=2014/12/29付 西日本新聞朝刊=
2014年12月29日(最終更新 2014年12月29日 01時42分)
北海道の森の奥。人知れず、ニングルという小人たちが暮らしている-。こんな話を脚本家の倉本聡さんが小説に書いている。新聞記者になって27年目の年の瀬。あらためて記者という仕事について考え、ニングルを思い出した。
「記者は井戸掘り職人なんだよ」。約20年前、先輩はこう言った。取材で物事の背景を掘り下げ、地下の水脈のような隠れた真実を明らかにするのが務めだから。しかし、インターネットやスマートフォンなどが普及し、アナログな新聞には冷たい雪が降っている、ともいえる。
小説では、最後に「チュチュ」という名のニングルが街中に種をまく。失われた森を復活させるために。「チュチュ」は、アイヌ語で「芽」という意味。倉本さんは、便利さに溺れた人間社会に警鐘を鳴らしたのだと思う。
私は今、こども記者と一緒に取材する部署にいる。少しでも芽が出るように種をまく人でありたい。 (江田一久)
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/desk/article/136421
2014年12月29日(最終更新 2014年12月29日 01時42分)
北海道の森の奥。人知れず、ニングルという小人たちが暮らしている-。こんな話を脚本家の倉本聡さんが小説に書いている。新聞記者になって27年目の年の瀬。あらためて記者という仕事について考え、ニングルを思い出した。
「記者は井戸掘り職人なんだよ」。約20年前、先輩はこう言った。取材で物事の背景を掘り下げ、地下の水脈のような隠れた真実を明らかにするのが務めだから。しかし、インターネットやスマートフォンなどが普及し、アナログな新聞には冷たい雪が降っている、ともいえる。
小説では、最後に「チュチュ」という名のニングルが街中に種をまく。失われた森を復活させるために。「チュチュ」は、アイヌ語で「芽」という意味。倉本さんは、便利さに溺れた人間社会に警鐘を鳴らしたのだと思う。
私は今、こども記者と一緒に取材する部署にいる。少しでも芽が出るように種をまく人でありたい。 (江田一久)
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/desk/article/136421