エミリー・ブラントの演技が光る!19世紀の大西部が舞台の『The English』
海外ドラマナビ2023年7月29日
19世紀後半のアメリカ西部を舞台に、運命的な出会いを果たした男女を描いた歴史ドラマ『The English(原題)』。新作映画『Oppenheimer(原題)』や大ヒット作『クワイエット・プレイス』シリーズにも出演する英国女優、エミリー・ブラントが主演・製作総指揮を手掛け、英米メディアからも高く評価された話題作を、今回はいち早く紹介していこう。
『The English』は、英BBCと米Amazon Primeの共同製作により、アメリカ西部で生きる人々の人間模様を壮大なスケールで描いた全6話のリミテッドシリーズで、イギリスでは2022年11月から12月にかけて毎週日曜日夜9時のゴールデンタイムで放送された。
脚本・監督を担当したのはヒューゴ・ブリック(『オナラブル・ウーマン 熱砂の女』『ブラック・アース・ライジング』)。英Guardian紙は5つ星の満点、映画レビューサイト「Rotten Tomatoes」でも83%という高評価を受け、BAFTA賞(英国アカデミー賞)では主演男優、監督、衣装デザイン、作曲、美術の5部門でノミネートされた。
https://www.youtube.com/watch?v=UC6HUZsvCtM&t=95s
運命的な出会いを果たした男と女
物語の中心になるのは、1890年にイギリスからアメリカ西部にやってきた貴族女性のコーネリア・ロック(エミリー・ブラント)と、先住民ポーニー族の元騎兵隊偵察兵イーライ・ウィップ(チャスク・スペンサー)。コーネリアは息子の死の原因となった男に復讐を果たすために西部を旅し、イーライは退役軍人としての権利を使って自身の土地を請求するためネブラスカ州を目指していた。この二人がカンザス州で偶然出会うところからドラマは始まる。

彼らに加えて、ワイオミング州で牧場を営む英貴族のトーマス・トラッフォード(トム・ヒューズ)、彼の元会計士で現在は町の有力者であるデイヴィッド・メルモント(レイフ・スポール)、ワイオミング州の保安官ロバート・マーシャル(スティーヴン・レイ)など、それぞれに思惑を巡らせる謎に満ちた人物が次々に登場。一見、何の関係もない登場人物たちが徐々に繋っていき、やがて1875年に起きたシャイアン族の大虐殺(架空の事件)が鍵を握ることが明らかになっていく。
西部の大平原で運命的な出会いを果たしたコーネリアとイーライは、ともに旅を続け、星空を眺める中で、お互いに心の安らぎを見出す。彼らの愛は単なる男女の恋愛ではなく、より精神的な人間愛だ。特に、第4話以降、コーネリアの悲しい過去と秘密が明らかになってからの展開は目が離せない。果たして、コーネリアは復讐を遂げるのか? そして、コーネリアとイーライの運命の行方は?
個性派俳優たちの競演!
コーネリア役のエミリーはもともと演技派として知られるが、そんな彼女とともに今回演技力を絶賛されたのがイーライ役のチャスク・スペンサー(『トワイライト』シリーズ)だ。前述の通り、BAFTA賞主演男優賞にもノミネートされている。さらに、トビー・ジョーンズ(『SHERLOCK/シャーロック』)やキアラン・ハインズ(『ゲーム・オブ・スローンズ』)といった名優も端役で出演。キアランは、コーネリアの殺害を企むホテルの悪徳オーナーを怪演している。
さらにドラマを盛り上げるのが、美しいアメリカ西部の風景だ。果てしなく広がる大平原、メサと呼ばれるテーブル状の台地など、様々な地形の大地や赤く燃える夕陽、夜空に輝く天の川といった美しいシーンが展開。この西部の景色がストーリーテリングの一部となって、見終わった後も心に余韻を残す作品となっている。
一方で、本作は過酷な西部の現実も描き出す。弱肉強食の無法地帯のような世界で、人々は殺すか殺されるか、成功するか失敗するかという博打のような人生を送る。強奪、レイプ、首吊り刑、頭皮剥ぎのように目を覆う残虐なシーンもあるこのドラマは、それぞれに目的を持ってこの厳しい土地で必死に生きる人々の群像劇でもある。
イギリスとアメリカ、貴族と平民
西部劇=アメリカの作品というイメージがあるが、実は世界で初めてのウェスタン映画は1899年にイングランド北西部で撮影されたという。近年のイギリスにウェスタン作品のイメージはあまりないが、1960~1970年代にはイギリス産のマカロニ・ウェスタン(英語では"Spaghetti" Westernsと呼ばれる)映画が製作された。ベネディクト・カンバーバッチが主演した2021年の『パワー・オブ・ザ・ドッグ』でもBBC Filmsが共同製作に名前を連ねている。
本作では、貴族出身のコーネリアやトラッフォード、労働者階級のメルモントを通して、イギリスの階級社会システムとあらゆる手段を使って自由な国アメリカで成り上がろうとする人々を対比させるとともに、彼ら白人に土地を奪われた先住民の悲しみ・怒りと、この国を侵略した白人たちと先住民たちの血塗られた戦いの歴史を綴っており、幾層にも重なるストーリーを描いている。
19世紀後半のアメリカ西部で生きる人々の人間模様を描くドラマ『The English』。日本で放送・配信された際にはぜひチェックしていただきたい。
(文/Yoshie Natori)
