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シマフクロウ

2015-09-25 | アイヌ民族関連
読売新聞 2015年09月24日
巣立ち雛はコロポックル!?
斉藤慶輔
 救護活動や野外調査を通じ、20年以上にわたってシマフクロウと接している。シマフクロウは世界最大級のフクロウ。道内に140羽程度が生息するに過ぎず、絶滅の危機に瀕ひんした野生動物だ。
 巣となる洞を持つ大径木の減少や、餌となる魚が生息する河川環境の悪化が個体数減少の主因だ。近年では交通事故や電柱での感電、養魚場での溺死も起きている。
 シマフクロウはアイヌ語でコタンコロカムイ。「村の守り神」と訳されることが多いが、厳密には集落(コタン)を所有(コロ)する神(カムイ)であり、その位置づけは決して門番や守衛ではない。

 山奥深くに生息していると思われがちなシマフクロウの名称に、人間生活の中枢となる集落という単語が使われている点は興味深い。その昔、アイヌの人々はシマフクロウが身近に居ることを認識し、畏敬の念を持って共生していたのだろう。
 現代のシマフクロウは、養魚場や道路上で餌を採り、電柱をとまり木として活用するなど、人間が改変した環境を自らの生活に取り入れて生活している。彼らと人間の距離は年々近くなっており、結果として人的な事故が頻発している。
 今年の初夏もシマフクロウ営巣地を訪れ、巣立ち直前もしくは直後の雛ひなを対象に健康診断と標識の装着を行った。巣は思いのほか人里や道路に近いことが多く、生涯、人間に会わないシマフクロウはもはや存在しないのではないかとさえ思えてしまう。
 ある日、巣立ったばかりの雛の行方を追い、大きなフキの群落を掻かき分けていたときのこと。いきなり目前に現れたのはコロポックル!
 コロポックルはアイヌ伝承に登場する小人で、「フキの葉の下の人」という意味があるとされる。背丈が低く、漁が巧みだという。私がコロポックルと錯覚したのは、紛れもなくフキの下に佇たたずみ、真ん丸な目でこちらを見つめるシマフクロウの巣立ち雛だった。
 巣立ったばかりのシマフクロウはほとんど飛ぶことができず、走って逃げる。動きが素早いとされるコロポックルに相通じる。フキ採りで森に入ったアイヌの人々が、巣立ったばかりのシマフクロウに出会い、この伝承ができたのでは? そんなロマンに思いを馳はせることができる野生動物との付き合いは大歓迎だ。
 【斉藤慶輔】 猛禽もうきん類医学研究所代表。獣医師。環境省希少野生動植物種保存推進員を務め、オオワシの保護活動で知られる。釧路市在住。50歳。
http://www.yomiuri.co.jp/hokkaido/feature/CO003961/20150924-OYTAT50023.html?from=ycont_top_tmb
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