リアルサウンド 2020.06.29 文=たかなし亜妖
『ゴールデンカムイ』245話(『週刊ヤングジャンプ』2020年29号)は札幌にて牛山が大暴れ。パワーで満ち溢れたあの巨体を振り回せば、都市一つ簡単に壊れてしまいそうな勢いである。
強欲で気前のいい男・牛山辰馬
牛山がいるということは、当然土方歳三の姿もあり……。全ての一味が再会を果たす大舞台、札幌での物語が本格的にスタートした。血を見ることは避けられない状況で、それぞれはどんな行動を取るのだろうか?
個性的な囚人の中で一般常識を持ち、落ち着いた性格をしている牛山辰馬(うしやまたつうま)。土方一派の中でも腕が立つ人物であり、柔道家という一面を持つ。「不敗の牛山」と呼ばれるほどの実力で、腕っぷしは作中イチ強いと言っても過言ではない。
ただ彼も常識的とは言えど、そこはやはり脱獄囚。穏やかな性格とは裏腹に、性欲が凄まじく強く、罪人となった理由も女絡みだ。時には判断力を欠いてしまうほどの暴走っぷりで、定期的に女性と交わらないとダメだという……。なぜか網走監獄の囚人たちは性癖をこじらせた者(動物に欲情する姉畑支遁、弟の死により変態殺人鬼となった辺見和雄など)がやたらと多いので、真っ直ぐに女性を求める姿は、ある意味健全なのかもしれない。
性欲以外の目立った奇行は見られないため、言わなければ囚人とは分からない。初めて杉元と出会ったのは家永カノが女将に成りすましていた殺人ホテル。彼らを洋食レストランの「水風亭」へ連れていき、ライスカレーとビールをふるまうなど、気前のいい男っぷりを見せていた。味噌以外のオソマに難色を示していたアシリパも、これには大興奮。「ヒンナすぎるオソマ……」と、感動を覚えていたほどだ。
アイヌのメインである食生活はオハウ(鍋物)が中心で、現代人の食事と比べるとかなりの薄味。和人の杉元が持ち込んだ味噌や醤油で味を付ける文化はないそうで、わずかな塩と素材の味を生かすのが基本だそう。そんな彼女にとってライスカレーは衝撃の味であり、ご馳走してくれた牛山に敬意を示すのも頷ける。もちろん彼を「先生!」と呼んでいるのは、カレーではなく、別の件なのだが……。
杉元にとって牛山はいくらアシリパが慕っていても、土方一派である以上分かり合えることは決してない相手でしかない。敵意をむき出しにする杉元だが、果たして向こうは何を考えているのだろうか? 度々登場するキャラクターだが、まだまだ謎に包まれていることも多い。
役者が全て札幌に揃おうとしている。新たな舞台で刺青人皮をいち早くゲットするのは、どの一味なのだろうか? そしてアシリパが暗号を口にする日が来るのか非常に気になるところ。物語は佳境へ向かっているものの、まだまだ読者を休ませてはくれない。誰かが金塊を手にする日が訪れるまで、目を離さずにいよう。
■たかなし亜妖
平成生まれのサブカル系ライター。ゲームシナリオライターとしての顔も持つ。得意技は飲み歩きと自炊。趣味はホラー映画鑑賞。
■書籍情報
『ゴールデンカムイ(6)』
野田サトル 著
価格:本体540円+税
出版社:集英社
https://realsound.jp/book/2020/06/post-576726.html
『ゴールデンカムイ』245話(『週刊ヤングジャンプ』2020年29号)は札幌にて牛山が大暴れ。パワーで満ち溢れたあの巨体を振り回せば、都市一つ簡単に壊れてしまいそうな勢いである。
強欲で気前のいい男・牛山辰馬
牛山がいるということは、当然土方歳三の姿もあり……。全ての一味が再会を果たす大舞台、札幌での物語が本格的にスタートした。血を見ることは避けられない状況で、それぞれはどんな行動を取るのだろうか?
個性的な囚人の中で一般常識を持ち、落ち着いた性格をしている牛山辰馬(うしやまたつうま)。土方一派の中でも腕が立つ人物であり、柔道家という一面を持つ。「不敗の牛山」と呼ばれるほどの実力で、腕っぷしは作中イチ強いと言っても過言ではない。
ただ彼も常識的とは言えど、そこはやはり脱獄囚。穏やかな性格とは裏腹に、性欲が凄まじく強く、罪人となった理由も女絡みだ。時には判断力を欠いてしまうほどの暴走っぷりで、定期的に女性と交わらないとダメだという……。なぜか網走監獄の囚人たちは性癖をこじらせた者(動物に欲情する姉畑支遁、弟の死により変態殺人鬼となった辺見和雄など)がやたらと多いので、真っ直ぐに女性を求める姿は、ある意味健全なのかもしれない。
性欲以外の目立った奇行は見られないため、言わなければ囚人とは分からない。初めて杉元と出会ったのは家永カノが女将に成りすましていた殺人ホテル。彼らを洋食レストランの「水風亭」へ連れていき、ライスカレーとビールをふるまうなど、気前のいい男っぷりを見せていた。味噌以外のオソマに難色を示していたアシリパも、これには大興奮。「ヒンナすぎるオソマ……」と、感動を覚えていたほどだ。
アイヌのメインである食生活はオハウ(鍋物)が中心で、現代人の食事と比べるとかなりの薄味。和人の杉元が持ち込んだ味噌や醤油で味を付ける文化はないそうで、わずかな塩と素材の味を生かすのが基本だそう。そんな彼女にとってライスカレーは衝撃の味であり、ご馳走してくれた牛山に敬意を示すのも頷ける。もちろん彼を「先生!」と呼んでいるのは、カレーではなく、別の件なのだが……。
杉元にとって牛山はいくらアシリパが慕っていても、土方一派である以上分かり合えることは決してない相手でしかない。敵意をむき出しにする杉元だが、果たして向こうは何を考えているのだろうか? 度々登場するキャラクターだが、まだまだ謎に包まれていることも多い。
役者が全て札幌に揃おうとしている。新たな舞台で刺青人皮をいち早くゲットするのは、どの一味なのだろうか? そしてアシリパが暗号を口にする日が来るのか非常に気になるところ。物語は佳境へ向かっているものの、まだまだ読者を休ませてはくれない。誰かが金塊を手にする日が訪れるまで、目を離さずにいよう。
■たかなし亜妖
平成生まれのサブカル系ライター。ゲームシナリオライターとしての顔も持つ。得意技は飲み歩きと自炊。趣味はホラー映画鑑賞。
■書籍情報
『ゴールデンカムイ(6)』
野田サトル 著
価格:本体540円+税
出版社:集英社
https://realsound.jp/book/2020/06/post-576726.html