CINEMA TOPICS ONLINE-(2015/11/20 21:18)
―映画は彼らを見逃さない
日本大学藝術学部映画学科3年映像表現・理論コース 映画ビジネスゼミでは、12月19日(土)~25日(金)の一週間、ユーロスペースにて学生主催の映画祭「ニッポン・マイノリティ映画祭」を開催いたします。
今年で5回目となる日藝主催の映画祭。テーマ設定、企画から作品の選定・上映交渉・ゲスト交渉・チラシやパンフレットのデザイナー探しから制作、そして会場運営に至るまで、全て学生主導で行っています。
イントロダクション
今年で5回目を迎える日藝生企画・運営の映画祭。今回のテーマは“日本のマイノリティ”。 映画が次第に娯楽の中心になった20世紀は、世界的に人種や人権に対する意識改革の時代でもあった。しかし日本人の多くは、いまだに「単一民族」であるという認識のもとに生きている。しかしそれは幻想に過ぎない。この小さな島国にも各々に異なった事情を抱えた人々が今日も抑圧されたまま生きている。民主主義の名の下に声なき者の存在が黙殺されるこの国は、本当の意味で先進国と言えるのだろうか?
「目に見えないものを見せる」、それが映画の原初的な役割である。映画の生みの親リュミエール兄弟が世界中に派遣したカメラマンは、約120年前のアイヌ民族の姿を捉えていた(『リュミエール映画 日本篇』1897-99頃)。それから激動の時代のうねりの中で、映画作家たちはさまざまなマイノリティを映し出してきた。戦前を代表する巨匠・清水宏は『蜂の巣の子供たち』(1948)で戦争孤児の悲喜こもごもを詩情豊かに表現し、成瀬巳喜男はアイヌの兄妹の受難を描いた知られざる力作『コタンの口笛』(1959)を残した。また今村昌平は生涯、下層社会に生きる人々を力強く描いたが『神々の深き欲望』(1968)はその集大成ともいえる必見の大作である。『橋のない川 第一部』(1969)や『砂の器』(1974)は時代を経ても根強く残る被差別やハンセン病に対する迫害の歴史を重厚なドラマを通して伝えている。テレビドキュメンタリーで活躍した鬼才・木村栄文は、水俣病患者(『苦海浄土』1970)や障がいを持つ愛娘(『あいラブ優ちゃん』1976)にカメラを向けつづけた。同じくドキュメンタリー監督の姫田忠義がアイヌ民族の家づくりを撮影した貴重作『チセ・ア・カラ われらいえをつくる』(1974)は、リュミエール作品と比較してみると興味深い。また在日韓国人に対する偏見は現在の日本においてものっぴきならない話題であるが『異邦人の河』(1975)はその問題を題材とした先駆的作品である。『泥の河』(1981)は終戦後の貧困層の生活を少年の視点から活写した人間ドラマの傑作として名高い。『二十才の微熱』(1993)『ピュ~ぴる』(2011)は世界的に関心の高まるセクシャル・マイノリティの生き方を独自のタッチで生き生きと映し出しており、『A』(1998)は日本ではあまり取り上げられることのない宗教に対する差別的意識を鋭く我々に突きつける。また米軍基地建設に揺れる沖縄を日本が如何に冷遇してきたかということも忘れてはならない問題だ(『戦場ぬ止み』2015)。こうした日本におけるマイノリティを総括的に扱った熊井啓の『地の群れ』(1970)は、日本映画史上最大の問題作とされている。
本映画祭では日本におけるマイノリティと日本映画の歴史を照らし合わせながら、今日の、そして明日の日本を考えたい。国会前のデモにも見られるように、われわれ普通の学生の声が次第に高まりつつある今日だからこそ、目をつむり口をつぐむのではなく、まず現実を知ることから始めよう。
各方面からコメントも頂いております!
差別と偏見。これはいつの時代にも、どこの國でも存在するものです。例えばアメリカ、差別はそこら中に転がっています。偏見も大ありです。でも、だからこそアメリカでは差別と偏見と真正面から向き合い、戦う姿勢がちゃんとあります。日本ではどうでしょうか?単一民族を装い、差別と偏見は見えません。でもあるのです!そこを考える映画祭にしてほしい!
―――鳥越俊太郎(ジャーナリスト)
声の大きな人をわざわざ映画で描く必要はない。そんなのはほっておいても十分に届く。それよりも耳を傾けなければ聞こえないような声、または声さえも出せない人を描くのが映画だと思う。マイノリティを直視しなければこの国は映せない。
―――松江哲明(映画監督)
↑今年のポスター、チラシ、パンフなどの宣伝デザインは、サイファ。の岡野登さんが担当して下さいました。学生の無謀なお願いを「おもしろそうだから」と引き受けて下さいました!
