日本経済新聞-2015/1/24 6:30
世界にはさまざまな国立公園があります。想像できないほどスケールの大きな公園、地球上とは思えない奇観を見せる公園、めったにたどり着けない秘境にある公園、そしてもちろん都会から数時間で行ける便利な公園も。自然環境を守り、美しい景観とそこに生きる動植物を保護する国立公園は、私たち都会に住む人間の心と体をリフレッシュするオアシスでもあります。世界指折りの国立公園巡りに出かけてみましょう。今回は「中南米」の国立公園からスタートです。
中南米の野趣あふれる国立公園は、冒険好きにはたまらなく刺激的だ。成長し続ける氷河、うっそうとしたジャングル、登山家をひきつけてやまない険しい山々。どれをとってもスケールが大きく、自然の驚異をこれでもかと見せつけてくる。公園の多くは山岳地帯やジャングルに阻まれて容易に近づけない場所にあるが、まさにそのアクセスのしにくさこそがこの地域の魅力だ。おかげで太古の自然がそのままに残っている。
チリのトーレス・デル・パイネ国立公園は、雄大なアンデス山脈の裾野に広がる。冷たい湖にアンデスの威容が映し出される姿は圧巻だ。岩山の広がる大地で、1日中ハイキングを楽しんでもいい。日の光に輝く岩々は美しく、見あきることがない(写真:Pichugin Dmitry/Shutterstock)
南米の絶景と言えば、ブラジル南部のパラナ州とアルゼンチンとの国境沿いに広がるイグアスの滝や、南米大陸南端パタゴニアの秘境、チリのトーレス・デル・パイネが有名。ほかにもコスタリカのポアス火山国立公園では、月面のような岩だらけの大地で、蒸気を噴き上げる間欠泉や、この世のものとは思えない植物に出合える。べネズエラのカナイマ国立公園では、ジャングルへと豪快に流れ落ちるエンジェルフォールに驚くだろう。断崖があまりに高いため、水は地面に着く前に霧に変わってしまう。
カナイマ国立公園の特徴はそのスケールの大きさだ。総面積は3万1000平方キロで、日本の四国の1.6倍ほどの広さがある。さらにテプイと呼ばれる垂直に切り立ったテーブル状の岩山は、公園の約3分の2を占める巨大な砂岩の山々で、先住民のペモン族から、魂の宿る場所として崇められてきた。中央に見える滝はエンジェルフォール(写真:Alice Nerr/Shutterstock)
グアテマラのティカル国立公園では、石畳をはう木の根や草のつるによって何世紀もの間守られてきたマヤ文明の遺跡に、廃虚の美しさを感じることだろう。園内にはジャガー、リャマ、宝石のように美しいチョウの群れ、頭上の木々を飛び交うにぎやかなサルたちが暮らす。密林の奥の生き物たちとの出会いが、中南米の旅のもう1つの醍醐味だ。
ティカルは、古代のマヤで最強の都市国家の1つだった。建造物の中には紀元前4世紀まで遡るものもあるが、全盛期はマヤ古典期といわれる西暦250~900年頃で、当時ここは政治、商業、軍事の中心地だった。どこか神秘的な雰囲気が漂うのは、遺跡がジャングルと一体化しているからだろう(写真:Otis Imboden/National Geographic Creative)
中南米のどの公園を訪れても、手つかずの大自然に冒険心がかきたてられるだろう。熱帯のジャングルや向こう岸の見えない広い川など、深く知れば知るほど、そこには新たな発見が待ち受けている。
(日経ナショナル ジオグラフィック社)
[ナショナル ジオグラフィック『美しい世界の国立公園』を基に再構成]
「National Geographic」は原則、毎週日曜日に掲載します。
(参考)自然保護の精神に基づき設立された世界の国立公園。その規模は壮大で、さまざまな景観にあふれています。ナショナル ジオグラフィック『美しい世界の国立公園 絶景とアウトドアを楽しむ旅』は、世界の有名な国立公園76カ所を6つの大陸別に紹介。サイズはナショジオ本誌よりも大きく、簡潔な文章と200点以上の美しい写真で構成しています。人類が未来に継承していくべき大自然が満載です。
http://www.nikkei.com/article/DGXMZO81618300W5A100C1000000/
