毎日新聞2016年12月7日 東京朝刊
衆院内閣委員会可決で2日に急発進したカジノ法案は6日、猛スピードで衆院を通過した。「統合型リゾート(IR)整備推進法案」はそのまま突っ走り、年内にも成立する見通しだが、ギャンブル依存症対策など重要な課題は何も決まっていない。国会内で法曹関係者らが反対を訴える一方、名乗りを上げる自治体や経済界は歓迎し、国民は戸惑っている。【遠藤拓、水戸健一】
市民は
カジノ法案を人々はどう受け止めるのか。各地で記者が市民10人にカジノ場設置への賛否とその理由、国会審議への感想を求めると、賛否両論さまざまな声が上がった。犯罪やギャンブル依存症の増加を懸念する意見がある一方、経済効果への期待も聞かれた。
拙速との批判もある法案審議のあり方については、カジノ場設置に反対していない人からも含めて、丁寧な議論や説明を求める声が相次いだ。「暴走」「数で押し切るな」という憤りも聞かれた。
推進自治体
横浜市は正式表明はしていないが誘致を模索しており、市経済界はカジノ法案の衆院通過を歓迎した。横浜商工会議所の上野孝会頭は6日、「地域経済の活性化に有効な方策。参院でも審議が進み、会期中に法案が成立することを期待する」とのコメントを出した。
同商議所は先月下旬、安倍晋三首相に法案の早期成立と候補地に横浜市を選定することを求める要望書を提出。今月5日には超党派によるIR議連にも要望書を出し誘致の動きを加速させている。
北海道でも3自治体が名乗りを上げている。苫小牧統合型リゾート推進協議会会長で苫小牧商工会議所の藤田博章名誉会頭(75)は6日、「人口減対策と雇用創出にはIR誘致が欠かせない。売り上げと利益が大きいカジノに加え、国際会議場や劇場、医療ツーリズム施設などで地域の活性化を図りたい。何とか今国会で成立してほしい。北海道が指名を受けるため、他の2カ所と協議会を設けたい」と話した。
釧路市の蝦名大也市長は「豊かな自然とマッチしたヨーロッパ型のIRを目指している。併せてアイヌ文化を世界へ情報発信していきたい」と歓迎のコメントを出した。
国会では
法曹関係者らで作る「全国カジノ賭博場設置反対連絡協議会」は夕方、代表幹事の新里宏二弁護士らが国会内で記者会見した。「カジノ賭博合法化で必然的に害悪が生じ、地域経済にダメージを与える。法案があっという間に衆院を通過したことに驚きと怒りを禁じ得ない」との声明を出し、参院での否決か廃案を求めた。
参加者からは「人の不幸を前提にした成長戦略は愚か」といった声が出た。
一方、「ギャンブル依存症問題を考える会」(東京都中央区)の田中紀子代表は、カジノにとどまらず、パチンコやパチスロ、宝くじといった射幸性の高い行為全般を念頭に、依存症対策の充実を求める約1万5000人分の署名を、超党派の国際観光産業振興議員連盟(IR議連)のメンバーに提出した。
依存の怖さ、再度警鐘 「賭博禁止は持統天皇以来」清水議員
7世紀末の日本も、ほとほとギャンブル依存に手を焼いた?