上映作品(製作年順・各作品2回上映)
『リュミエール映画 日本篇』(リュミエール兄弟/1897-99頃/29min)=映画生誕百周年版
『蜂の巣の子供たち』(清水宏/1948/84min/蜂の巣映画)
『コタンの口笛』(成瀬巳喜男/1959/126min/東宝)
『神々の深き欲望』(今村昌平/1968/175min/日活)
『地の群れ』(熊井啓/1970/127min/ATG)
『橋のない川 第一部』(今井正/1969/127min/ほるぷ映画)
『苦海浄土』『あいラブ優ちゃん』(木村栄文/1970,1976/49min,48min/RKB毎日放送)
『砂の器』(野村芳太郎/1974/143min/松竹)
『チセ・ア・カラ われらいえをつくる』(姫田忠義/1974/57min/民族文化映像研究所)
『異邦人の河』(李学仁/1975/115min/緑豆社)=東京国立近代美術館フィルムセンター所蔵プリントを上映予定
『泥の河』(小栗康平/1981/105min/木村プロダクション)
『二十才の微熱』(橋口亮輔/1993/114min/ぴあ=ポニーキャニオン)
『A』(森達也/1998/135min/安岡フィルム)
『ピュ~ぴる』(松永大司/2011/93min/マジックアワー)
『戦場ぬ止み』(三上智恵/2015/129min/シグロ)
《 「ニッポン・マイノリティ映画祭」 開催概要 》
■ 主催: 日本大学藝術学部映画学科3年 映像表現・理論コース映画ビジネスゼミ、ユーロスペース
■ 上映協力: RKB毎日放送、神戸映画資料館、松竹、新日本映画社、綜映社、天遊、ディメンション
東京国立近代美術館フィルムセンター、東風、東宝、日活、PFF事務局、マジックアワー
民族文化映像研究所、安岡フィルム
■ 会期: 12月19日(土)~25日(金)
■ 会場/一般のお問い合わせ: ユーロスペース(東京都渋谷区円山町1-5 KINOHAUS 3F Tel:03-3461-0211)
■ Web: 公式ホームページ:http://nippon-minority.com(準備中)
Twitter:@nichige_eigasai Facebook:https://www.facebook.com/nippon.minority
http://www.cinematopics.com/cinema/news/output.php?news_seq=28422
―映画は彼らを見逃さない
日本大学藝術学部映画学科3年映像表現・理論コース 映画ビジネスゼミでは、12月19日(土)~25日(金)の一週間、ユーロスペースにて学生主催の映画祭「ニッポン・マイノリティ映画祭」を開催いたします。
今年で5回目となる日藝主催の映画祭。テーマ設定、企画から作品の選定・上映交渉・ゲスト交渉・チラシやパンフレットのデザイナー探しから制作、そして会場運営に至るまで、全て学生主導で行っています。
イントロダクション
今年で5回目を迎える日藝生企画・運営の映画祭。今回のテーマは“日本のマイノリティ”。 映画が次第に娯楽の中心になった20世紀は、世界的に人種や人権に対する意識改革の時代でもあった。しかし日本人の多くは、いまだに「単一民族」であるという認識のもとに生きている。しかしそれは幻想に過ぎない。この小さな島国にも各々に異なった事情を抱えた人々が今日も抑圧されたまま生きている。民主主義の名の下に声なき者の存在が黙殺されるこの国は、本当の意味で先進国と言えるのだろうか?
