西村一朗の地域居住談義

住居・住環境の工夫や課題そして興味あることの談義

学習「平衡老化」(佐々木英忠著)-1

2011-11-24 | 食物栄養・健康・医療・農業・教育
このブログで安保 徹さん(新潟大学教授、東北大医卒)の「エネルギー生成系で知る病気の成り立ち」を紹介したが、これは主に生活習慣病、とりわけ癌の成り立ちとその治療(治癒)についての研究成果を述べたものだ。同じ『学士会会報』に認知症についての認識と対処について、佐々木英忠さん(東北大名誉教授、東北大医昭和41年卒)「平衡老化」という論考を書かれている。(ひょっとして私と同年)

年齢の進行と共に癌と共に認知症も罹患率が上がるので、自分自身としても関心のある論考だった。いくつかに分けて紹介したい。

一、成功老化
「全ての臓器は加齢と共に直線的に機能低下をきたし、約100歳で生存限界に到る。脳といえども例外ではなく、厚労省の統計を拝借すれば、平均値であるが、女性は90歳~95歳、男性は95歳~100歳で日本人は100%認知症に到る。あきらめが肝心。別の言葉で言えば悟りの境地が大切である。
 欧米から致死的な老化に対抗しようとして、Successful aging(成功老化)なる標語が提案されている。加齢に抗して若々しい心身を保ち、生き生きと最後まで社会貢献をするように努力することが高齢者のとるべき目標であるとしている。
 しかし、小生(私注:佐々木さん)の知る範囲では成功老化を達成している高齢者は5%もいないのではないかと思われるほど少なく、現実はほとんどが何らかの障害を持ち、成功老化の反対のFailure aging(失敗老化)に到っている。若い人でも生来異常を持っている人は、はじめから成功老化は達成できない。成功老化(という標語)は何か間違っている気がする。」

二、脳機能
「脳機能は永遠に解明不可能と考えられるが、解っている範囲では大まかに知識や理性を司る新皮質と、新皮質の深部に存在する旧皮質とも言われる、動物的本能、感情や情熱を司る大脳辺縁系に大別される。大脳辺縁系から本能的にわきおこる欲望を新皮質の理性が抑制している。また、あるときは大脳辺縁系の欲望を達成するために新皮質の知識を最大限に利用し、目的をとげようとする。新皮質と大脳辺縁系は相互に支配されている。
 エベレストに登りたいという大脳辺縁系の欲求は、死亡率5%や何のためになどという理性による抑制を超えて、逆に、登りたいという大脳辺縁系の欲求のためにあらゆる新皮質の知識や道具を駆使する。このとき大脳辺縁系は目的であり、新皮質は単なる道具でしかない。
 男女の恋愛でも、新皮質で損得を計算した結婚よりも直感で感じた大脳辺縁系を優先させるため、多くの物語が生まれている。研究では新皮質で考える合理的な道ではなく、一見途方もない分野で大脳辺縁系の直感でこれだと感じてつき進んだ方が独創的成果を生むことが多い。新皮質のすぐれている人は他人から与えられた仕事を完璧に遂行できるが、もし大脳辺縁系が劣化していると、自分で何をやっていいか解らない人となろう。」

うーん、新皮質は、前頭葉に多い。発達している人は、一般に「頭がいい」と言われる。しかし、本論考では、むしろ旧皮質、大脳辺縁系に光を当てようとしているな。(続く)