当時の持統天皇による「すごろく禁止令」を引き合いにカジノ法案を批判した共産党の清水忠史議員は、衆院本会議で可決後、毎日新聞の取材に「そのあとも禁止令は繰り返し出されている。禁止しても効き目がなく、出さざるを得なかったのだろう」と述べ、ギャンブル依存の怖さに改めて警鐘を鳴らした。
清水氏は2日の衆院内閣委員会で「賭博禁止は持統天皇以来、689年のすごろく禁止令に始まる」と指摘。カジノ法案を推進する自民党議員らに「あなた方は天皇が決めたことを破るのですか」と迫り、機知に富む質問で注目された。清水氏によると、すごろく禁止令以降も同様の禁止令が繰り返し出されたとの説もある。【遠藤拓】
http://mainichi.jp/articles/20161207/ddm/041/010/113000c
衆院内閣委員会可決で2日に急発進したカジノ法案は6日、猛スピードで衆院を通過した。「統合型リゾート(IR)整備推進法案」はそのまま突っ走り、年内にも成立する見通しだが、ギャンブル依存症対策など重要な課題は何も決まっていない。国会内で法曹関係者らが反対を訴える一方、名乗りを上げる自治体や経済界は歓迎し、国民は戸惑っている。【遠藤拓、水戸健一】
市民は
カジノ法案を人々はどう受け止めるのか。各地で記者が市民10人にカジノ場設置への賛否とその理由、国会審議への感想を求めると、賛否両論さまざまな声が上がった。犯罪やギャンブル依存症の増加を懸念する意見がある一方、経済効果への期待も聞かれた。
拙速との批判もある法案審議のあり方については、カジノ場設置に反対していない人からも含めて、丁寧な議論や説明を求める声が相次いだ。「暴走」「数で押し切るな」という憤りも聞かれた。
推進自治体
横浜市は正式表明はしていないが誘致を模索しており、市経済界はカジノ法案の衆院通過を歓迎した。横浜商工会議所の上野孝会頭は6日、「地域経済の活性化に有効な方策。参院でも審議が進み、会期中に法案が成立することを期待する」とのコメントを出した。
同商議所は先月下旬、安倍晋三首相に法案の早期成立と候補地に横浜市を選定することを求める要望書を提出。今月5日には超党派によるIR議連にも要望書を出し誘致の動きを加速させている。
北海道でも3自治体が名乗りを上げている。苫小牧統合型リゾート推進協議会会長で苫小牧商工会議所の藤田博章名誉会頭(75)は6日、「人口減対策と雇用創出にはIR誘致が欠かせない。売り上げと利益が大きいカジノに加え、国際会議場や劇場、医療ツーリズム施設などで地域の活性化を図りたい。何とか今国会で成立してほしい。北海道が指名を受けるため、他の2カ所と協議会を設けたい」と話した。
釧路市の蝦名大也市長は「豊かな自然とマッチしたヨーロッパ型のIRを目指している。併せてアイヌ文化を世界へ情報発信していきたい」と歓迎のコメントを出した。
国会では
法曹関係者らで作る「全国カジノ賭博場設置反対連絡協議会」は夕方、代表幹事の新里宏二弁護士らが国会内で記者会見した。「カジノ賭博合法化で必然的に害悪が生じ、地域経済にダメージを与える。法案があっという間に衆院を通過したことに驚きと怒りを禁じ得ない」との声明を出し、参院での否決か廃案を求めた。
参加者からは「人の不幸を前提にした成長戦略は愚か」といった声が出た。
一方、「ギャンブル依存症問題を考える会」(東京都中央区)の田中紀子代表は、カジノにとどまらず、パチンコやパチスロ、宝くじといった射幸性の高い行為全般を念頭に、依存症対策の充実を求める約1万5000人分の署名を、超党派の国際観光産業振興議員連盟(IR議連)のメンバーに提出した。
依存の怖さ、再度警鐘 「賭博禁止は持統天皇以来」清水議員
7世紀末の日本も、ほとほとギャンブル依存に手を焼いた?
当時の持統天皇による「すごろく禁止令」を引き合いにカジノ法案を批判した共産党の清水忠史議員は、衆院本会議で可決後、毎日新聞の取材に「そのあとも禁止令は繰り返し出されている。禁止しても効き目がなく、出さざるを得なかったのだろう」と述べ、ギャンブル依存の怖さに改めて警鐘を鳴らした。
清水氏は2日の衆院内閣委員会で「賭博禁止は持統天皇以来、689年のすごろく禁止令に始まる」と指摘。カジノ法案を推進する自民党議員らに「あなた方は天皇が決めたことを破るのですか」と迫り、機知に富む質問で注目された。清水氏によると、すごろく禁止令以降も同様の禁止令が繰り返し出されたとの説もある。【遠藤拓】
http://mainichi.jp/articles/20161207/ddm/041/010/113000c