながらの歓談、20時にカミさんの車でホテル
      まで送り

9日(水) 9時半から11時50分まで湯布院のAさん宅での試聴
       その後、別府鉄輪(かんなわ)温泉の「地獄窯」で蒸し料理
       「海地獄」 → 「別府市美術館」 → 「別府海浜公園を散策」
       16時~17時半まで我が家で試聴  18時~20時半 ホテル近くの一杯飲み屋で歓談

10日(木) 9時出発 → 「宇佐神宮」(国宝)~広い境内を散策
       昼食後、我が家で1時間半ほど試聴   14時20分 お見送り

結局、我が家で試聴していただいたのは通算すると6時間前後だった。

今回のご訪問のメインテーマは「イギリスのグッドマン社の古くて独特の癖を持つユニット”Axiom80”(第一システム)と”Axiom301”(第二システム:エンクロ-ジャーはタンノイ・ウェストミンスター)をどのように使いこなしているか」ということに尽きるわけだが、
結果から述べておくと、半分は合格で半分は期待外れといったところとお見受けした。

「第一システムのAxiom80については、皆さんが”うわ言”のように”Axiom80”と”つぶやく”理由がよく分かりました。実に格調の高い音です。低音を受け持つフォステクスのSLE-20W(3本)も同じエッジレスなので絶妙の組み合わせですね。第二システムのAxiom301とはかなりの差があるように思います。」と、Mさん。

                            

Mさんの奥様はピアノ教師をされていて、自宅にグランドピアノが2台置いてあり、常日頃ピアノの音をレファレンスに出来て便利ですとのこと。

結局、Mさんは小学生時代の5級スーパーラジオから始まる真空管アンプ製作の手練れだが、オーディオ的にはあれこれ音質を詮索されるタイプではなくて音楽の姿を何よりも重視される方だった。

つまり、通常のオーディオマニアによく見受けられるように音の”抜け”がどうとか、”切れ”がいいとかおっしゃるタイプではなく、脳の中で音楽をイメージするための材料として適当な音質かどうかを全体的に判断されるご様子だった。オーディオ本来の原点というか役割とはそういうものだとはっきり割り切っておられるようだ。

その辺は愛好される音楽が「バッハ」であり、使われているスピーカーが「タンノイ3LZオリジナル・イン・キャビネット」(ネットワークのコンデンサーは入れ替え)と、もう一つ別の部屋に置いてあるシステムの「ロジャースのLS5/10BBCモニタースピーカー」を使われていることからも推し量られるところ。

それにデジタルよりも完全なアナログ派で調整済みのレコードプレーヤーが4台という盛況。正真正銘の正統派のオーディオマニアとはこういう方を指すのだろう。

もともと、第二システムに否定的だったMさんはタンノイ・ウェストミンスターのエンクロージャーに違うユニットを容れることには大反対のご意見で「スピーカー・エンクロージャーと一体的に称されているように、ユニットとエンクロージャーは切り離して考えるのはおかしいです。早くオリジナル・ユニットに戻すべきです」が持論。

今回、改めてその辺を確認されたというわけだが、けっして反発するわけではないのだがそのうち(ウェストミンスターに)JBLのD130(口径38cm)ユニットを取り付けて、再度聴いていただき認識を改めていただこうと虎視耽々。タンノイのユニットは38cm口径よりもむしろ25cm口径の方がバランスがいい点については意見が一致しているところだが、果たしてどういうご感想を洩らされるだろうか今後の楽しみ。

また、サブテーマだった「BSハイと光テレビで録画したムターが弾く「ヴァイオリン協奏曲」(モーツァルト)の比較試聴」については、これは非常に明確に差があって、BSハイで聴くムターがレコードの音だとすると、光テレビの方がCDで聴いた印象ですとのことだった。これからすると、「クラシカ・ジャパン」はCSアンテナと専用チューナーで視聴した方が無難のようだ。

次に「4台の真空管アンプの評価」については、それぞれの良さはあるものの「VV52B」アンプが出色だったご様子。とにかく、これがダメとははっきり仰らないのでこちらの勝手な決めつけが相当入っている。

なお今回の試聴でいただいたアドバイスのうち「Axiom80」につけている「サランネットの取り外し」と200ヘルツ以下の低域信号をカットしているコンデンサー(バイポーラ)の方向性の統一は大いにありがたかった。前者についてはオーディオ専門店「逸品館」のネット記事にスピーカーの「サランネット」は(音の)乱反射を引き起こすので取り外したほうがいいと書いてあったが、これでようやく納得。

通常、高域がうるさい場合に「サランネット」をつけるのだが、根源はSPユニットではなくてアンプの方に大半の原因がありそうである。

最後に湯布院のAさん宅でのウェスタンの「555ドライバー+15Aホーン」の試聴結果だが、あの巨大な15Aホーンから等身大のグランドピアノの音が出現したのにはMさんも心から驚かれていた。また、2階のJBLの5ウェイシステムと古き良き時代のイギリスの貴重なクリプッシュ・ホーンのシステムを快く聴かせていただいたAさんには改めて感謝である。

また、別府への帰途、車の中で「ウェスタンを聴かせていただいたうえに、さらに点(た)てていただいたコーヒーのカップ、それにケーキのお皿が”ロイヤルコペンハーゲン”とはありがたいおもてなしで、くれぐれも(Aさんに)よろしくお伝えください」とのことだった。

ロイヤルコペンハーゲンは世界的に著名なデンマークの陶磁器メーカーだが、Mさんの現役時代の本社がデンマークにあり、そんなところからすぐにお気づきになったのだろう。


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