世界にはさまざまな国立公園があります。想像できないほどスケールの大きな公園、地球上とは思えない奇観を見せる公園、めったにたどり着けない秘境にある公園、そしてもちろん都会から数時間で行ける便利な公園も。自然環境を守り、美しい景観とそこに生きる動植物を保護する国立公園は、私たち都会に住む人間の心と体をリフレッシュするオアシスでもあります。世界指折りの国立公園巡りに出かけてみましょう。今回は「中南米」の国立公園からスタートです。
中南米の野趣あふれる国立公園は、冒険好きにはたまらなく刺激的だ。成長し続ける氷河、うっそうとしたジャングル、登山家をひきつけてやまない険しい山々。どれをとってもスケールが大きく、自然の驚異をこれでもかと見せつけてくる。公園の多くは山岳地帯やジャングルに阻まれて容易に近づけない場所にあるが、まさにそのアクセスのしにくさこそがこの地域の魅力だ。おかげで太古の自然がそのままに残っている。
チリのトーレス・デル・パイネ国立公園は、雄大なアンデス山脈の裾野に広がる。冷たい湖にアンデスの威容が映し出される姿は圧巻だ。岩山の広がる大地で、1日中ハイキングを楽しんでもいい。日の光に輝く岩々は美しく、見あきることがない(写真:Pichugin Dmitry/Shutterstock)
南米の絶景と言えば、ブラジル南部のパラナ州とアルゼンチンとの国境沿いに広がるイグアスの滝や、南米大陸南端パタゴニアの秘境、チリのトーレス・デル・パイネが有名。ほかにもコスタリカのポアス火山国立公園では、月面のような岩だらけの大地で、蒸気を噴き上げる間欠泉や、この世のものとは思えない植物に出合える。べネズエラのカナイマ国立公園では、ジャングルへと豪快に流れ落ちるエンジェルフォールに驚くだろう。断崖があまりに高いため、水は地面に着く前に霧に変わってしまう。
カナイマ国立公園の特徴はそのスケールの大きさだ。総面積は3万1000平方キロで、日本の四国の1.6倍ほどの広さがある。さらにテプイと呼ばれる垂直に切り立ったテーブル状の岩山は、公園の約3分の2を占める巨大な砂岩の山々で、先住民のペモン族から、魂の宿る場所として崇められてきた。中央に見える滝はエンジェルフォール(写真:Alice Nerr/Shutterstock)
グアテマラのティカル国立公園では、石畳をはう木の根や草のつるによって何世紀もの間守られてきたマヤ文明の遺跡に、廃虚の美しさを感じることだろう。園内にはジャガー、リャマ、宝石のように美しいチョウの群れ、頭上の木々を飛び交うにぎやかなサルたちが暮らす。密林の奥の生き物たちとの出会いが、中南米の旅のもう1つの醍醐味だ。
ティカルは、古代のマヤで最強の都市国家の1つだった。建造物の中には紀元前4世紀まで遡るものもあるが、全盛期はマヤ古典期といわれる西暦250~900年頃で、当時ここは政治、商業、軍事の中心地だった。どこか神秘的な雰囲気が漂うのは、遺跡がジャングルと一体化しているからだろう(写真:Otis Imboden/National Geographic Creative)
中南米のどの公園を訪れても、手つかずの大自然に冒険心がかきたてられるだろう。熱帯のジャングルや向こう岸の見えない広い川など、深く知れば知るほど、そこには新たな発見が待ち受けている。
(日経ナショナル ジオグラフィック社)
[ナショナル ジオグラフィック『美しい世界の国立公園』を基に再構成]
「National Geographic」は原則、毎週日曜日に掲載します。
(参考)自然保護の精神に基づき設立された世界の国立公園。その規模は壮大で、さまざまな景観にあふれています。ナショナル ジオグラフィック『美しい世界の国立公園 絶景とアウトドアを楽しむ旅』は、世界の有名な国立公園76カ所を6つの大陸別に紹介。サイズはナショジオ本誌よりも大きく、簡潔な文章と200点以上の美しい写真で構成しています。人類が未来に継承していくべき大自然が満載です。
http://www.nikkei.com/article/DGXMZO81618300W5A100C1000000/