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樟脳製造に用いた鉄鍋「脳鼎」の修復を手掛ける張志鵬さん(新北市原住民族行政局提供)
(新北中央社)台湾原住民(先住民)族タイヤル族に関する文物を収蔵・展示する北部・新北市の烏来タイヤル民族博物館が、かつて樟脳製造に用いられた鉄製の鍋「脳鼎」を約半年かけて修復した。台湾で最も豊かとされる烏来地区の樟脳油産業史を見届けた貴重な一品だとしている。
新北市政府原住民族行政局のシク・ヤワイ局長によると、同館には300点近くの文物を収蔵しているが、歳月を経て一部で劣化の危機に見舞われているという。同館では修復作業を進めており、昨年には脳鼎を含む10点の修復を終えた。
烏来ではかつて樟脳油の製造が盛んだった。同館によれば、脳鼎は地元に暮らした故・高茂源さんが所有していた。表面に突起物が付いているが、樟脳が脳鼎の鉄分と反応してできたものだという。
修復を手掛けた張志鵬さんは、表面の残留物が強酸性で、中和しなければ脳鼎が分解されてしまう恐れがあったと振り返る。特殊な材料を塗布して腐食を遅らせるようにしたと語った。
また昨年は高さんの母親、高蔡市さんが所有していた聴診器も修復された。市さんは日本統治時代に正式な教育を受けた助産師の1期生とされる。同館によると、ゴムやプラスチックが劣化したり、酸化したりしていたが、本来の機能を取り戻すことに成功したという。
(黄旭昇/編集:齊藤啓介)