魔笛は実に登場人物が多くて、配役ごとにそれぞれ違った性格付けがなされている。評価に当たってはこうした性格付けがオペラの中できちんと表現されているかどうかを大きなポイントにしたい。
なお、登場人物の出演時間を見てみるとCD盤によって若干の差があるが、およそ全体時間150分のうち、王子役のタミーノの出番がアリア、重唱、合唱を合わせて約70分となり、これに次ぐのがパパゲーノ役の約60分となる。
しかし、出演時間の多少にかかわらず、王女役のパミーナ、聖者役のザラストロ、夜の女王などの役柄も極めて重要な役割を担っている。とにかくモーツァルトのオペラには端役は存在しないといわれるがこの5人がオペラ魔笛の生殺与奪の権利を握っている。
余談だが、モーツァルトは瀕死の病床にありながら”鳥刺しのアリア”を口ずさんでいたそうで、パパゲーノにもっとも親しみを感じていたのかもしれない。
ただし、初演(1791年)では専門の歌手ではなかった興行師シカネーダーが演じたことから、素人でも歌いやすいように作曲したそうで技巧的な難度はそれほどでもないといわれている。また、愛すべき憎まれ役のモノスタートスに格好のアリアがささげられていることも、モーツァルトの幅広い人間性を示す意味で興味深い。
(1)演奏部分
☆ 指揮者、オーケストラ、合唱団
☆ ザラストロ(バス)
☆ 夜の女王(ソプラノ)
☆ タミーノ(テノール)
☆ パパゲーノ(バリトン)
☆ パミーナ(ソプラノ)
(2)音 質
周波数レンジ、奥行き感、セパレーション
(3)評価のポイント
配役の性格付けに応じた歌唱力(表現力)が一番重要。そのほか、劇の進行のテンポやリズム感、メルヘン的な趣と楽しさ、荘厳さ、華麗さ、秋の空を思わせるような澄み切った美しさ、晴朗さ、そして熱気、緊張感など。