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詩歌の森へ:信綱とアイヌ歌人=酒井佐忠

2013-10-14 | アイヌ民族関連
毎日新聞 2013年10月14日 東京朝刊
 歌誌「心の花」の創刊者で歌人・国文学者の佐佐木信綱(1872〜1963)を多角的に検証する冊子『佐佐木信綱研究』が、6月に創刊された。
 信綱は、万葉集研究で知られ、また生涯にわたって西行を敬愛した。その一方で、新派和歌へ移行する短歌革新の推進に力を入れた。「人を思うこころ」に「歌のみなもと」があるとし、情感豊かな「晴」の歌を残した。戦時出版にもかかわったが、膨大な仕事の割には現代の歌人の関心を引くことは少なかった。だが、このところ『佐佐木信綱全歌集』の刊行や「研究会」の発足もあり、若手研究者や歌人により、現代の視点から業績や人物像に少しずつ光が当てられている。
 今回発刊された冊子の「創刊0號(ごう)」は、まず問題提起をするのがねらい。「研究会の歩み」や「特別評論」「人物信綱」「作品信綱」などについて約30人が執筆している。その中で私は、「佐佐木信綱と北海道、アイヌ」と題した屋良健一郎氏の小文や、関東大震災についての歌集未発表の歌を検討した佐佐木頼綱氏のリポートが興味深かった。
 1931年、アイヌ歌人・バチェラー八重子の歌集『若きウタリに』が「心の花叢書(そうしょ)」として出版されたが、それにはアイヌ文化の発掘と伝承に尽くした金田一京助とともに信綱の尽力が大きかった。信綱は、現実に北海道を訪れ、アイヌ研究家の牧師で八重子の養父、ジョン・バチェラーの家も訪ね、連作「北海吟藻」の歌を残す。知性に富んだアイヌ女性や村への思いが先進的に分析されている。(文芸ジャーナリスト)
http://mainichi.jp/feature/news/20131014ddm014070026000c.html
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