「音楽&オーディオ」の小部屋

クラシック・オーディオ歴40年以上・・身の回りの出来事を織り交ぜて書き記したブログです。

読書コーナー~「最近、目を通した本」~

2010年01月26日 | 読書コーナー

タイトルを「最近、目を通した本」にしようか、「最近、読んだ本」にしようかと迷ったが、今回は「ザッと目を通した」だけなので「読んだ」という表現は遠慮させてもらった。

つまり、内容を十分咀嚼していないという意味合いなので「悪しからず」~!

☆ 「松尾芭蕉この一句」(2009・11・29、平凡社刊)

                  
   

表紙の副題に現役俳人の投票による上位157作品とある。

芭蕉の俳句は昔から大好きで感銘を受けっぱなし。凝縮されて選び抜かれた語句に
「洗練の極み」といったものを感じるし、わずか17文字の世界に下手な長編小説なんかでは及びもつかないほどの広がりと深さがあると思う。

そういう俳句群に対していわばプロともいえる「現役俳人」の方々が、どういう句を選出されているか、また自分の大好きな句がどのくらいの順番なのかと興味は尽きない。

いきなりだが、上位15句を紹介してみよう。

15位  さまざまの  事(こと)思い出す  桜かな
14位  行(ゆ)く春を  近江(おうみ)の人と  惜しみける
13位  古池(ふるいけ)や  蛙(かわず)飛び込む  水の音
12位  象潟(きさがた)や  雨に西施(せいし)が  合歓(ねぶ)の花
11位  面白うて  やがて悲しき  鵜船(うぶね)かな
10位  秋深き  隣は何を  する人ぞ
 9位  五月雨(さみだれ)の  降(ふ)り残してや  光堂(ひかりどう)
 8位  石山の  石より白し  秋の風
 7位  この道や  行(ゆ)く人なしに  秋の暮(くれ)
 6位  海暮れて  鴨(かも)の声(こえ)  ほのかに白し
 5位  五月雨(さみだれ)を  集めて早し  最上川(もがみがわ)
 4位  旅に病(や)んで  夢は枯野(かれの)を  かけ廻(めぐ)る

 3位  夏草や  兵(つわもの)どもが  夢の跡(あと)
 2位  閑(しずか)さや  岩にしみ入る  蝉(せみ)の声

 1位  荒海(あらうみ)や  佐渡(さど)に横たう  天(あま)の河(がわ)

獲得ポイントを見ると、
1位から3位までが他を圧してブッチギリ。特に1位は、宇宙的な視点ともいえるスケールの大きさから「奥の細道」を代表する句とされるもの。

個人的には順位に色づけした句が好み。

取り分け
3位の句には「栄枯盛衰の理と無常感」の見事なクロスオーバーに芭蕉の俳句中一番の魅力を感じるが、全体的に15位以内に自分の好みの句がすべて網羅されていたのがうれしい~。

☆ 「ベストセラーの風景」(2009.11.7、塩澤実信、展望社)

                     

毎年、膨大な本が出版される中で「売れる本」「売れない本」が出てくるのは仕方がないが、通常「短い期間に勢いよく売れ、華やかな話題となった本」「ベストセラー」というそうだ。

「出版事典」の「ベストセラー」の項目によると、生み出す手段として「できるだけ多数の真理や感情の動きを見抜き、大衆の最大公約数的な関心を刺激するような主題を、平易でしかも扇情的な表現を盛り込む必要があり・・・」と書かれてある。

このニュアンスから感じとれるのは「大衆の安易な好奇心や欲望、関心を刺激することに腐心しその結果として生まれる本」というのが「ベストセラー」の一般的なイメージ。

自分なんか”へそ曲がり”なので「ベストセラー」と聞いただけでまったく敬遠してしまうが、結局
「時代を映す鏡」「時代と添い寝する本」というところに大きな価値があるんだろう。

こういう視点のもと、本中にあった「芥川賞作品」「直木賞作品」の歴代の発行部数ランキング〔100万部以上)を掲載してみよう。

≪芥川賞作品≫

1 村上 龍 「限りなく透明に近いブルー」 354万部
2 柴田 翔 「されどわれらが日々」 187万部 
3 庄司 薫 「赤頭巾ちゃん気をつけて」 161万部 
4 安部公房 「壁」 138万部 
5 綿矢りさ 「蹴りたい背中」 127万部 
6 池田満寿夫 「エーゲ海に捧ぐ」 126万部
7 大江健三郎 「飼育」 109万部
8 石原慎太郎 「太陽の季節」 103万部

≪直木賞作品≫

1 浅田次郎 「鉄道員」 219万部
2 司馬遼太郎 「梟の城」 194万部
3 向田邦子 「花の名前」「かわうそ」 186万部
4 宮部みゆき 「理由」 154万部
5 青島幸男 「人間万事塞翁が丙午」 134万部
6 景山民夫 「遠い海から来たCOO] 113.5万部
7 つかこうへい 「蒲田行進曲」 113万部
8 佐木隆三 「復讐するは我にあり」 111万部
9 山田詠美 「ソウル・ミュージック・ラバーズ・オンリー」 109万部

さて、以上の作品のうち現在でも読み次がれている本は果たしてどのくらい?

「時の流れ」という悠久の”ふるい”にかけられて、古典となって残っていくもの、あるいはすぐに消え去っていくものなど実にさまざまだが、その自然淘汰は一体どこに起因するものなのか。むしろそちらの方に興味が湧く。

文学と同様に音楽にしても”しかり”だが一つの大きな謎である。


    


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