「目に見えないものを見せる」、それが映画の原初的な役割である。映画の生みの親リュミエール兄弟が世界中に派遣したカメラマンは、約120年前のアイヌ民族の姿を捉えていた(『リュミエール映画 日本篇』1897-99頃)。それから激動の時代のうねりの中で、映画作家たちはさまざまなマイノリティを映し出してきた。戦前を代表する巨匠・清水宏は『蜂の巣の子供たち』(1948)で戦争孤児の悲喜こもごもを詩情豊かに表現し、成瀬巳喜男はアイヌの兄妹の受難を描いた知られざる力作『コタンの口笛』(1959)を残した。また今村昌平は生涯、下層社会に生きる人々を力強く描いたが『神々の深き欲望』(1968)はその集大成ともいえる必見の大作である。『橋のない川 第一部』(1969)や『砂の器』(1974)は時代を経ても根強く残る被差別やハンセン病に対する迫害の歴史を重厚なドラマを通して伝えている。テレビドキュメンタリーで活躍した鬼才・木村栄文は、水俣病患者(『苦海浄土』1970)や障がいを持つ愛娘(『あいラブ優ちゃん』1976)にカメラを向けつづけた。同じくドキュメンタリー監督の姫田忠義がアイヌ民族の家づくりを撮影した貴重作『チセ・ア・カラ われらいえをつくる』(1974)は、リュミエール作品と比較してみると興味深い。また在日韓国人に対する偏見は現在の日本においてものっぴきならない話題であるが『異邦人の河』(1975)はその問題を題材とした先駆的作品である。『泥の河』(1981)は終戦後の貧困層の生活を少年の視点から活写した人間ドラマの傑作として名高い。『二十才の微熱』(1993)『ピュ~ぴる』(2011)は世界的に関心の高まるセクシャル・マイノリティの生き方を独自のタッチで生き生きと映し出しており、『A』(1998)は日本ではあまり取り上げられることのない宗教に対する差別的意識を鋭く我々に突きつける。また米軍基地建設に揺れる沖縄を日本が如何に冷遇してきたかということも忘れてはならない問題だ(『戦場ぬ止み』2015)。こうした日本におけるマイノリティを総括的に扱った熊井啓の『地の群れ』(1970)は、日本映画史上最大の問題作とされている。
本映画祭では日本におけるマイノリティと日本映画の歴史を照らし合わせながら、今日の、そして明日の日本を考えたい。国会前のデモにも見られるように、われわれ普通の学生の声が次第に高まりつつある今日だからこそ、目をつむり口をつぐむのではなく、まず現実を知ることから始めよう。
各方面からコメントも頂いております!
差別と偏見。これはいつの時代にも、どこの國でも存在するものです。例えばアメリカ、差別はそこら中に転がっています。偏見も大ありです。でも、だからこそアメリカでは差別と偏見と真正面から向き合い、戦う姿勢がちゃんとあります。日本ではどうでしょうか?単一民族を装い、差別と偏見は見えません。でもあるのです!そこを考える映画祭にしてほしい!
―――鳥越俊太郎(ジャーナリスト)
声の大きな人をわざわざ映画で描く必要はない。そんなのはほっておいても十分に届く。それよりも耳を傾けなければ聞こえないような声、または声さえも出せない人を描くのが映画だと思う。マイノリティを直視しなければこの国は映せない。
―――松江哲明(映画監督)
↑今年のポスター、チラシ、パンフなどの宣伝デザインは、サイファ。の岡野登さんが担当して下さいました。学生の無謀なお願いを「おもしろそうだから」と引き受けて下さいました!
上映作品(製作年順・各作品2回上映)
『リュミエール映画 日本篇』(リュミエール兄弟/1897-99頃/29min)=映画生誕百周年版
『蜂の巣の子供たち』(清水宏/1948/84min/蜂の巣映画)
『コタンの口笛』(成瀬巳喜男/1959/126min/東宝)
『神々の深き欲望』(今村昌平/1968/175min/日活)
『地の群れ』(熊井啓/1970/127min/ATG)
『橋のない川 第一部』(今井正/1969/127min/ほるぷ映画)
『苦海浄土』『あいラブ優ちゃん』(木村栄文/1970,1976/49min,48min/RKB毎日放送)
『砂の器』(野村芳太郎/1974/143min/松竹)
『チセ・ア・カラ われらいえをつくる』(姫田忠義/1974/57min/民族文化映像研究所)
『異邦人の河』(李学仁/1975/115min/緑豆社)=東京国立近代美術館フィルムセンター所蔵プリントを上映予定
『泥の河』(小栗康平/1981/105min/木村プロダクション)
『二十才の微熱』(橋口亮輔/1993/114min/ぴあ=ポニーキャニオン)
『A』(森達也/1998/135min/安岡フィルム)
『ピュ~ぴる』(松永大司/2011/93min/マジックアワー)
『戦場ぬ止み』(三上智恵/2015/129min/シグロ)
《 「ニッポン・マイノリティ映画祭」 開催概要 》
■ 主催: 日本大学藝術学部映画学科3年 映像表現・理論コース映画ビジネスゼミ、ユーロスペース
■ 上映協力: RKB毎日放送、神戸映画資料館、松竹、新日本映画社、綜映社、天遊、ディメンション
東京国立近代美術館フィルムセンター、東風、東宝、日活、PFF事務局、マジックアワー
民族文化映像研究所、安岡フィルム
■ 会期: 12月19日(土)~25日(金)
■ 会場/一般のお問い合わせ: ユーロスペース(東京都渋谷区円山町1-5 KINOHAUS 3F Tel:03-3461-0211)
■ Web: 公式ホームページ:http://nippon-minority.com(準備中)
Twitter:@nichige_eigasai Facebook:https://www.facebook.com/nippon.minority
http://www.cinematopics.com/cinema/news/output.php?news_seq=28422