https://dramanavi.net/articles/222089
海外ドラマナビ2023年7月29日
19世紀後半のアメリカ西部を舞台に、運命的な出会いを果たした男女を描いた歴史ドラマ『The English(原題)』。新作映画『Oppenheimer(原題)』や大ヒット作『クワイエット・プレイス』シリーズにも出演する英国女優、エミリー・ブラントが主演・製作総指揮を手掛け、英米メディアからも高く評価された話題作を、今回はいち早く紹介していこう。
『The English』は、英BBCと米Amazon Primeの共同製作により、アメリカ西部で生きる人々の人間模様を壮大なスケールで描いた全6話のリミテッドシリーズで、イギリスでは2022年11月から12月にかけて毎週日曜日夜9時のゴールデンタイムで放送された。
脚本・監督を担当したのはヒューゴ・ブリック(『オナラブル・ウーマン 熱砂の女』『ブラック・アース・ライジング』)。英Guardian紙は5つ星の満点、映画レビューサイト「Rotten Tomatoes」でも83%という高評価を受け、BAFTA賞(英国アカデミー賞)では主演男優、監督、衣装デザイン、作曲、美術の5部門でノミネートされた。
https://www.youtube.com/watch?v=UC6HUZsvCtM&t=95s
運命的な出会いを果たした男と女
物語の中心になるのは、1890年にイギリスからアメリカ西部にやってきた貴族女性のコーネリア・ロック(エミリー・ブラント)と、先住民ポーニー族の元騎兵隊偵察兵イーライ・ウィップ(チャスク・スペンサー)。コーネリアは息子の死の原因となった男に復讐を果たすために西部を旅し、イーライは退役軍人としての権利を使って自身の土地を請求するためネブラスカ州を目指していた。この二人がカンザス州で偶然出会うところからドラマは始まる。

彼らに加えて、ワイオミング州で牧場を営む英貴族のトーマス・トラッフォード(トム・ヒューズ)、彼の元会計士で現在は町の有力者であるデイヴィッド・メルモント(レイフ・スポール)、ワイオミング州の保安官ロバート・マーシャル(スティーヴン・レイ)など、それぞれに思惑を巡らせる謎に満ちた人物が次々に登場。一見、何の関係もない登場人物たちが徐々に繋っていき、やがて1875年に起きたシャイアン族の大虐殺(架空の事件)が鍵を握ることが明らかになっていく。
西部の大平原で運命的な出会いを果たしたコーネリアとイーライは、ともに旅を続け、星空を眺める中で、お互いに心の安らぎを見出す。彼らの愛は単なる男女の恋愛ではなく、より精神的な人間愛だ。特に、第4話以降、コーネリアの悲しい過去と秘密が明らかになってからの展開は目が離せない。果たして、コーネリアは復讐を遂げるのか? そして、コーネリアとイーライの運命の行方は?
個性派俳優たちの競演!
コーネリア役のエミリーはもともと演技派として知られるが、そんな彼女とともに今回演技力を絶賛されたのがイーライ役のチャスク・スペンサー(『トワイライト』シリーズ)だ。前述の通り、BAFTA賞主演男優賞にもノミネートされている。さらに、トビー・ジョーンズ(『SHERLOCK/シャーロック』)やキアラン・ハインズ(『ゲーム・オブ・スローンズ』)といった名優も端役で出演。キアランは、コーネリアの殺害を企むホテルの悪徳オーナーを怪演している。
さらにドラマを盛り上げるのが、美しいアメリカ西部の風景だ。果てしなく広がる大平原、メサと呼ばれるテーブル状の台地など、様々な地形の大地や赤く燃える夕陽、夜空に輝く天の川といった美しいシーンが展開。この西部の景色がストーリーテリングの一部となって、見終わった後も心に余韻を残す作品となっている。
一方で、本作は過酷な西部の現実も描き出す。弱肉強食の無法地帯のような世界で、人々は殺すか殺されるか、成功するか失敗するかという博打のような人生を送る。強奪、レイプ、首吊り刑、頭皮剥ぎのように目を覆う残虐なシーンもあるこのドラマは、それぞれに目的を持ってこの厳しい土地で必死に生きる人々の群像劇でもある。
イギリスとアメリカ、貴族と平民
西部劇=アメリカの作品というイメージがあるが、実は世界で初めてのウェスタン映画は1899年にイングランド北西部で撮影されたという。近年のイギリスにウェスタン作品のイメージはあまりないが、1960~1970年代にはイギリス産のマカロニ・ウェスタン(英語では"Spaghetti" Westernsと呼ばれる)映画が製作された。ベネディクト・カンバーバッチが主演した2021年の『パワー・オブ・ザ・ドッグ』でもBBC Filmsが共同製作に名前を連ねている。
本作では、貴族出身のコーネリアやトラッフォード、労働者階級のメルモントを通して、イギリスの階級社会システムとあらゆる手段を使って自由な国アメリカで成り上がろうとする人々を対比させるとともに、彼ら白人に土地を奪われた先住民の悲しみ・怒りと、この国を侵略した白人たちと先住民たちの血塗られた戦いの歴史を綴っており、幾層にも重なるストーリーを描いている。
19世紀後半のアメリカ西部で生きる人々の人間模様を描くドラマ『The English』。日本で放送・配信された際にはぜひチェックしていただきたい。
(文/Yoshie Natori)
https://dramanavi.net/articles/222089