西村一朗の地域居住談義

住居・住環境の工夫や課題そして興味あることの談義

『模倣と習熟 「学び」の復権』(辻本雅史著、岩波)を読みだす

2012-10-29 | 教育論・研究論
数日前から『模倣と習熟 「学び」の復権』(辻本雅史著、岩波)を読みだした。どうも「教え込み型」教育から「滲み込み型」教育へ転換すべし、との論のようだ。明治以降の日本の教育は大きく見て「教え込み型」、江戸時代の教育には「滲み込み型」もあり、まあモデルを見ての見様見まねの「自学自習」もあったようだ。

で、その江戸時代の教育の先達として貝原益軒をあげている。その教育に関する著書は『和俗童子訓』である。「「和」というのは「漢」(中国)に対する日本のこと、「俗」というのは「雅」の反対で、学問に通じた「雅」なる知識人とは異なる一般庶民の世界を指している。」

つまり、そういう「日本の庶民の子供に対する」教育論である。詰め込みの「教え込み型」ではなく、自学自習の「滲み込み型」である。

いやーたまげたな。貝塚益軒と言えば『養生訓』でよく知られているが、そういう健康論も、なにかをやり遂げるのに健康は必要だ、という総合的視点に立っている。同じように『和俗童子訓』は、大人以外の子供(将来大人)のしっかりした教育が未来を保証するとはっきり自覚した教育論で、おそれいる。

シーボルトは「貝原益軒は、日本のアリストテレス」と評した ようだが、確かにアリストテレスのような総合的学問を目指しており、しっかり読み込んでいきたい。

辻本雅史さんは、京大大学院教育学研究科教授、1949年愛媛県生まれ、京大大学院教育学研究科修了、文学博士である。日本教育史、思想史専攻。