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「アイヌ民族もういない」発言の市議が落選、当時の証言を再録

2015-04-14 | アイヌ民族関連
金子 快之氏[札幌市議会議員]
日経ビジネス編集部 2015年4月14日(火)
札幌市議会議員がツイッター上で発したアイヌ民族への発言が物議を醸した。所属する自民党会派を離脱したが、札幌市議会は議員辞職勧告を賛成多数で可決。本人は辞職を否定し、今後もインターネットを通じて発言を続けると話す。(本記事は『日経ビジネス』2014年10月20日号に掲載したものを再録している。金子氏は4月12日に投開票された札幌市議選挙で落選した)
[札幌市議会議員]金子 快之氏
1970年兵庫県生まれ。89年千葉県立船橋高校、94年東京大学経済学部卒業。2011年に札幌市議へ出馬。2014年みんなの党から無所属に。自民党市民会議に所属。2014年8月に自民党の会派を離脱。
札幌市議のアイヌ発言事件の概要
札幌市議会議員の金子快之氏が8月11日にツイッター上で「アイヌ民族なんて、いまはもういないんですよね」などと投稿。この投稿に対し、菅義偉官房長官が記者会見で「極めて残念だ」と発言するなど大きな騒動となった。金子市議は8月に自民党会派を離脱。札幌市議会は9月に議員辞職勧告を賛成多数で可決したが、金子市議は「勧告には拘束力がない」と辞職を否定している。
 「アイヌ民族なんて、いまはもういないんですよね」。8月11日に私がツイッターで発信した内容で世間をお騒がせしております。アイヌ民族の中で不当な利権を得ていない方々には不適切な表現をしてしまい、お詫びします。
 私はアイヌ民族の存在自体を否定していません。血を受け継ぐ方はいらっしゃいます。でもアイヌの方々はかつて「チセ」というわらぶき小屋に住んでいました。札幌で今そのチセに住んで、魚を取って暮らしている人なんて誰一人いません。だからこそ、アイヌ民族はいないという発言につながったわけです。でも民族の定義は人によって全く違います。私は発言した後にこのことに気付いた愚か者です。
 私はアイヌ民族をかたる一部の人たちが不当に利権を得ていることを指摘したかった。私、市会議員になってすぐ気が付いたんですよ。アイヌの名前を使ってお金を稼いでいるやつがいます。制度を作った行政のほか、きちんと判断してこなかった政治にも課題があると感じています。
 そもそもアイヌ民族の定義がはっきりしていません。アイヌ民族に関する法律の根拠はなく、2008年に当時の福田康夫首相が出した国会決議しかありません。民族の定義が曖昧なのです。アイヌの血を引く人以外に、結婚してアイヌになられた方なども増える一方です。北海道が実施した調査によると、アイヌ民族は2万人ぐらいいると言われています。だからアイヌの存在を否定するつもりは全くありません。
短い文章で誤解招いた
 事の発端を説明すると、8月11日にある方から私のツイッターあてに「札幌市政をしっかり頑張ってほしい。アイヌ民族への支援など無駄が多い」という趣旨のメッセージが送られてきました。これに返信した投稿が抜き取られてネット上で炎上してしまいました。ツイッターですので、やり取りが公開されているのは承知しております。ツイッターは短い文章であるため、誤解を生じさせてしまいました。会話の流れでお話ししたものだったのです。
 ただ、私は「アイヌ民族はいない」と言われて怒っている人がいるのが不思議です。よく考えてください。私が「アイヌ民族を特別視しない」と言っているのは、もはや意識することなく暮らせているからです。それはアイヌの方々が理想とし、望んできたことではないのかと申し上げたい。
支援すべき弱者はほかにも
 ちなみに、私が言いたかったことは民族がいるかどうかではありません。論点をすり替えられてしまいました。アイヌの方々への補助金制度は税金で賄われています。就業支援や住宅建設補助など様々な形で支給されています。
 納税者が収めた税金をどう使うのか。きちんと困っている人のために使わないと、納税者は怒ると思うんですね。
 ただでさえ札幌市は年々財政が厳しくなっています。市税が2800億円しかないんですよ。で、歳入が8500億円ぐらい。差額の5700億円は国からの交付金や借金などで賄っています。
 全国的には今、景気が良いと思います。札幌にはまだその効果が及んできていない。アイヌであろうがなかろうが、困っている人は大勢います。その中でアイヌ民族だけに手厚くする必要があるのか疑問だと考えています。
 確かにアイヌ民族出身の方々の生活保護受給者は高い割合です。でも私の選挙区である札幌市東区とほぼ同じ割合です。つまり、アイヌ民族であることが原因で生活保護を受給しなければならない状況なのではなく、ほかの要因があってのことだと思います。
 私が最も力を入れてきたのは教育です。北海道は教育水準が低く、大学進学率も他県に比べて高くありません。アイヌ民族に限った話ではないのです。経済を良くするためには、時間はかかりますが教育を充実させることが大事です。
 この騒動が起こって自民党を離脱しました。理由はいろいろあるのですが、主には会派に残るための4つの条件をのめなかったからです。
 4つの条件のうち、「会派の方針に従うこと」「事前に相談してから発言すること」については了承できました。でも「インターネット禁止」「(2008年に出した)国会決議を否定しない」は賛同できなかった。
 特にインターネットは私にとって生命線です。今回も賛否両論ありますが、アイヌの問題について議論するきっかけになったと思います。北海道内だけでなく、全国や海外からも激励の声を頂きました。議会で同じことを発言してもここまで話題にならなかったと思います。
 様々な人に「ツイッターは危険だよ」って言われます。けれど、手軽にゆるく発信できるのがツイッターの良さだと思っています。投稿したすべての文言について、後でどう受け取られるか分からないなんて言っていたら何も書けません。正直に申し上げて、ツイッターの一言で議員を辞めなきゃいけないんだとしたら、政治家としてはツイッターを使えなくなりますよね。
 9月22日から市議会が始まりました。初日に私に対する議員辞職勧告が可決されました。勧告には拘束力がありませんので、従うつもりはないです。不適切な表現については謝りましたし、なぜ辞職しないといけないのか分かりません。
INTERVIEW
北海道アイヌ協会 阿部一司副理事長
今でも差別はある。もっと勉強してほしい
 金子市議に対して一言で言うなら、お勉強していただきたい。北海道に関する歴史や現状、差別発言に関する国際情勢についても全く理解されていない。北海道には弥生時代もなければ、飛鳥時代もない。本州とは違う。
 チセに住まないからアイヌ民族ではない、という簡単な話ではない。
 金子市議の考え方は果たして国際的にも通じるものなのか。私は9月下旬に国連総会に参加した。だが、政令指定都市の市議がこのような発言をしたことを、国際社会においては恥ずかしくて言えず、話題にすらできなかった。
 今でも差別は半端じゃなくある。例えば結婚。最近ではアイヌ人同士で結婚することはまれで日本人と結婚することがほとんど。私もそうだ。今回の件は妻も悲しんでいる。今でも結婚する相手がアイヌだと分かると断られることもある。見知らぬ人から「おまえはアイヌか」と電話で尋ねられて、ガチャンと切られることも日常茶飯事だ。仕事を探すにしてもアイヌだと採用されないことがある。
 金子市議は立派な人なんだから、もっと勉強していただきたい。もちろん、アイヌ民族以外にも社会的弱者はたくさんいる。社会的弱者のことを理解できる人になってほしい。(談)
http://business.nikkeibp.co.jp/article/interview/20150413/279869/?rt=nocnt
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